9 あの日のオーロラ
建物の、中に入ると、そこには大きな、部屋とは言い難い、何も無い空間が広がっていた。そして、その奥には何個か扉がある。
「さ、あの扉の奥に母様が居るよ!行こいこ!」
セイレナは嬉しそうだ。久々の里帰りだ。さぞかし嬉しいのだろう。セイレナが扉の1つを押し開けると、そこは、沢山の本に囲まれた部屋だった。床には紙や、本、それにペンなどが散乱しており、散らかっている。そして、部屋の真ん中にある椅子には人が座っている。だが、後ろ向きに座っている為、顔は見えない。
「おやおやおや、来たのかい?」
その人物は振り向き、席を立った。
「あなたが、観測者リピティー?」
私はそう問う。すると、その人物は、
「あぁ、そうだとも。この私が観測者リピティーだよ?」
リピティーは、そう言い、笑う。髪はリボンのような形をしていて、服は床に着くほど長いローブのようなものを着ていて、背が高い女性だ。
「えーっと、変化のミクトに、私の息子。それに、君たちは初めましてだね。洞窟王国ロワールのハイビスカス王女、あとは、ん〜あれ?君は本当に初めましてだねぇ。」
リピティーはしばらく考えた後、わたしの名前は分からなかったようだ。まぁ、あったことないから当たり前だ。だが、どうしてハイビスカスとも初めましてなのに名前が分かったのだろうか?王女だからか?だが、この世界には、写真なんて物は無い。だからハイビスカスの容姿は分からなかったはずだ。それに本当に初めまして?どうゆう意味だ?
「あっ、余市レイです!」
私はとりあえず自己紹介した。
「へぇ〜君はヨイチレイと言うのかい?で?君たちは何しに来たんだい?」
リピティーは私達に近づいてきた。
「この娘が転移してきた理由をお主に聞くためじゃ。」
ミクトはそう答える。
「ん?転移?レイちゃんが?あれ?そんな事あったっけなぁ?」
思ってた反応と違う。なんかもっとこう、観測者だからすんなり教えてくれるのかなぁ〜って思ってたら分からなさそうだ。もしくは私を倒してからにしなさい的な展開を期待してたんだけどなぁ。
「お主、観測者じゃろ?そんな事も分からぬのか?わざわざ苦労してここまで来たのじゃ。それなりの答えくらいよこせ」
ミクトは不機嫌そうな顔になる。
「あのねぇ、変化の祖。あたしの力はね、同じ人生を何度も繰り返す力なの。こんな事初めてだし、そんなに転移について調べた事無いの。まぁ、裏を返せばレイちゃんはあたしからしたら情報の塊だわ。そうねぇ、聞かせてちょうだい。君は転移したとどうしてわかったの?転移後の状況は?元いた世界は?この世界との違いは?どうして元の世界に帰りたいの?」
リピティーは私にすっこく沢山質問してきた。私はその質問一つ一つに答えていった。
「へぇ、そっか君には家族がいるんだぁ。まぁ、帰りたいと思うのは良いことだと思うよ。君のようなイレギュラーな存在はこの世界に悪い影響を与えるかもしれないからね。」
リピティーの質問の全てを答え終わった。
「へぇ、レイの元いた世界ってすごいんだね。」
セイレナも興味しんしんのようだ。
「やっぱりオーロラも気になるよね。レイが転移して来た日に、ちょうど高素の森にもオーロラが発生していたらしいし、」
ハイビスカスも考える。
「まぁ、今日は泊まっていくと良いよ。あと、あたしなりに転移について調べて置くからね。何か分かったら報告するわ。セイレナ、案内してあげな。」
リピティーはそう言い、セイレナの頭に手を置く。
「はい!母様!」
セイレナは嬉しそうに返事する。そして私達はセイレナに、客室へ案内してもらい、夕食をすませ、ダラダラと過ごしていると、同室のハイビスカスが話しかけてきた。
「ねぇ、レイ。あの、セイレナについてなんだけど、」
ハイビスカスは少し気まずそうにしている。
「え?セイレナがどうかした?」
何か悩み事だろうか?そういえばセイレナとハイビスカスの絡みって少ないよな。2人きりだと気まずいって話だろうか?
「セイレナって男の子なの?」
ハイビスカスはそう聞いてきた。
「え?いや、どこから考えても違うでしょ?普通に女の子でしょ。」
私は首を傾げる。どうしてハイビスカスはそんな事聞くのだろう。
「けどさ、リピティーが一人一人名前呼んでく時、セイレナだけ、『息子』って呼んでたじゃん?」
「たしかに!!?!?」
私は驚きで目を見開く。確かに、リピティーはそう言っていた。それにセイレナの一人称は私から僕に変わっていたし、
「お主ら、まだ気づいてなかったのか?あいつは、男じゃぞ?」
ミクトの衝撃の一言。
「!!!?!?!!?」
私の疑問が確信に変わった。ハイビスカスも驚きで言葉を失っている。もちろん私もだ。だが、すっごくいいと思う。セイレナが男の子なんてまじ素晴らしい。
「けど、本人が言ってた訳じゃないし、聞き間違いだよ?きっと。」
ハイビスカスの目は泳ぎまくっている。
「馬鹿か?そもそも、あやつだけ別室じゃぞ?それに妾の目は誤魔化せん。あやつは男じゃ。絶対にな。なんなら本人に聞いて来るのじゃ。」
ミクトはそう言い、部屋から出て行ってしまった。やばい、どうしよう本人が気にしてる感じだったら。セイレナを傷つけてしまうだろうか。ミクトを止めようと決意し、外に出たが、時すでに遅かった。ミクトは、もうセイレナに話しかけていた。私は咄嗟に物陰に隠れてしまった。
「お前、性別は男なのか?」
しかもどストレートにきいている。
セイレナは目を見開き、顔お赤くしながらこう答えた。
「そっ、そうだよ。よくわかったね。僕は男の子だよ。」
それからミクトはまたまたストレートに質問する。
「なんで女装してるのじゃ?」
「そっ、それは、たまたまドレスを着てみたら似合っちゃってて、信者のみんなにも評判良かったし、それに、この気持ち悪い足も隠せるからさ、」
セイレナは自分のスカートの裾をそっと持ち上げた。そこにあったのは、人の足ではない。セイレナの足はまるで鶏のような、羽毛が生えた、鳥の足だったのだ。
「ほら、変でしょ?この足。」
セイレナは笑う。でも、その笑顔にはどこか無理をしているように見えた。
「何を恥じる必要がある。」
ミクトは鼻を鳴らし、
「鳥だから、鳥らしい足をしておるだけじゃ。それに、ほれ!見るのじゃ。」
ミクトも自分のスカートの裾を捲り上げる。すると、ミクトの足も、セイレナと同じような足にに変化した。
「この妾にも出来るぞ!」
ミクトは自信満々にそういう。
「それにこの足だと、早く走れそうだし、お前の大きな翼で空を飛び、その鋭い爪で攻撃する事も可能じゃろ?気持ち悪いだの、そんなに己を卑下するな。お前のその足、役に立つじゃろ?」
ミクトはそう言い、ニコッと笑う。セイレナはそれを見て、驚いた表情をした後、
「そうだね。確かに役に立つよ。ありがとう!ミクト。君のお陰で少し自信が持てたよ。じゃあね。」
セイレナは笑顔で感謝し、小走りで、部屋へ戻って行った。私はミクトの元へ駆け寄り、
「ミクトって人を励ます事ってできるんだね。偉いぞぉ〜」
そう言い、ミクトの頭を撫でた。
「これ!頭を撫でるでない!お主は妾を舐めておるのか?そりゃあ妾は何百年も生きておるからのぅ。励ます事くらい出来るに決まっておるのじゃ。こら!やめるのじゃ!」
ミクトはそう言い、私の手をはたく。私達は部屋に戻り、ハイビスカスにセイレナの性別について伝えた。
「へぇ、やっぱり男の子だったんだね。見た目からじゃ全然分からなかったよ。」
ハイビスカスはそう言う。
「お前も何故女なのに男装をしておるのじゃ?」
ミクトはまたまたズバッとストレートにそう聞く。だが、私も気になりはしてたので止めなかった。ハイビスカスは少し考えてから。こう言った。
「えーっと、話せば長くなるんだけど、僕のお母様、僕を産んだ時に亡くなってしまってね。それで、僕はロワール王国のたった一人の跡継ぎになってしまったんだよ。お父様も新しい妃を向かい入れる気は無いようだし、僕がいつかは王になる。だから、そのケジメとして男装をするようになったんだよ。」
「お主ら、なんだか似ておるな。」
ミクトは突然、そう言い出した。
「似てるって、ハイビスカスとセイレナが?」
似てるって、どこら辺が?
「だって、あやつらそれぞれ逆の格好をしとるじゃろ?」
ミクトはクスクス笑う。
「ミクト、君にはデリカシーって物が無いのかい?」
ハイビスカスはクスッと笑う。良かったハイビスカスは気にして居ないようだ。
「ほら!もう夜中だよ!寝よう!」
私はそう言い、ベッドに潜る。
「確かにね、夜更かしは身体に毒だ。」
ハイビスカスもベッドに入り、明かりを消す。
「じゃあおやすみ。ミクト、レイ。」
「おやすみ。」
私達は眠りについた。みんなが眠りに落ちたとき、窓の外からの景色は美しい雪景色に、ロワールの大きな山が見える。突然、ドォオーンと爆音が響き渡る。その衝撃で、私の目は一気に覚めた。
「何事!?!?」
窓の外を見ると、私は驚きで言葉も出なかった。なんとロワール王国の大きな山からは煙が上がり、空には美しいというよりかは、禍々しい。紫や緑に輝いている。そう、あの時と全く同じ、私が転移したのと同じオーロラが浮かんで居た。ロワール王国がピンチだ。私は大急ぎでみんなを起こした。




