90.秋楽は楽しめない
秋楽と蓮業では、蓮業の方が強いです。
(秋楽視点)
「……さ、どっからでもかかって来て良いよ?……おじさん、こう見えて結構強いし……」
「だったら遠慮なく……【逆転】でヤンス!」
ーギュイン!
あっしは向かい合っている蓮業さんと自分の立ち位置を入れ換えて、背中合わせになった蓮業さんに爪を用いた奇襲を仕掛けようとしたでヤンス。
でも……
「へぇ、おじさんが聞いてた報告通りか……」
ーぞわっ……
「っ!?」
ーサッ……
蓮業さんの間合いに入った辺りで、あっしは本能的に後退していたでヤンス。
「ふ~ん、そこそこ賢いか……」
「……あっしには蓮業さんが何も持ってない様に見えるんでヤンスが……多分、幻術でヤンスよね?」
「まあ、そうだね~」
「……しかも、それを抜きにしても実体を捉えにくいでヤンス……」
蓮業さんは武器を幻術で見えなくしてたでヤンスが、生憎幻術対策のアクセサリーなんて持ってないから肝心の武器は分からないままでヤンス。
しかも、それに加えて……
「そっちこそ素手で大丈夫?……それでおじさんと戦える?」
「余計なお世話でヤンス!……そう思うなら、せめて武器だけでも教えるでヤンス!」
「良いよ~。……おじさんの武器、実は忍者刀なんだよね~」
「……何処まで信じて良いか分からないでヤンス……」
この男の発言は、何処まで信じて良いのかすら不明と来たでヤンス……
武器は本当に忍者刀なんでヤンスか?
さっき語った結界の効果は真実でヤンスか?
……そもそも見えてる蓮業さんは本当に実体のある本物なんでヤンスか?
あっしには分からないでヤンス。
「……うんうん、おじさんが思ってた以上に御しやすそうだね~」
「ハァ?……何を言ってるでヤ……」
「攻撃は読みやすい、性格も分かりやすい、しかも逃走を禁止されたら表情から余裕が消えた……ここまで見せておじさんに隠し通せてると思ってる方がお笑い草だよ~?」
「くっ……【逆転】!【逆転】!【逆転】!【逆転】でヤンス!」
ーギュイン!ギュイン!ギュイン!ギュイン!
あっしは何度も蓮業さんと立ち位置を入れ換えたでヤンスが……結局、状況が好転する事はなかったでヤンス。
「うんうん、それで次はどうする?」
「ハァ……ハァ……す、隙が全く見つからないでヤンス……」
……あっしは【逆転】しか使えないでヤンス。
それも、立ち位置を入れ換える事しか……
「……やっぱり、立ち位置の入れ換えしか出来ない感じかな?……おじさん、拍子抜けしちゃったよ」
「ぐぬぬ……」
こいつ、あっしが気にしてる事を……
……あっしだって、内臓の入れ換えや魂の入れ換えが出来たらどれだけ良かったかと思った事は何度もあるでヤンス。
でも、実現出来た事はないでヤンス。
「あれ?……もしかして本当にもう終わり?」
「好き勝手言ってくれるでヤンスね~……【逆転】でヤンス!」
ーギュイン!
こうなったら意地でも攻撃を通してやるでヤンス!
そう覚悟を決めたあっしは、再度【逆転】で立ち位置を入れ換えた末に蓮業さんの間合いに入ろうとしたんでヤンスが……
「うん、おじさんには通用しないね」
ーブスッ!
「いだっ!?」
蓮業さんの間合いだと予想した範囲に入ろうとした瞬間、あっしの右腕に激痛が走ったでヤンス。
すかさず、あっしが自分の右腕を見ると……
「さて、どうだったかな?」
「……棒手裏剣、でヤンスか?」
あっしの右腕には、棒手裏剣の類いが刺さっていたでヤンス。
……いつの間に打たれたのか、あっしにも分からなかったでヤンス……
「ハァ……正直に言うと、これでもおじさん期待してたんだよ?……あの八妖将の一角、死獄童子の配下を束ねる四鬼の1人って聞いてたからね……」
「それはありがたいでヤンスね……」
「……でも、それはさっきまでの話さ。……おじさん如きにしてやられる様な相手だとは思わなくてね」
「……ハァ?」
……こいつ、自分の実力を理解して……
いや、理解した上で言ってるでヤンスね。
「いくら立ち位置を入れ換えられようが、おじさん自身が痛手を負う事はない。……君の配下がこの場に居れば別だったのかもしれないけど、生憎ここに居るのは君とおじさんの2人だけ……この意味が分からない程、馬鹿じゃないよね?」
「……あはは、やっぱり強いでヤンスね~……」
やっぱり、蓮業さんはこうなる様に仕向けてたんでヤンスかね~。
あっしが1人になって蓮業さんと対峙する、このシチュエーションを用意するために……
「さて、実際のところ君の処分はおじさんも悩んでるんだ。……君と宝造路財閥が繋がっていた証人として生かすべきか、この場で殺してしまうべきか……」
「……もうそういう話でヤンスか?……それは流石に早過ぎるでヤンスよ……【逆転】でヤンス!」
ーギュイン!
「だから、それはおじさんに通用しない」
ーブスッ!
「うぐっ!?……また棒手裏剣でヤンスか……」
【逆転】で立ち位置を入れ換えてからの奇襲を仕掛けるも、今度は左腕に棒手裏剣を打たれる結果になったでヤンス……
……でも、あっしは止まらないでヤンス!
「へぇ、止まらないか~」
「あっしの攻撃、受けて……」
「なら、こっちの方が良かったかな?」
「っ!?」
ーザシュ!
棒手裏剣を打たれても止まらず、蓮業さんに攻撃を加えようとしたあっしでヤンシたが……
そんな覚悟は虚しく、蓮業さんが持つ"何か"に浅く袈裟斬りされる結果になったでヤンス。
「ふ~ん、直前で後ろに退いたか……おじさんの攻撃が浅くなっちゃった。……ま、元々忍者刀は"刺す"用で"斬る"のに向いてないってのもあるんだけど……」
「ハァ……ハァ……これはどうも……土俵が違うで……ヤンスね」
あっしでも分かるでヤンス。
あっしでは絶対に、蓮業さんには勝てないでヤンス。
何処から攻撃しようが、どう攻撃しようが、臨機応変に対応して来る……
この男は、そういう奴でヤンス。
「おじさんは君の戦い方を理解してるからね。……サシの勝負にすればおじさんに有利なのは、君も気付いていただろう?」
「……そうでヤンスけど……」
あっしは他の四鬼の皆さんよりも戦闘力って面では劣るでヤンス。
春銭太夫さんみたく光線は出せないでヤンスし、夏死忌さんみたく安全圏から攻撃も出来ないでヤンス……
そして冬夜童子さんに至っては論外なレベルで戦力差があるでヤンス!
「別に、逃げたきゃ逃げて良いんだよ?」
「……結界がある限り、不可能な話でヤンス……」
「そうだね~。……じゃ、やっぱりおじさんを殺すしか手はないね」
「……それが無理なんでヤンスよ!」
遠距離では棒手裏剣、近距離では忍者刀……
どうやっても、攻撃を防げないでヤンス。
……いや、やるしかないでヤンス!
「……おっと、おじさんを殺る気になったかい?」
「ハァ……【逆転】でヤンス!」
ーギュイン!
「……おじさんの立ち位置は変わってない。……となると……ここだね!」
ーブスッ!
「うぐっ!?」
あっしは近くに有った小物と立ち位置を入れ換えたでヤンスけど、やっぱり立ち位置を捕捉されちゃったでヤンス。
「馬鹿の一つ覚え、か……頭が良くないのに黒幕を気取ってるらしいし、君にはお似合いの戦法かもね」
「ハァ……ハァ……う、煩いでヤンス!」
……あっしが馬鹿なのは、あっし自身が1番分かってるでヤンス!
現に、今回の作戦も改めて振り返ると粗ばっかりが目立つでヤンスし……
「図星か~」
「……本気でお前を潰してやるでヤンスよ!」
「え、まだ本気じゃなかったんだ~?」
……こいつ、徹底的に潰してやるでヤンス!
「ふぅ……【混乱必至・迷ノ秋】でヤンス!」
ーギュイン!ギュイン!ギュイン!ギュイン!……
「おっと、何度も立ち位置が入れ換わってるね~」
【混乱必至・迷ノ秋】……相手と自分、更には周囲の物の位置をランダムで【逆転】させ続け、相手の平衡感覚その他諸々を混乱させるあっしの最終奥義……
これを食らった後、マトモに対応出来た者は存在しないでヤンス!
「ふ~ん、なるほどなるほど~」
「な、何なんでヤンスか?」
でも、蓮業さんは何だか平気そうでヤンスね……
……っと、そんなタイミングであっしと蓮業さんが背中合わせの位置に入れ換えられて……
「うん、ここだね~」
ーブスッ!
「あがっ!?」
つ!?
こいつ……背中合わせの……状態で……あっしの……心臓を……刺したでヤンスか?
ーギュイン!
「……うん、おじさんはちゃんと君の心臓を刺せたみたいだね」
「ごふっ!……あっ……これ……駄目でヤ……ン……」
あっしの……意識が……闇に……呑まれて……
もう……無理で……ヤ……ン……
ご読了ありがとうございます。
……秋楽はまだ終わりません。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




