路地裏に消えた歌 「『流し』の独り言」
第82話目とての投稿作品は、カクヨムの自主企画「2000文字以内でお題に挑戦!」のお題「路地裏に消えた歌」に対して書いた、フィクションな独り言の『現代ドラマ』作品です。
路地裏の居酒屋に『流し』が呼ばれて訪れる。
そんな『流し』の独り言を、私の勝手な想像で書いてみました。
だから現実とは全く違っているのかも知れませんが・・・
勤め先からの帰宅者でごった返す電車の車内、私は今日もギターを抱えて電車を降り、帰宅ラッシュ中の改札口から押し出されるように駅の外に流れ出る。
駅前から『流し』の仕事が入った路地裏の居酒屋に、愛用のギター伴奏で耳障りの良い誰もが知っている演歌等の懐メロを演奏し歌いながら向かう、宣伝を兼ねたチョットしたパフォーマンスタイムですね。
昔と違って誰もがお店に設置された『カラオケ』の演奏で、モニター画面に表示される歌詞を視ながら上手に歌えてしまう時代になってしまったため、私のような『流し』で歌や演奏を生業とする芸人は随分減ってしまいました。
楽曲選択だって最新の『カラオケ』ならば、いつでも簡単に数十万曲の中から自由に選んで歌えてしまうのだから、私のような『流し』が例え数千曲を歌えたり演奏ができたとしても、今流行っている曲も中々都合良く覚えられませんし、全く『カラオケ』には太刀打ちなんてできません。
いわゆる斜陽産業の絶滅危惧な職業なんでしょうから、これも時代の流れ、時代の変化なので仕方が無いことなんでしょう。
お客さんの年齢層によって、流行も違うし曲のリクエストが全く違うので、どんなに頑張っても『カラオケ』のような何でもござれには、流石に成れませんからね。
大先輩曰く、「ビートルズが日本に初来日したころなんて、ラジオから流れて来る数多の曲を、お客さんのリクエストに応えるためにも、ほぼ耳コピーで必死に覚えるしかなかったが、今はインターネットで新曲も直ぐに『カラオケ配信』だから、本当に便利な時代になったものだよな・・・」でしたから、物凄い時代の変化ですよね。
きっと昔の『流し』の方たちは、流行り歌を新たに覚えて披露するのも、中々大変なことだったのでしょう。
「外国語の歌なんて、歌詞の意味も全く理解しないまま、耳で聴いたそのままで歌っていたから、後から歌詞の意味を知って、恥ずかしくなったこともあったんだぞ」なんて昔話も聞きましたし・・・
職業的には『流し』は個人事業主の請負なので、収入的にも不安定ですし、最低賃金も適用されずなのです。
だから私は何とかギリギリ生活ができるレベルの収入ですし、音楽漬けの日々ですが、好きこそ物の上手なれですから、楽しんで『流し』の活動できるのでしょうね。
日本全国を『ドサ周り』で、1年中ほぼ宿暮らしの状態で、地方巡業をして巡っての芸能活動をする方も多く居ますが、私には狭い自宅アパートから短時間で行ける範囲内で、ギターだけで芸能活動をする『流し』の方が性に合っているのですよ。
有難いことに「昔ながらの生ギター演奏の『流し』が懐かしくて良いんだよね」と言って、今日も私を呼んでくれるお店があるので、私が『流し』の芸人なんだよって周りの方々に判るように、五月蠅いと言われない程度のかなり控えめな音量で懐かしのメロディーで宣伝しながら、ゆっくりと歩いて行くのです。
私の宣伝につられて、路地裏の居酒屋に訪れてくれれば、お客さんもお店もそして私も全員がウインウイン(Win-Win)ですからね。
大通りから路地裏に、そして居路地裏の酒屋店内にと、私の移動とともに聴こえていた歌はフェードアウトするように消えてしまいます。
今から私が路地裏の居酒屋店内を『流し』の芸で大いに盛り上げますので、もしお時間があるようならば、ぜひ一度ご来店くださいネ。
『全国流し協会』なんて組織が設立されているとかで、今は400名くらいの『流し』が加入しているらしいです。
だから今も、日本の彼方此方で『流し』が芸能活動しているのだとか。
例えば東京方面だと、池袋サンシャイン60通り店と業務提携していて、『流し』の姿が観られるみたいですよ。




