10 ノルア
「なにこれ!?こんなオーロラ見た事無いよ!」
ハイビスカスはオーロラ見て驚く。
「何事じゃ?来んな夜中に」
ミクトは眠そうに目を擦っている。
「とりあえず、リピティーの所へ行こう!」
私はそう言い、リピティーが居る部屋へ向かった。廊下を走り、大きな扉を押し開けると、部屋には明かりが付いていて、リピティーはまだ起きているようだ。それにセイレナもリピティーと居る。
「リピティーさん!オーロラが!」
私は息を切らしながらリピティーを呼ぶ。
「はぁ、始まっちゃったかぁ、」
リピティーはため息をつき、カーテンを開ける。窓の外のオーロラはさっき見た時よりもさらに色濃くなり、禍々しい。
「お前、やっぱり何か知っておるな?」
ミクトはリピティーを睨みつける。
「そんな顔で睨まないでよ〜変化の祖。このタイミングのオーロラはあたしも想定外だったもの。いくらなんでも早すぎる。とりあえずこれから何が起こるのか、説明するね。まず、あのオーロラはあたしは、大厄災と呼んでるの。レイちゃん?ノルア病って知ってる?」
リピティーは、私にそう問う。
「ノルア病って、心臓が止まって死ぬ病気だったような?」
「そう。けど具体的に言えば濃度が高い磁源に当てられた人間がかかる病気で、身体の機能が止まる病気なの。」
「その病気とあのオーロラになんの関係があるのじゃ?」
ミクトは窓の外を眺めながら言う。
「その病気ような見た目のノルアって少女が暴走を始めたの。ノルアって子はロワール王国の地下で幽閉されているんだけど、」
「待ってよ。いくらなんでも情報が多すぎるよ。それに私の国で?幽閉?そのノルアって子は誰なの?けどとりあえず、ロワールへ向かおうよ!ノルアを止めなきゃ!ロワールが大変なんだよ!」
ハイビスカスは混乱しているようだ。そりゃあ自分の国が大変な事になっているのだから。
「焦る気持ちはわかるよ。けどねぇ、ハイビスカスちゃん。情報はとっても大事なの。私の話を聞いて。それに闇雲に突っ込むのは危険だよ。」
リピティーはこれまでのヘラヘラとした態度とは違い、真剣な顔だ。
「分かった。」
ハイビスカスは感情を抑え、歯を食いしばる。王国が心配なのだろう。
「でね、そのノルアって子の力、磁術が厄介でね、強すぎるの。具体的に言えば生き物の時間を動かしたり戻したり、止めたりする力でね、なんでもありなのよ。そして、それと併用して陽術に、電術まで併用してくるの。でね、その大厄災で、ロワール王国は壊滅。その周辺諸国も大きな被害がもたらされたの。そして私も、その大厄災で何度も命を落として来た。けどね、安心して!ちゃんと今回も対策して来たから。」
リピティーはそう言いながら、壁のスイッチを押す。すると、大きな乗り物のような物が出てきた。翼がついており、空を飛べそうだ。触ってみると、機体はプラスチックのような柔らかい素材だ。
「すごい、これは飛行機?」
私は驚く。
「飛行機!いい名だねぇ、じゃあこの乗り物は飛行機と名付けましょう!」
リピティーはこの乗り物の名前を付けていなかったらしい。ハイビスカスは大きな機体を見て驚いている。
「これって本当に飛べるのかい?こんな乗り物ロワールにも無いよ、」
「これで、今回こそは、絶対に大厄災を止めるから。貴方たちも、協力してね。」
リピティーは自信満々にそう言う。その姿は頼もしく思えた。リピティーには、何度も死を繰り返しても、負けない意志の強さがあるのだろう。
「うん。もちろんだよ。」
ハイビスカスはそう答える。私も頷く。
「ふん、仕方ないのう。」
ミクトも協力する気があるようだ。
「ほら、貴方たち!乗って!」
そして私達は飛行機に乗り込んだ。
飛行機の中は割と広々していて、結構な人数が乗れそうだ。そして、リピティーが座っている操縦席には、たくさんのスイッチや、レバーがあり、まるで映画に出てきそうだ。
「よし、じゃあ出発するよ〜!捕まってて!」
リピティーはそう言い、レバーを前に倒す。すると、機体は前に進み出し、オーロラが輝く大空に飛び立った。機体はどんどん上昇していき、雲の上まで来た。
「レイ、なんか耳がキーンってするよ」
ハイビスカスはそう言い、周りをキョロキョロする。
「あぁ、それ気圧だよ。大丈夫しばらくしたら治るって」
私はそう言う。ハイビスカス以外の人達はあまり空を飛んでいる事に驚きもしてないようだ。
「みんなは意外と空を飛ぶ事に驚いてないよね?」
「あぁ、そりゃあそうじゃろ?空を飛ぶなど朝飯前じゃ。」
ミクトはフフンと鼻を鳴らす。
「私も一応、空飛べるから慣れっこだよ。」
セイレナもそう言う。
「なるほどね!君たちは空飛べるもんね!便利だなぁ」
「いやいや、そんなに便利じゃないよ?」
セイレナは首を横に振る。
「そうじゃ。飛べぬお主は知らぬじゃろうが、凄く疲れるのじゃぞ?山を走って往復するよりも疲れる。」
「へぇ、そんなに疲れるんだ。じゃあ前の霧の時ってめっちゃ疲れたでしょ?」
ミクトに無理を言っていただろうか?そんなに疲れるのならもっと早く言ってくれれば良いのに、
「あぁ、疲れたが、妾は変化のミクトじゃぞ?全然余裕じゃ。」
ミクトは腕を組み、そう言う。良かった。そんなに負担になっていなかったようだ。そもそもミクトは体力バケモンだったな。
「お主、今失礼な事を考えなかったか?」
ミクトはじーっと私を見つめる。
「いやいやー考えてませんよー」
私は目を逸らした。
「もうすぐロワールに着くよ〜」
リピティーはそう言う。ハイビスカスはすぐに窓の外を見る。窓の外には、ロワール王国の大きな山が見える。そして、荷物を抱え、国から逃げる国民達が見える。私達はすぐに着陸し、ロワール王国の中へ行った。街に入ると、住宅の明かりはほとんど消えていて、とても暗い。そして、なんだか煙たく、焦げ臭かった。そして城の方に目をやると城からは赤い炎か上がっていた。
「お父様!!!」
城を見たハイビスカスは走り、城の中まで走っていってしまった。
「こら!待つのじゃ!全く、ほれ!レイ、セイレナ!妾に乗れ!」
ミクトは四つん這いになり馬に変化する。
「お前はあの飛行機とやらで待機するのじゃ!お前には戦う力などあまり無いじゃろ?」
ミクトはそう言い放つ。
「いやいや、そこのレイちゃんよりは戦えると思うけどねぇ〜まぁ、分かったわ。変化の祖。けど、朝日が昇る頃には大爆発が起きて国もその周辺もすべて消え去るわ。それまでにハイビスカスちゃんを連れ戻してちょうだい。爆発を止める方法は、あたしに任せてちょうだい。じゃあ、命を失わないように。気をつけてね。」
「リピティーさんも!気をつけてね!」
ミクトは私達を乗せ、走っていった。私はリピティーに手を振った。
「ねぇ、どうして私を連れて行くの?私も待機した方が足手まといにならないと思うけど、」
私はみんなみたいに術は使えない。特別な力も無い。おまけに体力も無いし、足手まといになるだけだろう。
「お主が元の世界に帰れるかもしれぬからじゃ。ノルアには世界に干渉する力を感じる。ノルアを生かして止める事が出来たら、お主は帰れるかもしれぬ。」
「けど、リピティー母様が言ってたけど、ノルアには時間に干渉する力しか無いって言ってたよ。さすがに別の世界には干渉出来ないんじゃないかな?」
セイレナはそう言う。
「確かにのぅ。足手まといを1人連れてきてしまったな。」
ミクトはため息を着く。いやいや、ミクトが着いてこいって言ったじゃん!
そして、私達は城に付き、中へ進む。そして、部屋を一つ一つ確認した。だが、そこには誰も居なかった。そして、次は玉座がある、謁見の間の扉を開けた。すると、部屋の明かりは外からの月明かりのみで、玉座の上には、人影があった。ハイビスカスか?
「ハイビスカス!」
私は叫ぶ。だが、その人影はハイビスカスではなかった。
「あら?貴方はお客人?ごめんね!ノルアはお姉様じゃないの。あ!お馬さんに乗っている!まるで絵本にでてくる王子様みたいね!」
この人物、ノルアと言ったか?確かに見た目はノルア病そのままだ。長い白髪に、赤と紫の瞳。服は中世ヨーロッパの貴族が来ているようなワンピース型のパジャマだ。それに、顔と背の高さや、体型はどことなくハイビスカスに似ている。それにお姉様と言ったか?こいつはハイビスカスの妹?
「ねぇ!ハイビスカスは?どこ?」
私はそう問う。
「お姉様はね、あそこ!」
ノルアは部屋の角を指さす。するとそこにはダルクが倒れており、近くにハイビスカスも座り込んでいた。
「ハイビスカス!大丈夫!?」
私はハイビスカスの元へ駆け寄る。
「僕は大丈夫だよ。少し磁源にやられただけだよ。けど、ダルクが、」
ハイビスカスはダルクを見る。ダルクはなんと、髪が白くなり、ノルア病にかかっていた。
「ごめん、なさい、ノルア様を逃がしたのは、私です。」
ダルクの目は虚ろだ。
「セイレナ!薬を!」
私はセイレナの方を見る。だが、
「もう、手遅れだよ。この子はもう助からない。ノルア病にかかっちゃったらどうしようもないんだよ。」
セイレナは俯く。その背中はとても悔しさに満ち溢れていた。
「お前、なぜ『アレ』を逃がしたのじゃ?」
ミクトの声は低く、相当怒っているようだ。だが、ダルクからの返事は無かった。死んでしまったのか?
「くそ、これだから人間は。すぐに死ぬ。」
ミクトは歯を食いしばる。
「ダルク、、ダルクはね、ずっとノルアの世話係だったんだよ。それできっと情が湧いて、ノルア、、あいつを逃がしたんだよ!」
ハイビスカスの目からは涙が溢れ出ていた。だが、その涙には怒りも感じられる。
私はハイビスカスにどんな言葉をかければ良いか分からず、立ち尽くす。すると、セイレナが、ハイビスカスの元まで行き、ハイビスカスを力いっぱい抱きしめた。
「ハイビスカス、大丈夫。大丈夫だから。」
セイレナの目にも涙が溜まっている。このセイレナの言葉はきっと確証もない言葉だろう。ダルクはもう無くなっている。きっとハイビスカスを励ますため、必死に考えた嘘だ。
「ねーえー!ノルアを仲間はずれにしないでー!あれ?お姉様、ないてるの?だいじょうぶ?寂しいの?ダルクはしんじゃったけど、ノルアが居るからお姉様はひとりじゃないよ!」
ノルアはニコッと笑い、ハイビスカスに触れようとする。すると、その手は弾かれた。
「触らないで!そもそもお前誰だよ!僕に妹なんて居ない!この悪魔が!」
ハイビスカスはそう叫ぶ。するとノルアは、
「なんで?お姉様。なんでそんなに痛い事するの?ノルアのこと、わすれちゃった?」
ノルアは目を見開き、驚く。
「お前なんて知らない!!お前のせいで、ダルクが、、殺してやる!!」
ハイビスカスの瞳は怒りで満ちていた。ハイビスカスが手を振りあげると、稲妻が飛び交った。電術だ!
「なんで?なんで?なんで!なんで!!!ノルアは、悪魔じゃないもん!!ノルアのこと、忘れないでよおおおお!!!!」
ノルアは突然叫ぶ。その瞬間、ハイビスカスが放った電術も、私達も一瞬で、壁に叩きつけられた。私は何が起きたか理解出来ず、体の痛みに苦しむ。けど、壁に叩きつけられるまでの瞬間、一瞬だけ空気に弾かれたような、身体が浮いて、そのまま空気に飛ばされた感覚がした。周りを見ると、ミクトも、ハイビスカスもセイレナも壁に叩きつけられており、セイレナは意識を失っていた。ミクトは、すぐに起き上がり、
「お前!よくもこの妾を吹っ飛ばしてくれたのう!これでも食らうのじゃ!」
とても怒っているようだ。ミクトはノルアに向けて手をかざす。すると、突然、周辺の空気が熱くなり、なんと、真っ赤に輝く炎が飛び出して来た。ハイビスカスが使っていた陽術と同じ物のようだが、威力が段違いだ。さすがミクト。ミクトの攻撃が終わると、ノルアは既に真っ黒に焦げていた。焦げ臭い、人が焼ける臭い。
「ふん、この程度か。」
ミクトは、鼻を鳴らす。だが、そんなにノルアは甘くない。なんと、真っ黒だった、ノルアの身体がどんどん回復していく。まるで時間が戻ったかのように傷が治っていく。
「いたい、いたい、いたい!!!なんでそんなにひどいことするの!!」




