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異世界転生  作者: MSZ-006
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「よし、入ったな。此れで安心だ」


ボウガンを構えていた男が、此方を見ながら声を掛けてきた。


「有難う御座います。プレイヤーの方ですか?」


「おう!此処の拠点を守ってる、リーダーの閑崎だ。宜しくな」


そう言って閑崎さんは、俺たちを安全な広場の方へと促しながら歩き出した。


「お前さん方、この世界は初めてか?」


改めて声をかけてきた閑崎さんの方を見ると、腕にゲームセンターの名前が入った腕章をしている。


どうやら客じゃなくて、店員さんがプレイヤーとして入ってるらしい。


「ここは色んなプレイヤーが商売したり仲間を募集したりしててな。セーブポイントも、この広場にある。分からないことがあれば教えるし、俺以外にもリーダーは何人かいるから頼ってくれ。ルールは外の世界と一緒で、最低限のマナーを守ってくれればいい。後、此れをやるよ」


そう言って渡されたのは、小さな肩掛けカバン。


「ソイツは、この世界で使える次元収納付きのカバンだ。武器やアイテムをその中に仕舞える。この世界のアイテムなら無限収納だ。手が塞がるなんて事は無いから、安心してくれ」


「分かりました。有難う御座います」


「ありがとうございます、閑崎さん!・・・ちょうど良かったです。このナイフ、剥き出しで危ないなと思っていたんですよ」


ユカさんはそう言って、ゾンビから奪った鞘のないナイフを、嬉しそうにカバンの中へと滑り込ませた。


俺も礼を言い、カバンに手持ちの鉄パイプを仕舞った後、肩に止まった烏の羽を軽く撫でながら周りを見渡す。


出店を開いている人や、屋台なんかが並んでいたり、ATMまであるな。


うん?


何だか見たことのある様な人が、店でで働いてる。


「ユカさん、ちょっと其処の店に行ってきますね」


「何のお店ですか?」


『我爱你』と書かれた料理屋の看板を指差し「あの店です」と、ユカさんに答える。


「あれ、なんて読むんですか?」と、ユカさんが足元にいる子豚を、胸に抱き上げ聞いてきた。


「・・・多分、うぉー、あい、にー、だと思います」


「いらっしゃいませ〜」


「こんちには、フォンファさん」


「あれ?この間のお客さん。確か、リョウさんでしたっけ?」


「はい。ゲーム内でも店を開いているんですね」


「そうなんです。料理の修行と趣味のゲームも兼ねて、やってるんです」


「料理の修行と、趣味の両立ですか。それは、なかなか素晴らしいですね」


「私の作る料理は、体力の回復だけじゃ無くて、一時的に攻撃力や防御力の上昇、状態異常を防ぐ効果があるんですよ」


「そうなんですか?それは、頼もしい限りですね」


「後、うちの店は料理がメインなんですけど、実はちょっと特殊な武器も売ってるんです」


特殊な武器?


一体、どんな物なんだ?


「ちょっと、見せて貰っても良いですか?」


「はい!ぜひ見て行って下さい。特殊な武器っていうのは、ある地域に出るモンスター専用なんです」


そう言って、フォンファさんが出して来たのは、木で出来た剣と、真ん中に四角い穴の空いた古銭を、赤い紐で編み上げた剣、そして何やら字が書かれたお札だった。


此れって多分、キョンシー用だよね?


前世の記憶から、リアルタイムで観たことがあるキョンシーの事を思い出す。


「木の剣に、お金?の剣ですか?こんなので、ゾンビにダメージを与えられるんですか?」と、ユカさんがフォンファさんに聞いている。


「はい。中華街エリアの奥深くに、隔離されたスラム、九龍エリアにいる動く死体。普通のゾンビみたいに肉体が腐り落ちてなく、死後硬直が限界まで高まって、銃弾すら弾き返す鋼鉄の肌を持っていて・・・此れじゃ無いと駄目なんです」


「・・・九龍エリア、ですか」


俺は、フォンファさんの言葉を反芻する。


かつての香港に実在した、巨大な無法地帯の名を冠するエリア。


ゾンビが蔓延するこの世界において、そこがどれほど地獄のような場所かは想像に難くない。


「あそこの動く死体は、他の連中とは毛色が違うんです。この法具を持たずに踏み込めば、今度はあなた達が跳ねる側になりますよ?」


フォンファさんは真剣な表情で、銭剣を手に取った。


「だから、物理的な破壊じゃなくて法力が込めらた武器で、内側から浄化するしかないんです。どうです? 九龍へ行くなら、この桃木剣と銭剣、それから足止め用の霊符のセット。今なら冒険者応援価格で安くしておきますよ?」


ユカさんはまだ半信半疑といった様子で、お札の束をまじまじと見つめている。


「リョウさん。これ、本当に使うんですか? 額にお札を貼るなんて」


「そうですね。九龍エリアでは、それが一番の正解なんだと思いますよ」


俺は苦笑いしながら、財布を取り出した。


前世の知識がある以上、ここでこの装備をスルーする選択肢はないな。






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