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異世界転生  作者: MSZ-006
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「お願いします」


俺は次元収納から白いカプセルを、ユカさんは黒いカプセルを取り出し、シュウさんに手渡した。


「・・・よろしい。しばし預かるとしよう」


シュウさんは落ち着いた所作で、ポポと瑞(みずき)をカプセルへと戻し、テーブルの魔法陣に据えた。


魔法陣が一瞬眩く光り、すぐに収まる。


「終わったよ。リョウ君、ユカさん。・・・さあ、もう一度呼び戻してみるがいい」


促されるまま、俺は黒いカプセルを、ユカさんは白いカプセルを受け取る。


「最初にカプセルを取った時と同じですね」


そう言って微笑むユカさんの横で、俺は手の中にあるカプセルの感触を確かめた。


そして俺たちは、カプセルに魔力を流し込む。


魔力を受け入れた球体は、光を放つことも、音を立てることもない。


ただ、粘土細工を捏ね上げるような滑らかさで、その表面がうねり、膨らみ、瞬く間に『人型』の輪郭へと書き換えられていった。


「・・・主?」


瑞(みずき)が不思議そうに、俺の顔を覗き込んで呟く。


対照的に、隣では元気な声が響いた。


「ご主人〜っ!」


ポポが叫びながら、弾けるような勢いでユカさんに抱き着く。


「ポポちゃん、元気だね!?」


ユカさんは驚きながらも、嬉しそうにその体を受け止めた。


その様子を、シュウさんは口角をわずかに上げ、満足げに眺めている。


「主、また会えた。今度は、ちゃんと人型。でも、ヤラシイ目で見るのは、駄目だと思う」


瑞(みずき)が俺の手を取り、静かに微笑む


いや、そんな目で見てないからね?


「此れで、もう珊瑚ちゃんと、言葉が被らないね!」


「ピィ!」[私だって、もう少し成長すれば、人になれるもん!]


うん?


珊瑚が、何やら不穏な事を言っている気がするが?


「そう言えば、リリーさん。昔話でドラゴンと人間が結ばれた話があるって、言ってましたよね?」


「・・・うん。言った」


「その話は〜、教科書にも、載ってる〜」と、マリーさんが言う。


「リョウ君、珊瑚君の事なんだが・・・」


シュウさんが、落ち着いた赤い人の声で俺の名を呼んだ。


「はい、何でしょう?」


思わず背筋を伸ばして聞き返す俺に、彼はテーブルの上の魔法陣から視線を上げ、静かに語り始めた。


「ドラゴンが成長して人になるという話は、この世界では非常に有名な話でね。・・・そこで、私はこう考えたのだ。その『成長』とは、すなわち『魔力量の増加』を指しているのではないか、とな」


一言一言を噛み締めるような、独特の語り口。


「そこで珊瑚君に、これを贈りたい」


そう言ってシュウさんが取り出したのは、掌に乗るほどの小さな深紅に煌めく結晶体だった。


「これは・・・?」


「魔力の高純度集積体、とでも言えばいいかな。私の・・・いや、かつての同志たちの知恵の結晶だ。これならば、珊瑚君の魔力量を一時的に、あるいは永続的に引き上げる助けとなるだろう」


シュウさんはそれを、慈しむように見つめる。


「珊瑚君、これを受け取ってくれるか?新しい時代を切り拓くのは、いつだって若い力だ」


「ピ、ピィ・・・!」


珊瑚は、その結晶から放たれる圧倒的な魔力に気圧されながらも、勇気を振り絞るように一歩前へ出た。


一方、その光景を横で見ていたリリーさんが、ポツリと呟く。


「・・・流石、赤い人。贈り物が、彗星級の魔力」と、呟くリリーさん。


深紅に煌めく結晶体を受け取った珊瑚の身体に、膨大な魔力が満ち渡り眩い光が溢れ出す。


「・・・リョウ、向こう向く。他の男も」


リリーさんが、有無を言わせぬトーンで告げた。


俺が「え、どういうこと?」と戸惑うより早く、シュウさんはセニョール監督と共に、既に反対方向を向いている。


・・・流石、戦場での勘が鋭すぎる。


やがて光が収まると、そこには小さなドラゴンの姿はなかった。


「・・・パパ?カオリママ!?」


双六ゲームの世界で聞き慣れた、あの珊瑚の声。


そこにいたのは、あどけない姿をした、一糸まとわぬ全裸の少女だった。


「あわわ!?り、リリーさん?マリーさん?早く何か、何か着せるものを!」


俺は慌てて目を逸らし、叫ぶ。


背中越しに、シュウさんの落ち着いた声が聞こえてきた。


「・・・フフ。予測可能だった回避、というわけか。リョウ君、これが『成長』の代償だよ」


「珊瑚ちゃん、可愛い〜!」


めぐりちゃんが、俺の後ろで騒いでいる。


他の女性陣も、バタバタと動いている。


「ピィちゃん!大人になったのね〜!?ママ嬉しいわ!」


俺の横で、様子を見ていたカオリが瞬間移動したかの如く、珊瑚の方に移動する。


取り敢えず、俺はシュウさんとセニョール監督の方に移動しようかな。


近付いた俺に、シュウさんが「・・・賢明な判断だ、リョウ君。女性の領域に踏み込むのは、某人型ロボットの戦場よりも危険だからな」と、俺にだけ聞こえる様に呟いた。


「リョウ君、シュウさん。・・・ちょっと良いかな?」


喧騒の背後から、セニョール監督が神妙な面持ちで声を掛けてきた。


「そうだな。今は、この場から離れよう」


シュウさんは短く応じると、流れるような所作で壁に手を触れ、音もなく『道』を開いた。


俺も二人の後に続き、静かに部屋を後にする。


背後で聞こえていたカオリたちの賑やかな声が遠ざかり、外の涼やかな空気が頬を撫でた。


「実は、珊瑚君や瑞(みずき)君、ポポ君、それから前回居なかった女性たちにも、今回の映画に出演して貰おうと思う」



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