54.空助の初体験
前半は、死獄童子パートです。
(俯瞰視点)
とある山奥にて……
「秋楽ぅ、夏死忌ぃ……てめぇ等、何やってくれてんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「「っ!」」
ービクッ!
そこでは、秋楽と夏死忌が死獄童子によって厳しく叱責されていた。
ちなみに秋楽は正座をさせられ、夏死忌は本体こそ居ないものの黒い泥から出ている髪の毛は震えていた。
「あれだけ手は出すなって言ってただろ!?……いや、この際手を出した事は置いといてやる!」
「で、では何で怒ってるんでヤンス?」
「我の命令を無視しといて、無様な醜態見せた事に決まってんだろ!?……いくらてめぇ等にその気がなかったとしても、秋楽が放った人形は無様にも降参しやがって、挙げ句に向こうの軍門に下りやがった!……普通、自爆装置とか付けとくだろ!」
「いや~……あれ以上不純物を混ぜると弱くなっちゃいそうだったでヤンスから……それに、向こうさんが生かすとは思わなくて……」
「ごちゃごちゃ言い訳すんじゃねぇぇぇぇぇぇ!」
ードシィィィィィン!
「「ひぃっ!」」
享楽主義の秋楽も、破滅主義の夏死忌も、死獄童子の前では何も出来ない矮小な存在だった。
死獄童子が怒れば体が震え、金棒で地面を叩けば怯えた声を上げる事しか出来ない……
所詮、四鬼とはその程度の存在でしかなかった。
「冬夜は冬夜でどっか行っちまったし、本当に我の部下は使えねぇ奴等ばっかりだなぁぁぁぁぁ!」
「ひぃっ!……そ、そういや冬夜童子さんは何処かのカジノでそこのトップに詰められてたでヤンスよ?」
「本当に何してんだぁぁぁぁぁ!?……普通、こんな時にカジノとか行くかよ!?」
「しかも、そこは人間と妖が共に楽しむカジノだとか言ってたでヤンス!」
秋楽は少しでも自分に向けられる死獄童子の怒りを逸らそうと、冬夜童子に関する情報を提供した。
すると……
「何で人間と敵対してる奴がそんな所に行くんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ードシィィィィィン!
「おっしゃる通りでヤンスぅぅぅぅ~!」
「……ってか、それって元五武妖の牛鬼と僵尸がやってるカジノだろ!?……本当に何してんだぁぁぁぁぁ!」
結局、秋楽の言葉は火に油を注いだだけだった。
それこそ、火災に大量の油を注いだが如く……
「……本当に、冬夜童子さんは昔からあっし等とは反りが合わないでヤンスね~。……殺戮を楽しむあっし等と違って、戦う相手を尊重する……正しく、絵に描いた様な武士でヤンスし……」
元々、秋楽は冬夜童子を良く思っていなかった。
自己至上主義の春銭太夫、破滅主義の夏死忌、享楽主義の秋楽……彼・彼女等は皆、自分本意な妖だった。
だが、冬夜童子が掲げる思想は"武士道"。
とてもじゃないが、分かり合えるものではなかった。
「てめぇ等ぁ!……我はもう我慢ならねぇ……だが、蛸鯰の野郎に文句を言われんのも同じくれぇ我慢ならねぇ……」
「お、お怒りでヤンスね……」
「ったりめぇだろうがぁぁぁぁぁ!……春銭太夫が殺された挙げ句、他の2人も醜態を見せる始末と来たもんだぞ!?……怒らねぇ方が難しいってもんだ!」
「お、おっしゃる通りでヤン……」
「それももう聞き飽きたんだよ!……我が聞きてぇと思ってんのは、そんな言葉じゃねぇんだ!」
最早、死獄童子の怒りはMAXになっていた。
しかし、これでも彼はその怒りをどうにか自分の内に留めようとしていた。
……ここで強力な手駒を喪う方が、より損失がデカくなるからだ。
「冬夜も冬夜だ!……元々、我とは考え方が違う癖に我のストッパーになろうとしやがって!……その気がねぇなら出しゃばるんじゃねぇぇぇぇぇぇ!」
「……あ、それ思ってたんでヤンスか……」
死獄童子とは考え方が違うにも関わらず、自身についてきた冬夜童子への怒りもまた、彼は内に溜め続けるしかなかった。
「……人間共、覚えてろよぉぉぉぉぉぉ!……我が必ず皆殺しにしてやるからなぁぁぁぁぁ!」
……発散の時はまだ先。
しかし、死獄童子の怒りは確実に蓄積されていたのだった……
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(数時間後、九十九 空助視点)
「……えっと、これってもう寝るだけですか?」
「……少なくとも、数時間は寝かせないでございますよ?」
「そうだケラ!」
今、僕は一条院家の沙耶花様の部屋にて、沙耶花様と怪良さんの2人から獲物を見る目で見つめられていました。
ちなみに、宗雪様はというと……
「うわぁぁぁぁぁ!……もう無理だぁぁぁ!」
「まだ6発目じゃねぇかァ!」
「まだ行けるっす!」
「せやろ?……宗雪はん?」
隣の部屋から、壁を貫通する勢いで情事中の宗雪様達の声が聞こえていました……
僕、宗雪様と近い状態になってしまうんですか?
「確かに俺様はまだ平気だが、これ以上すると吹っ切れて徹夜コースに……」
「願ったり叶ったりだァ!」
「同じくっす!」
「同じくや~!」
……本当に、よくヤりますよね……
「……さて、私共もヤりましょうか……」
「……そうするケラ!」
……ああ、思えば宗雪様に見出だされてから長く経ちましたね……
あの頃はまさか、沙耶花様と本当に婚約出来るとは思いませんでした……
いや、そういう誘いに乗ったのは僕ですが、何処かのタイミングで捨てられるとばかり……
「何を考え込んでいるのでございますか?」
「さっさとヤるケラよ?」
「……本当にムードも何もあったもんじゃないですね……」
思えば、沙耶花様との付き合いも長くなりました。
初めて会った時に一目惚れして、話せば話す程惹かれていって……一緒に宗雪様の行動を見て楽しんだりもしましたっけ……
怪良さんは、初めて会った時はただの敵でしたが……今となっては、情熱的だったと言えなくも……言えないですね。
でも、今は胸を張って好ましいと言えます。
未だに恋愛的な好きには至れていませんが……
……そういえば、今って萌音様は1人だけ恋人なしの状態ですよね?
何か罪悪感がエグいですね……
「……空助さん!」
「空助!」
「あっ……また考え込んでしまいましたか。……では、お詫びとしては何ですが……」
ーぎゅっ……
「「っ!?」」
……僕は、この2人を絶対に不幸にはさせません。
絶対に……幸せにしてみせましょう。
だから……
「さあ……存分に、僕で楽しんでください」
「では、遠慮なく楽しませていただきましょうか」
「そうさせて貰うケラ!」
「ええ……布団の上でくらい、僕を好きにしても良いですよ」
そうして僕は、沙耶花様と怪良さんという2人の美しい捕食者によって、美味しくいただかれました。
そして、それと同時に……2人の初めてもいただいたのでした……
その後、翌朝……
ーパチリ……
「zzz……zzz……空助さん……私は……大好きで……ございます……」
「zzz……zzz……空助……今度は……戦闘で……勝ってやるケラ……」
「……なるほど、これが婚約者の居る生活ですか……」
宗雪様は、もっと早くこんな生活を過ごしていたんですか……
……これまでは静観していましたが、何だか対抗意識が芽生えて来ました……
「……さて、それじゃあ2人が起きるよりも先に、歯を磨きに行きますか……」
目覚めのキス、1度やってみたかったんですよね……
「そのためにも、口内は綺麗にしておかないと……」
僕はそのまま部屋を出ました。
そして、洗面所で……
「「……あっ……」」
……宗雪様と出くわしました。
「……空助も搾られたか……」
「……宗雪様もですか……」
「だが、好きな相手とヤるのは幸せだったろ?」
「ええ、とても」
婚約者が居る男として、宗雪様の気持ちがとても分かりました。
「……で、怪良は好きになったか?」
「勿論、胸を張って好きだと言えます!……ちゃんと恋愛的な意味で……」
「……良かったな」
「まあ、僕が単純な気もしますがね」
こうして僕達はしばしの雑談を交わしながら歯磨きを終えて、それぞれの婚約者が眠る部屋へと戻るのでした……
ご読了ありがとうございます。
次回、美乱御前への挨拶……
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




