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襲撃再び

 若とかよばれていたのでてっきり、マフィアかヤクザの若頭的な人を想像していたので、イメージのギャップにしばらく頭が付いていけなかったが、とにかくこの変な人に話をしなければ始まらない。


「あの……ちょっと話があるんですけど」

「悪い。私は男と乳繰り合う趣味はないのだよ」


「俺もねーよ!!」


 死ぬほど鬱陶しそうな顔で零慈を見つめるレスター。


「男が私になんの用なのかね? 見ての通り今は緊急時だ。よっぽどの事でないなら後にしてもらいたいのだが」


 サリサやルチアを口説いていたときとは本当に別人だ。


 確かに会えば分かるタイプの人間だった。

 顔ではニコニコしていて腹の中ではあざ笑っているタイプの人間に比べれば分かりやすい分ましなのだろうが、どうもこいつとは良好な人間関係を構築できる気がしない。


 だからと言って話をしなければ先に進めないのもまた事実で。

 まずは女以外に興味のなさそうなこいつの関心をこちらに向けさせる。


 色々思う所はあったが、それらを一旦封印してきわめて友好的な態度で再び話し出す。


「なあ、この街、地震の被害でこうなったんだろ?」


 その言葉を受けて、こちらの思惑通りレスターの顔が急に真剣になる。


「それが何か?」

「その事と関係がある用事って言ったら話聞いてくれるか?」


「どういう事だ?」


 よし食いついてきたっとその質問に零慈が答えようとした瞬間、執務室の扉が勢い良く開けられ、中年のアルフ族が駆け込んできた。


「若様! スライムベアがまた出ましたぞ! しかも何匹も!」


 完全に息のあがった状態で喉から搾り出された報告は事態が緊迫している事を物語っている。


「すぐ行く! すまない、緊急事態だ。その話はまた後で聞こう」


 そう言い残してレスターは呼びに来た男と共に飛び出して行ってしまった。


「私たちも行きましょう」


 再び3人は建物の中から街に出る。


 ここは街で一番高い所なので、外に出ると街の様子が一望できる。


 ちょうど城壁が崩れたところから、3匹のスライムベアが街に侵入しようとしていた。

 復興作業をしていた人々や、女子供がこの建物を目指して必死に非難してきている。


 その人々の流れに逆らうようにレスター達が城壁に向かって走っていた。

 そのまま零慈達もレスターの後を追って城壁に向かう。


「くそう! 1匹入ってきやがった!」


 崩れた城壁の周りでは数人のアルフ族が両手を突き出してスライムベアと対峙していた。

 どうやら彼らもマイスターのようだ。


「こいつら追い払っても追い払っても街に入ろうとしやがる!」

「どうなっているんだ? 冬眠している時期のはずなのに!」

「倒さないと埒が明かないぞ!」


 現場では緊張した男達の怒号が飛び交っていた。


「皆さがれ! 私がやる」


 そう言ってレスターがスライムベアの前に躍り出る。


「コネクション、登録者名レスター・クルーズ。観測展開。オプション、気流操作」


 レスターの全身が薄く光る。

 そしてスライムベアに向かって両手を突き出した。


「吹き飛べ醜い化け物!!」


 力ある言葉と共に、ごう! と零慈たちの周りに吹いていた風が一気にレスターに集まり、そのままスライムベアに向かって圧力の塊となって襲い掛かった。


 攻撃を正面から食らったスレイムベアが城壁まで吹き飛び叩きつけられる。

 レルターから生み出された風はそのまま、スライムベアを城壁に押し付けて自由を奪い続ける。


「さすが若!」


 周囲に歓声が沸き起こる。


「だがこのまま外に放り出してもまたすぐ来るな……」


 苦虫を噛み潰したような顔でレスターがうめく。

「まずい! 他の奴が入ってきたぞ!」


 目を向けると城壁の崩れ目からもう1匹のスライムベアが入ろうとしている。


「仕方ないわね、ルチア! 私たちも戦うわよ!」

「ルチアやっつける!」


 二人のヴァルキリーがそれぞれ力を解放する。


「イメージ照合、『アハトアハト』」


 サリサの眼前に再び巨大な大砲が現れる。


「発射!」


 轟音と共に、レルターが押さえつけていたスライムベアの胸に砲弾が大きな穴を穿つ。


「速射開始!」


 見事な連携プレーでルチアの放った炎弾が止めを刺す。


「レスター、次の奴の動きを止めて! 零慈この下のハンドルを回して!」

「恩に着る!」


 レスターが、城壁の隙間を越えようとしていたスライムベアに向かって両手を突き出す。

 再び風が起こり、それはスライムベアに纏わりつき自由を奪う。


 その間に、零慈はアハトアハトの基部に急いで向かう。

 サリサに言われたハンドルを回すと大砲が向きを変えた。


 実は零慈もマイスターの力を開放していたのだが、どう動けばいいのか分からずただ呆然と成り行きを見ている事しか出来ていなかった。


 集団戦において経験の伴わない力などハリボテと同じだ。

 力を持っている事と使える事はイコールではないのだ。


「ストップ! いくわよ、『リロード』!」


 その言葉が発せられた瞬間、零慈は大砲の中に何かが装填される響きをハンドル越しに感じた。


「発射!」


 レスターが動きを抑えているお陰でただのでかい的になったスライムベアに苦も無く砲弾が命中する。


 あとはルチアの炎弾が中身を焼き尽くしていく。


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