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アルフレリアへの行き方

 サリサの意図が掴めなかったが、とりあえずおとなしく付いていく。


 サリサが連れてきたのは、広場の隅にある広い割には看板しか立っていない所だった。

 その看板の一つの前で立ち止まり、サリサが指差した。


「これもわりと常識の範囲だと思うんだけど」


 そこにはやはり読むことが出来ない文字が綴られていた。


「……実は字、読めないんだ」

「つくづく私の予想の斜め上をいく男ね。確かに字が読めない人は結構いるけど、ミズガルズ族で読めない人には初めて会ったわ。もしかして記憶喪失とかの人?」


「記憶はしっかりあるぞ。こっちにも色々事情があるんだよ」


 自分も家出という事情を抱えているから聞きづらいと思ったのか、それ以上サリサは追求してこなかった。


「ここはランドールの乗り場よ。で、この看板にはアルフレリア行きって書いてあるの」


 さすがに先が読めたのか、サリサが先手を取って話を続けた。


「アルフレリアっていうのはアルフ族の街のことよ。アルフヘイムは彼らの街の中にあるの」


 実はランドールがなにかも分からなかったが、正直に質問するとまたサリサにあきれられそうだったので止めておいた。

 恐らく交通機関の一種なのだろう。


「ということは、ここでランドールに乗ったらアルフヘイムへ行けるって事か」

「そういうこと」


「意外とあっさり問題が解決したな。明日考える必要が無くなったぜ」


 サリサがじっとこちらを見つめてきた。

 改めて見るとやっぱり美人なのでちょっとドキドキする。


「零慈ってなんか不思議な雰囲気を持ってるわよね。まるでこの世界の人間じゃないみたいな……」


 本当の事を話してもいいような気がしたが、正直その判断がつかない。


「そ、そうかな? 普通だと思うけど……」

「普通ねぇ。まあ、あまりに常識知らずでバカだからそう見えるのかもね」


「……そういう悪口は普通本人の前でさわやかに言うもんじゃないと思うぞ」


「それもそうね。失礼したわ」


 嫌味とかではなく、素直にサリサが謝った。


 零慈としては、そんなサリサの方がよっぽど不思議な雰囲気を持っていると感じていた。

 確かに口は悪いが、それでもどことなく上品な印象を与えてくる。


 自分が悪いと思ったら素直に謝ってくるし、案外、どこかいいとこのお嬢さんなのかもしれない。


「で、そのランドールってのはどうやったら乗れるんだ?」

「ん? ランドールが到着したら誰でも乗れるわよ。アルフレリアまでだとだいたい1万ウェンくらいかな」

 ウェンというのはここの通貨の単位らしい。

 ジウロに旅の資金として50万ウェンもらったので十分足りる額だ。

 ちなみにさっきの食事が800ウェンだったので、通貨レートとしてはほぼ円と同じと考えてよさそうだ。


 零慈が周りを改めて見回したがランドールらしきものは何処にもなかった。


「ランドールってのはいつくるんだ?」

「そうね……」


 そう言ってサリサが看板を凝視する。


「ラッキーじゃない。明日の午前中に来るみたいよ。それを逃したら次は2週間後ね」

「確かにラッキーだな。という事は今晩はここで一泊か」


 ふと気付くと、サリサが零慈とルチアを交互に見ている。


「どうかしたか?」


「いや、二人ともその格好でアルフレリアに行くつもりなの?」


 零慈は相変わらずの半袖の制服、ルチアも出会った時と同じ、へその出た涼しそうな格好をしている。


「これじゃまずいのか?」

「のか?」


 久々に自分に話が向けられたのが嬉しかったのか、ルチアが嬉しそうに復唱してきた。


「この辺は一年中あったかいけど、今は一応冬なのよ? アリフレリアってここからかなり北にあるから、その格好で行ったら凍え死ぬわよ。着替えあるの?」


 零慈は着替えどころかこの服しか持っていないし、ルチアも冬服なんて持ってそうになかった。


「ないなー。……仕方ない。どこかで買うか」


「なんかほっといたらとんでもない物を買いそうだから、私が選んであげるわ。付いてきて」


 サリサが案内してくれた所は衣料品が売られているエリアだった。

 色とりどりの服が所狭しと並んだ屋台が溢れかえっている。


 確かに自分達だけならなにを選んだらいいか見当もつかなかったに違いない。

 サリサが数多くの服の中から選んだのは、頭からかぶるいわゆるポンチョだった。

 何かの動物の毛で作られていて、確かにかなりあったかそうだ。


「ふにゅー。ルチアふらふらするー」


 見るとポンチョを着込んだルチアの顔が汗だくで真っ赤に茹で上がっていた。


「ルチア、それはここで着るんじゃないぞ」


 そう言ってルチアのポンチョを脱がしてやる。

 なるほど、確かにこれならかなり寒い所に行っても対応できそうだ。


 この時点で既に日はほとんど沈んでいて、辺りが夕闇に染まってきていた。

 世話になった礼を言ってサリサと別れ、ランドール乗り場の近くにあった宿屋に向かう。


 一日中、歩き回った2人はベットに倒れこむとすぐさま安らかな寝息を立て始めた。


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