第二章 第三幕
あ、ありのまま起こったことを話すぜ!
昨日まで二人だったお気に入り登録が一気に五人に増えていた…!
な、何トチ狂ってんだこのアホと思うかも知れねーが、俺にはさっぱり理解できなかった。頭がおかしくなりそうだった…!
新しくお気に入り登録してくださった三人の方々に感謝を!(ガッタガタ手を痙攣させつつ)
玄関や壁を切り裂いて入ってきた雪上迷彩に身を包んだ襲撃者達が持っているのは奇妙な剣だった。
その剣は樹木のような装飾が施され、刀身にも樹の年輪のような波紋が浮かんでいる。
チャキリ、とその剣をこちらに向け、恐らくはリーダー格の男が告げる。
「その子供を差し出してもらおうか、そいつは我々の所有物だ」
部屋に殺意が充満する。
アーサーは皮膚が泡立ち、背筋が寒くなるのを感じた。
ただし、敵ではなく後ろの海島に対して。
「私はね」
そら恐ろしいほどの怒気を込めて海島は言う。
「この国に、バカンスをしに来たのよ」
事ここにいたってようやく襲撃者達は海島に注目し始める。
「その為にこんな辺鄙な温泉つきのコテージも買ったのよ」
アーサー達『梟』のメンバーはこそこそと一ヶ所にまとまり出した。
「だっていうのに…コテージ切り開いてバカンスの邪魔すんじゃないわよーーっ!!!!」
ゴッグシャァッ!!と轟音を立ててリーダー格の男が吹き飛ばされる。
「なっ…!?」
他の襲撃者が俄にざわめくが、海島はまるで止まらない。
近くにいる敵から順番に、殴る蹴るへし折る潰す吹っ飛ばすのオンパレードだ。
「くっクソッ!このアマっ!」
襲撃者の一人が剣を振り上げ、海島に叩きつけるが
「じょ、冗談だろう?このミストルティンが…」
ただの皮膚に受け止められる。
「ふん、植物系の剣でしかも量産してるってことは神話系の魔法だってわかるわよ。その魔法は恐らく『宿木ノ剣』でしょう?神話の中でミストルティン(宿り木)はこの世のすべての物で傷つけることができない神バルドルを唯一傷つけることができるもの。そこから転じてあらゆる防御をすり抜ける剣ってのがその魔法でしょうけど…私は肉体そのものを硬質化しているから『防御』の範疇に収まらないのよ」
つばぜり合いをしながら海島は滔々と襲撃者の魔法を看破する。
襲撃者の顔に恐怖が浮かび、ほんの少し怯んでしまう。
それで十分だった。
海島は剣をはね除け、思い切り襲撃者を殴り飛ばす。
襲撃者はコテージの壁を突き破り、外へ吹き飛ばされていった。
…ちなみにコテージは襲撃者が襲ってきた時よりも遥かに破損していた。
◇◇◇
「これは…成る程、やはりそういうことか」
アーサーは襲撃者の遺体を検分していた。
嫌な仕事だがしょうがない。誰かがするべき仕事だ。
「どうだった?」
コテージに戻ると早速海島が声をかけてくる。
「『アースガルズ』ですね、北欧系の神話魔法という点で予想は着いていましたが」
「神話魔法?」
「そうか、西織は魔術の基本を習っただけでキチンとは魔術を知らないんだったな。神話魔法というのはその名の通り、神話をベースにした魔法だ。神話の神や英雄の生まれ変わりだとか継承者だとか…幼い頃からそう刷り込むことによって、刷り込んだ人間の意識を神や英雄と同一の物にして、その逸話や、権能と同じ魔法を発現させることができる。
これにはいくつかのメリットがあってな。
一つはやはり発現する魔法を選べることだ。まぁ、選ぶのは本人じゃなくその教育係、ということになるが、目的をもってそれに見合った魔法を選べるメリットは大きい。
次に神話のコピーだからとにかく強い。文字通り神の力だからな、勿論魔力消費を考えれば決して神話そのままの力とはいかないが」
「そんな強力な魔法ならどうして皆使わないんですか?」
「デメリットも大きいからな。
まず、幼い頃からの教育が必要だからコストがかかる。人間一人養うのにも金が大量に必要だ。
それに神話のコピーで有るがゆえにその弱点もそのまま継承される。ギリシャ神話にアキレスっていう英雄がいるんだがソイツは全身の殆どが不死だったのにアキレス腱の辺りだけは生身で、そこを攻撃されると足に矢が刺さっただけで死んだそうだ。そのコピーだと踵付近は魔法を使っただけで致死率の高い弱点になってしまう。それに一度コピー元を解析されると簡単に対策を立てられるからな。さっきのミストルティン何て良い例だろう。バレなければもう少し善戦できたかもしれないのに」
「成る程…」
「話が終わったんなら対策を練りたいのだけれど」
西織に説明を終えると海島が声をかけてきた。
「敵は『アースガルズ』だったわね。どう考えてもあの子供が原因でしょう。やれやれ、厄介者ね」
「問答無用であいつらを撲殺したボスの台詞じゃねぇ…あの時さっさと渡しておきゃぁ良かったのに」
「あんたも殴るわよニコラス」
「ひぃ、すいません!」
「コテージ直したのニコラスさんなのに…」
「気にするな西織。あいつはいつもこんな感じだ」
と、そこでアーサーがピクリと上の気配をとらえる。
「どうも件の子供が起きたようですよ、ボス」
「ちょうど良いわ。しょっぴきなさい。洗いざらい吐かせないとね」




