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異世界転生  作者: MSZ-006
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俺達は今、ゲームセンター内にあるフードコートで珈琲を飲みつつ、話をしている。


「リョウ君、女装して歌を歌って貰う事になるが良いかな?確か、一緒に歌っていたのは、ゴモリー君かな?」


さっきのライブ中継の事か。


そう言えば、ライブ中継で、お金が貰えるんじゃなかったか?


「女装が、必要なんですか?」


「必要だとも!良いかね?この世界は、自由に性別を変える事が出来る。しかし、性別を変える事なく女装して歌う。此れこそが、私の求めている二面性、そうギャップなんだよ!!」と、熱く語るセニョール監督。


「分かりました。後は、ゴモリーさんとネアさんに交渉して下さい。所で、シュウさん?双六ゲームの世界で、ライブ中継してましたよね?アレを、許可なく流すって、どうなんですかね?この世界にだって、個人情報保護法ってあるでしょう?」


現代日本人の感覚で詰め寄る俺に対し、シュウさんは珈琲カップを静かに置くと、口角をわずかに上げた。 


「フフッ。・・・娘婿は、なかなか鋭いな」


あの落ち着いた低音で、とんでもない呼び方をさらりと言ってのける。


「む、娘婿!?」


「肖像権の管理については、万全を期しているつもりだよ。それに、君という男の価値を世に知らしめるのは、悪いことではあるまい?後、ミリィは、その気になっているじゃないか。CMとして、ライブ映像を使わせて貰えるなら、その報酬も入るがどうかな?」


・・・ミリィさんの件を出されると、困るな。


「ミリィさんの話は、とりあえず置いておいて報酬の話は後程、詳しく聞かせて下さい。監督も、お聞きになられているかも知れませんが、河野さんが行方不明です」


「シュウさんから、聞いている。それで、今後の配役を見直さなくてはならなくなってね・・・。しかし一体、彼はどこへ行ったのかな?」


監督は困ったように、眉根を寄せ溜息をついた。


「分かりません。施設管理者ですから、おそらく軍がもう動いているとは思いますが・・・」


俺の言葉に、隣で黙って聞いていたシュウさんが、ふっと視線を上げた。


「・・・軍、か。組織というものは、動き出せば確実だが、同時に小回りが利かなくなるものだ。特に、彼のような特殊な立場にある人間を扱う場合はね」


その声には、軍という組織を知り尽くした者、特有の冷徹な響きが混じっていた。


流石、元大佐だな。


退役して、会社の社長になってもやはり、この人は鋭い洞察力を持っている。


「シュウさん。河野さんはフラっと、どこかに行ってしまうようなことが、今まであったんですか?」


俺の問いに、シュウさんはカップを置き、わずかに目を細めた。


その視線は、遠い過去か、あるいは都市のどこかに潜む影を追っているかのようだ。


「彼は確かに忙しい人間ではあるが、黙って居なくなることは、今までなかったはずだな」


その言葉には、長年の付き合いから来る確信があった。


「つまり、自分の意志で消えたわけではない、と」


俺の呟きに、シュウさんは無言で頷く。


フードコートの騒がしいBGMが、一瞬、ひどく耳障りなものに感じられた。


「パパ〜!」


遠くからでも響く元気な声と共に、珊瑚がこちらへ走ってくる。


「パパ!私、成長して人の姿になったよ!だから、結婚して!!」


「ぶっ!?げほっ!ごほごほっ・・・!!」


騒がしいゲームセンターのフードコートに、珊瑚のあまりにも純粋で、あまりにも場違いな叫びが響き渡った。


飲んでいた珈琲が変なところに入り、俺は必死にむせ返る。


周りの客たちの視線が痛い。


「ちょっと?あの人、パパとか言われてるのに?」


「え〜?ちょっと、ヤバくない?」と、周りからヒソヒソと囁かれる。


『パパ』と呼ばれている相手に『結婚して』という禁断(?)の響き。


「主、私はいつでも、お迎え可能」


瑞(みずき)が俺の袖を掴み、無表情ながらも真剣な眼差しで、トドメと言わんばかりの追撃を放つ。


「お父さん!僕もご主人も、いつでもオッケーだよ!」


天真爛漫なポポの声がフードコート中に響き渡り、周囲の客たちの「うわあ・・・」という視線が、鋭いナイフのように俺を突き刺す。


「ちょっ!?ちょっと、ポポちゃん!?確かに、私はオッケーだけど、今ここで言うことじゃ!」


慌ててフォローしようとしたユカさんまでもが、どさくさに紛れて『私はオッケー』と自白してしまった。


「さ、珊瑚、可愛い服だな!」


「うふふ!パパ、有難う!で、結婚式は、いつにする?」


「み、瑞(みずき)、ちょっと落ち着こうか?危険が危ない状態で更に、頭痛が痛い的な現状なんだけど?」


「・・・リョウ、落ち着いて。何も恐れる必要な無い」


「そうだよ〜!みんな一緒に、結婚すれば良いんだから〜!」


リリーさんとマリーさんが到着し、更に爆弾を投下する。


「リョウさん、私は合同結婚式でも、大丈夫です!」とゴモリーさんは、いつも通りだな。


「わ、私は、別に結婚式とかしなくても良いけど、でもやっぱりウェディングドレスは着たいかな〜って、思ったり」


ネアさんが、頬を染めながら発言する。


「お兄ちゃん!ボクは、ス◯ッタとミオ◯ネみたいに、仲良く過ごせれば良いよ〜?」


めぐりちゃん?


その話を、後で詳しく聞かせてね?


俺が観たのは、主人公の少女が許嫁の少女を助けに行って、兵士をお菓子と同じ名前の巨大ロボの掌で『フレッシュトマト』にしたところまでなんだ。


続きが知りたくて、しょうがなかったんだよ!!


「リョウ様?周りの方々から、白い目で見られてますよ?訴えますよ?私としては、仕事を続けたいと思っていますので、子供ができるまでは家事を半々で、お願いします」


ミリィさんが可憐な笑顔で、メガネをクイッと上げながら、非常に具体的な内容で攻めてくる。


シュウさん?


娘さんの暴走を、止めて?


あれ?


何で、此方見ないの?


「リョウ、ピィちゃんが成長して、良かったわね!」


「そ、そうだなカオリ、でも色々と大変な事になっ・・・」


「私としては、みんなで住めるような家が良いけど、まずは施設で過ごして、ある程度資金が貯まったら、一戸建ての大きな住宅を買うか、建てるかでいいと思うの。どうかしら?」


「・・・うん。そうだね」


俺は珈琲の残りを飲み干し、河野さんの無事を願った。




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