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アルフレイムへ

 先ほどと同じ屋敷に戻ってきた一行は、執務室ではなく食堂へと案内された。

 かなり大きな部屋で、中央に巨大な長方形のテーブルが据え付けられている。


 20人くらいは軽く食事できそうな大きさだ。

 上座にはレスターが座っていて、そこから一番近い両側の席にサリサとルチアが向かい合って座っている。


 零慈が案内された席は一番遠い反対側の席だった。


「席順にあからさまな悪意を感じる……」


「すまないね。本来私は男と食事を共にする趣味はないのだよ。これが最大の譲歩だと思っていただきたい」


 やはり神人の事を隠していた事を怒っているのか、サリサは我関せずといった感じで明後日の方向を向いている。


 ルチアといえば、何処からともなく漂ってくる料理の匂いに夢中になっていた。


 しばらくすると料理が運ばれてきた。

 自分だけ変な物を食べさせられるのではないか、と危惧していがさすがに杞憂だったようで、皆と同じ料理が運ばれてきた。


 野菜が中心というより一切肉類を使っていない料理だったがかなり美味しい。

 考えてみればこの世界に来てから食べたものはどれも美味しかった。


 1万年の間も料理人達の美味への探求は行われ続けていたのだろう。


「さて、零慈? だったか? 話を聞かせてもらおうか」


 2人の視線が集まる。

 ルチアだけは未だ食事中だ。


「さっきも言った通り、どうやら俺は神人なんだ」

「遠くてよく聞こえないな。なんでそんな遠い所に座っているのだ? あほなのか?」


「てめーが座らせたんだろ!? 面白いなこの野郎!」

「すまない。男に関する記憶は5秒ごとに消去される体質なのだ」


 一切、悪びれる様子もなくレスターが謝った。


「……それ体質じゃなくて、病気だと思うぞ」


 仕方なく、ルチアの横に席を移る。


「で、話の続きなんだけど、俺はそもそもこの時代の人間じゃないんだ」


 サリサとレスターが同時に怪訝そうな表情を浮かべる。


「まあいきなりこんな事言っても信じられないだろうな。でも俺は本当に1万年前から来たんだ」


「はあ? ……頭大丈夫?」

「医務室に行くか?」


(まあそうなるわな)


 この反応は想定済みだったので、そのまま話を続ける零慈。


「俺はまともだぜ。詳しく説明したいのはやまやまなんだけど、実は俺も良く分からないことだらけなんだ。分かっているのは、ここは俺の知っている世界じゃないという事、俺が本来ムスペル族にしか使えない力を使える事、ここに来た理由がどうやら世界を滅びから救うって事だけなんだ」


 滅びという言葉にレスターの眉間がぴくんと反応した。


「先ほどこの災害と関係がある話だといっていたな。これが世界の滅びと繋がっているとでも言うのか?」


「……はっきりとは分からない。だけどタイミング的に間違いないと思う」


 黙って話を聞いていたサリサが口を開いた。


「いきなり滅びって言われてもね。そもそもなんでこの世界が滅びるのよ?」


「わからない。でも俺をこの世界に連れてきたおっさんはユグドラシルシステムがこの世界を滅ぼすって言ってた」


「おっさん?」 


 またもや怪訝そうな表情をうかべるサリサ。

 零慈はムスペルヘイムでの出来事を説明した。


「その男がヴァルハラを造ったということか?」


 零慈の説明を受けてレスターが尋ねる。


「いやネットワーク部分と言ってたから、各ヴァルハラを繋ぐ仕組みを作ったんじゃないかな。ヴァルハラ本体は他の人が造ったんだろう」


「ここのヴァルハラに行けば、またその人に会えるの?」

「会えると思う。てか、会えないと困る。いくらなんでも分からない事が多すぎだ」


「じゃあ話は決まったわね。零慈の話が本当かどうかはヴァルハラに行けばはっきりするわ。レスター、構わないわよね?」


 椅子から立ち上がって、レスターに視線を送るサリサ。


「それなんだが……そうだな、見たほうが早いか」


 なにやら呟きながらレスターも席を立つ。


「分かった。付いてきてくれ」



 歩き出してすぐ、零慈の横にサリサがやって来た。


「そう言えば、どうやって零慈が世界を滅びから救うの?」

「それは」


 そう言いながら零慈がポケットから金色のカードを取り出す。


「これを持って全てのヴァルハラを回るだけでいいらしい」


 窓から差し込んだ太陽の光を受けてカードがキラリと輝く。


「それ、結構大変よ」


「え? どういう事?」


 その時、レスターが立ち止まった。


「ここを下る。足元に注意しろよ」


 レスターの前にはせまい階段があり、下に向かって降りていた。


「とりあえず、その話は後にしましょう」


 そういうとサリサが先に階段を下り始めた。


 全て切り出された石で出来ている階段は、中世ヨーロッパの城の地下牢獄に繋がっているような雰囲気を醸し出している。

 人一人が通れる幅しかないので、一行は一列になって階段を下っていった。


 沈黙の中、4人が立てる足音だけが反響し複雑に絡み合っていく。

 帰りにもう一度、上る事を考えるとうんざりする程下った頃、突然広々とした空間が出現した。


「ひろーい」


 ルチアが感嘆の声を上げた。

 ちょうど4人がいる位置はこの部屋の天井部分にあたる。


 階段はそのまま壁に寄り添うように床まで伸びているが、手摺も安全柵も無いので落ちたら只では済みそうに無い。


 内臓がきゅっと上に上がる感触を感じつつ零慈は心持、壁に寄り添いながら下っていった。


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