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言い伝え

 ジウロの迫力に少々ビビリながら答える。


「え? なんか良く分からないけど登録ってのはしてしまいましたけど。……まずかったですかね?」


 ジウロが何かを考え込むように目をつぶる。


「信じられん事じゃ。ムスペル族以外の物がマイスターになるなど。……それで、れーじ殿は実際にマイスターの力を使えたのかね?」


「え? 俺なにか力が使えるようになったんですか?」


 ふむ、と少し合間をおいてジウロが話を続ける。


「れーじ殿。ワシの言った事をそのまま復唱するのじゃ」


 良く分からなかったがとりあえずうなずく零慈。


「コネクション。登録者名、ここでれーじ殿の名前をいうのじゃ」

「えーと、コネクション。登録者名、日輪零慈」


 その瞬間、頭の中にムスペルヘイムで聞いたのと同じ声でアナウンスが流れた。


『マイスター日輪零慈を確認』


 その声と共に零慈の体が薄く輝き始める。


「え? え? なんだこれ!?」

「落ち着くのじゃ。次に展開と言いなされ」


「……展開」


 すると目の前の視界全てが薄いブルーのフィルムを通して見たように青みがかる。

 さらに方眼紙のように空間全体に縦と横の線が走り交差して世界が立方体で区切られる。

 3Dのゲームさながらの光景だ。


 そしてまた頭の中で声が聞こえた。


『オプションを選択してください』

「オプション?」


「オプション、炎弾というのじゃ」

「オプション、炎弾」


 ジウロに言われるままに繰り返す。


『炎弾が選択されました』


 またアナウンスが流れる。


「れーじ殿。あそこにある木が見えるかね?」


 ジウロが指差しているのは、家の外に立っている小振りな木だった。


「視線を合わせると数字が浮かんでくるじゃろ。それを座標と言った後に読み上げるのじゃ」


 言われた通り、木に視線を合わせると3つの数字が浮かんできた。


「座標。125、11、14」


 すると、その部分の立方体が赤く点滅を始める。


「赤い点滅をしておるかね?」

「ええ」


「では座標固定と言うのじゃ」

「座標固定」


 すると点滅が止まり、そこだけ赤く光っている。


「では最後に発射と言うのじゃ」


「発射」


 その瞬間、零慈の前に光球が生まれ、ぱしゅんと言う音と共に木目掛けて光球が発射された。

 狙い違わず光球は木に突き刺さり、弾ける。


 次の瞬間、命中した部分から炎が噴き出しあっという間に木をただの炭へと変えてしまった。


「うおおお、なんかすげえの出た! ……これってさっきルチアが使ったのと同じ奴か?」


 うっすらと煙を上げている炭を凝視しながら零慈が騒ぐ。


「……本当にマイスターのようじゃな。それでは最後にシャットダウンと言いなされ」


 零慈が言われた通りにすると、世界が元の鮮やかな色を取り戻した。


「お、元に戻った」


 ジウロが顎鬚を触りながら、しげしげと零慈を見つめる。


「しかし驚いたわい。れーじ殿、お前さん一体何者なんじゃ?」


 零慈にとって一番答えに困る質問だ。


「何者って……うーん高校生? ただの人間なんですけど」


「人間とな。ワシの知る限りムスペル族以外の者でムスペルヘイムのマイスターになれるのは神人(かみびと)だけじゃ」


「神人?」


「七氏族に伝わる言い伝えでな、昔この世界には神人だけがおられた。ある時、神人はヴァルハラを作り、それを用いて戦いを始めた。多くの星が落ち、大地は割れ、海に沈んでいった。戦いによりほとんどの神人が死に、神人は僕として我ら七氏族を造られた。長い時の果てに僅かとなった神人は七氏族にそれぞれ力を与えられ割り当てられたヴァルハラを守るようにと命じられた。そのあと神人はこの世界からお隠れになった」


 話を切って、ジウロが値踏みするように零慈をジロリと見つめる。


「この言い伝えが正しければ、ムスペル族ではないお前さんがマイスターになれたのは力のすべてを使えた神人だからいうことになるのじゃ」


 零慈は頭の中で今の話を整理してみた。

 神人はおそらく俺たち人類の事だろう。


 そして世界が滅びかける戦争が起きて、足りなくなった労働力を補うために遺伝子工学かなんかで猫耳人間を作ったってところか。


「……たぶん俺はその神人って奴だと思います。」


 ジウロが目を閉じて思案顔になる。


「太古に消えた神人が何故ここにいなさる?」


「何故と言われましても。説明する……」


 零慈の話の途中だったが、ルチアとジウロの様子が変わった。

 全身の毛を逆立て、何かに怯えているように見える。 


「どうしたんだ? なにか……」


 零慈が言い終える前に、地面が揺らいだ。


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