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レスター

 アルフ族を観察した結果、零慈は結論に至る。


(エルフだ)


 サリサが最初に話しかけた男も、特徴的な先のとがった長い耳を持っていた。

 この建物の中にいる人達も例外なく同じ耳をしている。

 身長はみな170センチ以上ありそうだ。


 ゲームやマンガに出てくるエルフと寸分違わぬ外見をしている。

 色は様々だったが、皆、厚手の布地で出来た貫頭衣を着ていた。


「ねえ。若様はどこにいるのかしら?」


 一番近くにいた女性にサリサが尋ねる。

 一瞬、怪訝そうな表情を浮かべたが、それはすぐに驚きの表情に切り替わる。


「あなた様はサリサ姫ではありませんか! ……失礼いたしました。若様は現在、執務室におられます。ご案内致します」


 そう言って案内を始めようとした女性をサリサが制した。


「あなたの手を煩わす程の事ではないわ。場所は分かるから大丈夫よ」

「かしこまりました」


 そう言って深々とお辞儀をして女性はその場を立ち去った。


「……なあサリサ。もしかして俺、お前に敬語とか使ったほうがいいのかな?」


 歳も同じくらいに見えたのでなんとなくタメ口で話していたが、よく考えればサリサは王族な訳で。


 まあ一応、零慈も神人なのだが、どちらが上とか良く分からないし、今の女性の反応を見るとなんだか馴れ馴れしく話すのが不味いような気になる。


 そんな零慈の心内を知ってか知らずか、サリサがむすっとして答えた。


「いいわよ別に。いまさら敬語なんて使ったら逆に怒るわよ」


 サリサの言葉がなんとなく嬉しくて、零慈の顔に自然と笑みがこぼれる。


「サリサがそれでいいならそうするよ」

「ルチアおなかへったー」


 そろそろ限界らしく、耳と尻尾が力なく垂れている。


「もうちょい我慢だルチア」

「ふにゅー」


「ここよ」


 サリサが立派な木で出来た扉の前で立ち止まった。


「ん? 入らないのか?」


 サリサは扉を開けずに、何故かマイスターの力を解放し始めた。

 綺麗な光がサリサの全身を包みそして消える。


 実際に武器は出さず、途中で呪文を止めているようだ。


「さ、いきましょう」


 そういうとサリサは扉をノックして、返事を待たずに入っていってしまった。


(マイスターの力を準備しなければいけないほどヤバイ相手なのか!?)


 部屋に入るのがものすごく躊躇われたが、そのまま廊下に突っ立っているわけにも行かず、思い切ってサリサの後を追って部屋に入る。


 中は20帖ほどの部屋で真ん中に大きなテーブルが置かれていた。

 そのテーブルに広げられた書類を使って何人かのアルフ族が会議をしている。


 突然の侵入者にそこにいた全員の視線が集まる。


 会議をしていたアルフ族はほとんどが老人だったが、その中で1人だけ20代ぐらいの若い男のアルフ族がいた。

 身長は180センチくらい。

 腰までありそうな長い髪は綺麗な緑色で、やはり先のとがった耳がその髪から突き出している。

 切れ長の目は右が金、左が銀の瞳をそれぞれ宿していた。


 止まっていると高名な彫刻家が作り上げた美しい彫像に見えるだろう。

 服装は皆と同じ貫頭衣なのだが、やたら派手な刺繍が入っていてそれがまたよく似合っている。


 その派手なアルフ族はサリサを見つけるやいなや、叫びながら走り寄ってきた。


「そこの綺麗なお嬢さん! 私の妻になりませんか?」


 走りよってくるアルフ族の男を、凍りつくような視線でサリサが見つめ、そして力ある言葉を解放する。


「イメージ照合。『コルトガバメント』!」


 サリサの目の前にまばゆい光と共に黒光りする拳銃が現れる。

 サリサは現れた銃を空中で掴み、流れるような動作でそのまま抱きつこうと突っ込んできた男の眉間に押し付けた。


「どう? これで思い出した? レスター・クルーズ様」


 レスターと呼ばれた男は特に慌てもせずに、先ほどとは打って変わってテンションの低い声で答えた。


「なんだ、ミズガルズのとこの姫さんではないか」


 その時、レスターの視界にルチアが入った。

 今度はルチアの前に飛んでいき、恭しく礼をして語りだした。


「これは失礼、可愛らしいお嬢さん。もしよければ10年後あたりに私の妻になりませんか?」


 ルチアが零慈の背中に隠れる。


「このひときもちわるい」


 その時、


「言っとくけどその子、ムスペル族のマイスターよ」


 と、冷たいサリサの声が響く。


「なんだと……。今日は厄日か……。いや、そもそも他の氏族の直系同士が婚姻できないなんて決まりがおかしいのではないのか?」


 なにやらぶつぶつとレスターが独り言を言い始めた。


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