第三話「対立」
ドラゴンは戸惑った様子で、数歩後ずさった。
コスモスは扉に近づき、ドアノブを軽く回した。扉が開くと、その向こうには、山頂に建つ小さな小屋の一室が広がっていた。
「君が魔法を使うところは、いつ見ても見事だな、コスモス」
コスモスが扉の向こうをのぞくと、部屋の右手に、灰色のローブをまとった男が立っていた。
「私の小屋に何の用だ、エスゴン・ザ・グレイ?」
「挨拶に立ち寄っただけだと言えればよかったのだが、事情があってね。エーテルで重要な会議が開かれることになった」
エスゴンはそう言って、小さなドラゴンに目を向けた。
「新しい相棒か? 悪いが、留守の間はここに置いていったほうがいい」
「悪いが、エスゴン。今回の会議は、私抜きで進めてもらう」
「ああ、そう言うと思っていた。今回の会議はいつもとは違う。エーテルの未来に関わる話なんだ。私だって、君をここに残しておきたいところだが、君の意見を聞かずに進めることは、あちらが許さないだろう」
「なぜだ? 私が多数派の決定に反対することくらい、よく知っているだろう」
「今回は君を説得できると、皆が信じているからさ」
コスモスは返事をせず、杖を壁に立てかけた。それから扉を閉める。
青かった木製の扉は、次第に色を失い、やがて茶色へと変わった。
エスゴンは立ち上がると、台所の窓辺へ歩いていき、窓を開けた。
一羽の鳥が部屋の中へ飛び込んできた。鳥は天井から吊るされた止まり木に降り立つ。その脚には、一通の手紙が結びつけられていた。
コスモスが手を伸ばそうとした、その時だった。
「今はその時じゃない」
エスゴンが振り返り、そう告げた。
コスモスは伸ばしかけた手を引っ込め、エスゴンを見つめた。
その眼差しに敵意はなかった。だが、別の感情が浮かんでいるように見えた。
二人の魔導師が、かつて対立していたのは明らかだった。
生まれ変わってからというもの、コスモスは過去のことを水に流そうとしてきた。だが、エスゴンは機会があるたびに、過去を思い出させようとしているようだった。
エスゴンは必要以上のことを決して話さない。そして、口を開けば、たいてい不快そうな表情を浮かべていた。
「君のような人間にとっては、扉を開くことなど造作もないのだろうな」
エスゴンは壁に立てかけられた杖を見ながら、ぼそりとつぶやいた。
「何しろ、一歩も歩かずに、どこへでも行ける魔法を持っているんだ。さぞ便利なことだろう」
コスモスは一瞬、エスゴンの顔を見つめた。皮肉を言っているのか、それとも単なる感想なのか、判断がつかなかった。
「私の魔法にずいぶん詳しいようだね。なら、ポータルを開けられるのは、隅々まで把握している場所だけだということも知っているだろう?」
エスゴンは気に留める様子もなく、青白い顔に不気味な笑みを浮かべた。
「私がお前の立場なら、とっくに魔法の限界を探り、もっと遠くまで行けるようにしているがな」
「ごもっとも。だが、君は私ではない。だからこそ、自分の魔法をどう扱うべきか、私はよく理解している。限界まで試したければ、いつだってそうしていたさ」
コスモスはそこで言葉を切り、エスゴンを見た。
「君と違ってね、エスゴン。何世紀も研究を続けておきながら、君はいまだに魔法をそこまで引き出せていない」
エスゴンの笑みが消えた。
灰色のローブをまとった魔導師は、大股でコスモスに歩み寄ると、その襟元をつかみ、肘掛け椅子へと投げ飛ばした。
怒りに駆られたエスゴンは杖を掲げ、呪文を唱えた。
「ロック・テンパニオン!」
杖の先端を囲むように、五本の岩の槍が出現した。
エスゴンはそれらをコスモスに向けて放とうとした。
その瞬間、部屋の景色が一変した。
二人の魔導師は、より上位の存在によって、別の場所へと転移させられたのだ。
そこは、エーテルだった。
**【キャラクター紹介:エスゴン・灰色の魔導師】**
名前:エスゴン・灰色の魔導師
年齢:700歳以上
身長・体重:178cm・70kg
種族:七大魔導師
魔法:質量魔法・岩石魔法
好きなもの:自分の力、肉、貴族風の服装、他人を困らせること、魔法の可能性を広げること、夜明け、東の国、黒の塔
*違い:
タイトル:エスゴン・灰色の魔導師
呼び名:エスゴン・ザ・グレイ




