第二章 第二幕
PV500突破しました!読んでくださる皆さんのお陰です。今後も書き続けさせていただきます!
今回短めかな、とも思いましたがキリがよかったので。
二章はかなりバトル成分多めの予定です。
「しっ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」
ブリザードの吹き荒れるなか、アーサーとニコラスは山を登っていた。
「あまり無駄に喋るなニコラス。余計なことに体力を使ったら…ほんとに死ぬぞ」
「畜生、西織を助けてからプロメテウスとのほとぼりが冷めるまでアイスランドにバカンスとか聞いて舞い上がってた俺がバカだった!ボスの奴何が『あー、何かピザ食べたいわねー。ちょっとそこの奴隷二人。町まで降りて買ってきなさい』だよ!」
「吹雪の中、山の中腹のアジトから麓の町まで上下運動…よく生きてるな俺ら」
「『あ、逆らったら死刑だから♪』じゃねぇぇぇぇぇ!!」
「そう愚痴るなニコラス。断ったら死ぬんだからしょうがないだろう」
「何で氷点下20℃の外より屋内の方が致死率高いんだよおぉぉぉぉ!!」
アーサーは思う。世の中大体そんなもんだ。
会社に養われる奴隷はせかせか働かさせられるものである。
順調に奴隷根性の育っているアーサーだった。
◇◇◇
西織が本を読んでいると玄関のドアが音をたてて開いた。
「あ、お帰りなさい」
「(ぜー…ぜー…ぜー…)」
玄関に入ってすぐにアーサー達はへたりこむ。
「まさか、あんなところに冬眠中の北極熊が居るとはな…」
「あり得ねぇ…何で俺たちこんな思いしてピザ買いに行ってんの?」
短編一本くらいは書けそうな死闘を繰り広げて、アーサー達はヘトヘトだったが、ボスの元へと移動してピザを差し出す。
「ボス…ご注文の、ピザです…」
「え?あぁもうどうでも良いわよそんなの。それよりこの子を二階のベッドまで運びなさい」
四時間にも及ぶ死闘の成果をどうでも良いと言われ、ニコラスはすべての力を失い崩れ落ちる。
いつかこいつ過労死するんじゃないか、と思いながらアーサーは海島が指差したソファーを見る。
そこには14歳ほどの金髪碧眼の少年がいた。
このクソ寒い中ほぼ肌着の。
あ、新しい厄介ごとか、とアーサーは頭を抱えたくなった。
「えっ…とボス。その子は一体?」
「拾った」
「拾ったって…」
「いきなり玄関に転がり込んできて、そのまま気を失ったのよ」
あれ?とアーサーは思った。
海島の性格ならそのまま外へ放り出しそうなものだが…
「西織がソファーに寝かせたのよ。私は元の所に返して来なさいっていったんだけど」
「犬猫とは違うんですよっ!?」
見ると西織は疲れたような笑みを浮かべてこちらを見ていた。恐らくソファーに寝かせるまでにもひと悶着あったのだろう。
疲れた体に鞭打ってアーサーは少年を抱えあげた。
その時少年の服の袖がはらりとまくれ、腕に刻み込まれた模様があらわになる。
一見アルファベットの特殊な字体のようにも見えるそれは
「これ…ルーン文字?」
西織が怪訝そうに声をあげる。
ルーン文字。
一世紀ごろに成立した文字の一種で元は生活に用いられる物だったが、アルファベット等が発達し、ルーンに古い文字、というイメージが定着すると共に呪術的な文字として注目され始める。
少年の腕に刻まれていたのは、その中でも北欧ルーンと言われる八世紀頃に使用されていたものだ。
その中でも少年に刻まれていたのは生命力を表すSと人を表すMのルーン。
それを見てアーサーは気付いた。
少年のほぼ肌着のような格好は所々破けていた。何かに教われ、幾度となく切り裂かれたのだろう。
しかし少年の身体には傷ひとつついていなかった。
もちろんルーンそのものには不可思議な力など無い。
しかしこの世界には魔法が存在する。
そしてその魔法は魔術師の精神性によって決定される。身体に呪術的な記号を組み込むことによって精神を調整し、魔法そのものをコントロールすることは可能だ。
(不死の人…か?)
ルーンが意味する物を考えれば、少年は不死の魔法を発現させている可能性が高い。
となればそんな少年を追いつめた存在がいるはずだが…
アーサーがつらつらと少年について考えていると。
勝手に答えがやって来た。
ゾン!!!と、いう音と共にアジトの扉が両断される。
『梟』メンバーが身構えるのと同時に、続々と襲撃者達が侵入してきた。
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