6 観測者
私達は、ベッドに入り、3秒もしない内に眠りに落ちてしまった。
私達が眠っている頃、城の地下牢では、ガシャン。鎖の音がする。
「はぁ、お姉ちゃん帰っちゃったなぁ〜あ!ダルク〜!お料理運んでくれてありがとうね!」
無邪気な少女の声が地下牢に響いた。
私が目覚めると、窓の外は暗い。まるで夜に起きたようで、変な感じがする。
「流石洞窟王国だね。朝なのに夜みたいだ」
私は身支度を済ませ、まだ寝ているミクトを起こす。
「ミクトー!朝だよ!起きて!起きないと、こちょこちょしちゃうよ?」
ミクトはまだ、すやすや眠っている。これはもう、こちょこちょするしかない。私はそう決心し、ミクトのお腹をこちょこちょした。
「!?ちょ、やめるのじゃ!やめ、アハハハハ!」
ミクトは起きた。
「はぁ、はぁ、お主、朝から何をするのじゃ。この妾に失礼だとは思わないのか?」
ミクトはお腹を抑え、威嚇する。
「だって、ミクトもふもふしてて触り心地良いんだもん。」
「妾は!変化のミクトじゃぞ!人間がそう易々と触っていい存在じゃないのじゃ!ちょ、やめるのじゃ!」
私はミクトに抱きつき、ミクトを吸う。深く息を吸い込み、ミクトを堪能する。この瞬間が1番幸せだ。
「はーなーれろ!そういえばお主は元いた世界に帰りたいと思うか?」
ミクトは突然そう聞いて来た。
「え?帰れるの?」
「いや、分からぬが、お主には家族がいるじゃろ?一生離れるのは悲しかろう。」
確かに。私は俯く。
お母さんやお父さんに、もう二度と会えないのだ。歳の離れた妹もいる。それに将来の夢も叶えられてない、この世界も楽しくて好きだ。だが、私は元の世界が大好きだ。
「私は、帰れるんだったら帰りたい。やっぱりさ、帰ったらやりたい事もあるし、親孝行もしたい。」
私はそう言い、笑った。
「そうか、そりゃあそうじゃな」
ミクトはどこか寂しそうだ。
「よし、そうと決まれば、お主の帰る方法を調べるぞ!まずは城の書庫に行くのじゃ!」
ミクトはそう言い、立ち上がる。
「その前にさ、朝ごはん食べない?」
「おお、そうじゃったな。」
私達は朝ごはんを済ませ、書庫へ向かった。
書庫はとても大きく、沢山の本が並べられている。私は試しに1冊取ってみる。表紙は皮が使われていて、とても豪華だ。開いてみると、紙はザラザラしていて、私の世界の物より品質が悪い。それに文字は手書きのようだ。だが、やはり読めない。
「わぁ、文字まじで見た事ない。」
私が本とにらめっこしていると、
「難しい顔してどうしたんだい?」
ひょこっとハイビスカスが現れた。
「わっ!びっくりしたー!今ね、文字が読めなくて困っているんだよねぇ、」
「文字か、僕が読んであげようか?」
「え!良いの!?ありがとう!」
私はハイビスカスに感謝した。
「ちなみにさ、レイはどんな本を探しているんだい?」
「うーんとね、」
なんて説明したものか、異世界の本?それとも転移についての本?私が言い淀んでいると、
「いでっ!」
上から本が降ってきた。
「お主、何をぼーっとしてるんじゃ?ほれ、この本読め。」
ミクトは本棚の上に昇り、本を漁っているようだ。
「いたた、もう!本を上から投げないでよ!」
私は本を拾う、だいぶ上の棚にあったのか、随分と埃っぽい。
「どんな本?えーっと、転移歴史書?なんで転移?」
ハイビスカスは不思議そうだ。
「えーっとね、私異世界から転移したっぽいんだよね。」
「え?異世界?てんい?」
ハイビスカスは混乱しているようだ。とりあえず、私はハイビスカスに今までの事を話した。
「なるほどね、レイはこの辺の地域出身じゃなさそうだなーって思ってたんだよ。君は異世界から来たんだね!とりあえず理解したよ。よし!じゃあこの本僕が読んであげるよ。」
「ありがとう!ハイビスカス!」
『じゃあ読むね、 転移歴史書。まず、転移とは、まだ謎が改名出来ていない、人が突如消える、行方不明になる現象とする。転移その1 東の異国の姫が天に昇り、行方が分からなくなる事件。他にはーーーー。だが、転移から帰って来た事例は存在しない。』
「うーん。大分内容が難しいね。それにこの本の転移の定義が違うようだね。それに帰ってきた事例もないようだね。他には転移について詳しく書かれている本はないのかな?」
「残念ながらこの1冊だけじゃ。」
ミクトは本棚を漁り終わったようで、戻ってきた。
「この本だけじゃ、レイが元の世界に帰れるヒントにならないよね。それに帰れる確証も無いし、」
ハイビスカスは考え込む。
「あ!そうだ!ちょっとまってて!」
ハイビスカスはなにか思いついたようだ。ハイビスカスは本棚の奥を漁り、1冊の本を取り出した。
「あったあった!」
表紙が銀色の本。持ってみると、意外と重い。どうやら本物の金属が使われているようだ。ハイビスカスはページをめくり、女の人の肖像画が書かれているページを開いた。
「この人に聞いてみるのはどうかな?」
ハイビスカスは肖像画に指を指す。肖像画の女性は、美しい顔立ちをしている。
「だれなの?この女の人は」
「ほほぅ、観測者か。」
ミクトは知っているようだ。
「観測者?」
「観測者リピティー。この世の全てを知るもの。と書かれているね。」
ハイビスカスは本を読む。
「リピティーはの、世界で起きた事や、これから起きる事など大体把握しているのじゃ。あと、馴れ馴れしいやつじゃ。」
「へ、へぇ、とにかく凄い人なんだね。てか、ミクトはその人に会ったことあるの?」
「あぁ、会ったことあるのじゃ。初対面なのに久しぶり!などと言われたのぅ。それにあいつは人かは分からぬがな。」
「リピティーが居る樹天の森も近いから会ってみる価値はありそうだよ?」
「そうだね、じゃあその樹天の森?に行ってみよう!」
私はそう言い、拳を突き上げる。
「ここから歩いて約3日か、急げば、ギリギリ2日目の夜明けまでには着きそうじゃな。」
「えぇー全然遠いじゃん。」
私は肩を落とす。
「この世界では、3日は短い方じゃと思うがな。」
「馬車だと1日くらいで着くと思うよ!」
ハイビスカスは素晴らしい提案をしてくれた。
「え!馬車早!てか馬車使って良いの?」
「もちろんだよ。なんてったって君たちは僕の恩人だよ?これでも返しきれないよ。」
「ありがとう!」
私はハイビスカスの手を取り、感謝した。
「よし、じゃあ明日出発するかのう。妾は疲れたから部屋に戻るぞ。」
ミクトは、そう言い、部屋を出た。
そんな感じで、次の日になり、お城の前には豪華な馬車が止まっていた。
「わぁ、凄い!前乗ったやつよりめっちゃ豪華じゃん!」
私は目を輝かせる。
「そうだね。前の馬車は急いで用意したやつだからね。前回とは比べ物にならないくらい乗り心地良いと思うよ。」
ハイビスカスはドヤ顔で笑う。
私達は馬車に乗り、ハイビスカスの合図で馬車が動き出した。
ロアールの正門が開き、外の眩しい光が目に入る。私はロアールの街を眺めていた。
馬車は、山道にはいった。馬車は急な坂道をぐんぐん登る。
「ねぇ?レイの世界はどんな感じなの?」
突然、ハイビスカスはそう聞いてきた。
「えーっとね、私の世界は地球って名前でね、科学がね、発達しててさ、」
「かがく?」
どうやらハイビスカスは知らないようだ。
「うーんとね、簡単に言えば、物から陽術みたいな力を得る事!けど、私の世界には陽術も、電術もないんだけどね。だから科学で似たような効果を得ているの!」
「へぇ、君の世界には陽術などの力は存在しないんだね。」
「それに科学は簡単でね、この世界でも普通にあるよ。」
「え!そうなのかい!?」
「ほら塩を作る時とか、海水を煮て作るでしょ?それが科学。他にも電術みたいな事も科学で出来るんだよ〜」
「えー!凄いね!海水から塩を作るのは天使セイレナの力だと教えられて来たけど、君の世界では科学の力なんだね!」
ハイビスカスは興味津々だ。
「天使?セイレナ?」
「あ、天使セイレナはね、高樹の森の近くにある神殿の神様だよ。」
「へぇ、この世界にも宗教があるんだ。」
そんな感じで、私はハイビスカスに私の世界の話をした。電車や、コンビニ、飛行機などの話もした。馬車は高樹の森付近に近ずいている。
「でさ、ドーナツってお菓子がさ、凄く美味しくてさ!あれ?ハイビスカスどうかした?具合が悪そうだけど」
ハイビスカスの顔色よくない。車酔いならぬ馬車酔いだろうか?
「ごめん。ちょっと酔っただけだよ。」
「この辺はちと磁源がこいのぅ。」
ミクトは窓の外を見つめてそう言う。
「磁源って、ノルア病の?」
「ああ、そうじゃ。じゃが、この程度じゃノルア病にはならぬよ。高素の森程の濃度じゃないと滅多にかからぬ。」
「ロアールの洞窟はね、元々磁源が濃くてね、そこに無理矢理国を創ったから、その濃い次元を地下の配管から、高樹の森に排出してるんだよ。」
ハイビスカスは背もたれにもたれかかって、苦しそうだ。
「そうなんだ。磁源って体に良くないんだよね?ハイビスカスはお城に戻った方が良いよ。ここまで来たら歩いて行けるし、」
「いやいや、僕はレイと一緒に旅をしたいんだ。僕はレイについて行くって決めたんだ。」
「ハイビスカス、わかった。けど無理だったら言ってね。」
ハイビスカスが心配だ。もしノルア病になってしまったら、ハイビスカスは死んでしまうだろうか。
「あぁ、わかったよ。ゲボッ」
「ハイビスカス!!?!」
ハイビスカスは嘔吐し、意識を失った。そんなに磁源は危険なのか。
「とりあえず!ハイビスカスを安全な所に!」
「そうじゃの!あそこの神殿に向かうのじゃ!」
ミクトは窓の外にある神殿に指をさす。私達は神殿に向かった。
神殿は大きく、カラフルなステンドガラスが輝いている。神殿に入ると、信者の人たちが、ハイビスカスの手当をしてくれた。私はベッドで寝ているハイビスカスを見つめる。すると、後ろから声を掛けられた。私が振り返ると、息を飲むほどに美しい女の子が立っていた。
「安心して、この子はすぐ元気になるよ。それに、貴方も元気にならないとダメだよ。奥に食事が用意されているから、少しは食べなさい。」
声の主は大きな天使の羽が生えている。服はスカートがバルーンじょうに大きく広がったドレスを着ていて、黄金にかがやく髪は美しい。
「えっと、あなたは?」
「あぁ、私はセイレナ。この神殿の神様だよ。」
なんと、この子は神様だった。




