53.冬夜童子のトラブル
前半は、ちょっとした閑話的な話です。
(俯瞰視点)
某所、とあるカジノらしき店にて……
『……ってな訳で、あっしが放った人形は降参しちゃったらしいでヤンス……』
「……ふむ、それは残念で候」
『後、夏死忌の独断専行もどうにかならないでヤンスか?』
「どうにもならないで候」
その男は、和風姿の武士らしき青鬼だった。
その青鬼は掌サイズの鏡らしき物で誰かと会話しており、周囲の視線を集めていた。
『え~……春銭太夫さんが死んでから、四鬼で話せる相手が居ないんでヤンスよ~!』
「自業自得で候。……そもそも、当分は動かないという兄者の命令を破った点では秋楽も同罪で候」
『うっ……』
「寧ろ、某が1番苦労させられているで候」
青鬼こと冬夜童子は、鏡の先で話している秋楽をやんわりと叱責していた。
『……は、話は変わるんでヤンスが、冬夜童子さんもスマホを持ったらどうでヤンスか?……人間に変装する術くらい習得してるでヤンスよね?』
「すまほ?……それは何で候?」
『……そうだったでヤンス。……冬夜童子さん、価値観が全然アップデートされない老人じゃないのに老人みたいな鬼だったでヤンス……』
スマホの存在すらよく知らない冬夜童子を見て、呆れ果てる秋楽。
最早、そのやり取りも周囲の迷惑になり始めた頃……
「……青鬼のお客さん、私のカジノで他のお客さんの迷惑になる事をするのは止めるアル!」
チャイナドレスを着て、髪を頭上で2つの団子にして纏めた僵尸の美女がやって来た。
「おっと、これはすまないで候」
「……こちらとしては下手に揉め事は起こしたくないんだアル!……特に、ここは土地神たる私がトップを務める人間も妖も楽しめるカジノだアル!……そこに人間と敵対してる身で来てるんだから、もうちょっと弁えて欲しいアル!」
「ほ、本当にすまないで候……」
冬夜童子は、何の抵抗もなく謝った。
すると……
「おうおう兄ちゃん。……ここは人間と妖が何のしがらみもなく快適に楽しむ事をモットーにしたカジノじゃけぇ。……問題を起こした日にゃ、どうなるか分かってるんじゃろうなぁ?」
「……それは勿論で候……」
もう1人、頭から牛の様な角を生やしたヤクザ風の男もやって来たのだった。
「……角賀、まだあんたの出番じゃなかったアル!」
「……土梅、これでもワシはこのカジノのケツ持ちじゃけぇ。……当然、問題を起こす客は早めに取り締まるべきじゃろ」
角賀と呼ばれたヤクザ風の男と、土梅と呼ばれた僵尸の美女……
2人は、明らかに冬夜童子より強かった。
「そ、そうアルが……」
「……それに、もしあんたに何かあったら……ワシは冷静じゃ居られんくなる」
「い、言い過ぎアルよ……」
「……生憎、ワシは自分の妻が殺られて冷静を保てる程、お人好しじゃないからのう」
角賀は、土梅を妻と言った。
そして、そのまま冬夜童子に殺気をぶつけ……
「特に、兄ちゃんはさっきからギャンブルもせずに話しばっかじゃけぇ。……そんな相手を、ワシが警戒せんと思っとるけぇ?」
「……ふむ、では聞くが……碁や将棋、双六は何処で候?」
「「……ハァ?」」
冬夜童子が告げた言葉は、訳の分からないものであった。
「……それとも、ここはカルタや花札を扱ってるんで候?」
「は、花札なら奥の方でやってるアルが……」
「おお!……ならば、この小判を使って大判を大量に稼ぐで候!」
「いや待つアル!……それ、先にチップに両替するアルよ!」
……1つ、角賀と土梅には誤算があった。
それは、冬夜童子の価値観がなかなかアップデートされないという事……
彼にとってのギャンブルや通貨は江戸時代の物で止まっており、現代のそれを見せられても理解出来なかったのだ。
「ちっぷ?……それは何で候?」
「……青鬼のお客さん、ちょっとこっち来るアル!」
「兄ちゃん、よくそんな認識でギャンブルに来たなぁ……」
「うむ、そもそも某はギャンブルが何かを知らなかったで候。……秋楽に賭け事だと教えて貰い、ここに来たで候」
「……私達が徹底的に教えてやるアルから、早くこっちに来るアル!」
「こういう客が、揉め事の原因になるけぇ!」
……結局、冬夜童子は角賀と土梅により、現代のギャンブルに関するあらゆる事を教えられるために連行されて行った。
そしてこれにより、運命の歯車が大きく狂う事になったのだが……この時は、誰もそれに気付いていなかったのだった……
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(一条院 宗雪視点)
「……これ、僕が悪いんですかね……」
「……まあ、沙耶花の期待に早く答えなかったって意味ではそうかもな……」
今、俺様は空助の相談に乗っていた。
……それにしても、まさか空助が怪良とも婚約する事になるとは……
「……って、これ僕が美乱御前に挨拶しなきゃいけない感じですか?」
「……だろうな」
本当に、それには同情する。
まさか、空助が怪良とも婚約するとか……俺様ですら予想してなかったからな。
と、ここで怪良が口を開いて……
「……あ、そういや美乱御前様に報告しなきゃ駄目だケラな。……えっと、美乱御前様に買って貰ってたスマホを使って……って、美乱御前様から大量の不在着信が入ってるケラ!?」
……あれ?
そういや俺様、何があったか聞けてねぇ様な……
「……取り敢えず、電話してみたらどうでございますか?」
「そ、そうケラね!」
ープルルルルル……ガチャ
『怪良!……さっき急に位置が捕捉出来なくなったんでありんすけど、無事でありんすか!?』
「ぶ、無事だケラ……」
まあ、うん……
ここまでは問題ねぇな。
……ただ、本当に問題なのはここからだぞ?
『よ、良かったでありんす……で、何で気まずそうな声を上げてるんでありんすか?』
「じ、実は……私、空助と婚約したんだケラ!」
『₩彌$◇儺€¥鯊&○#鐚※@蟇☆%醺□~!?』
「……言葉にならねぇ叫びが出たな……」
電話の向こうから聞こえたのは、とてもじゃねぇが言葉にはならねぇ叫び声……
「……本当に僕、明日まで生きられますかね……」
「それは……頑張れとしか言えねぇな……」
……もう、空助が美乱御前に殺されてもおかしくなくなって来たぞ……
「沙耶花、これどう責任取るつもりだ?」
「……まあ、大丈夫でございますよ」
「今の絶叫聞いてもそう言えるのかよ……」
「……言えますよ?」
……沙耶花、本気で言ってんのか?
これ、かなり激ヤバな状況だぞ?
と、ここで再度電話の向こうから声がして……
『……こほん、明後日の土曜日に美乱雑技団の拠点に来て欲しいでありんす』
「……そこで、僕は殺されるんですか?」
『……ノーコメントでありんす。……で、その日まではそっちで一緒に過ごしても良いでありんすよ?……勿論、初体験を済ませたって良いでありんす』
「……ん?……割と寛容ですね?」
てっきり、指1本触れるなとか言うと思ったら……
割と寛容だぞ?
『怪良の判断をわっちは尊重するでありんす。……もっとも、わっちとの挨拶でどうなるかは別問題でありんすが』
「……何も安心出来ないんですが!?」
『じゃあ、土曜日に会うでありんす』
ーブチッ!……ツ~ツ~ツ~……
……何か、生きるか死ぬかの瀬戸際なってんな……
ってか、俺様も巻き添え食らいかねねぇぞ……
「では、本日は私の部屋に3人で泊まりましょう」
「……沙耶花様、本気で言ってます?」
「本気ケラか?」
「本気でございます。……それで、既成事実を作ってしまうのでございます」
……沙耶花が何か言い出したが、俺様は知らねぇ。
後は空助達に任せて、俺様は嵐が過ぎ去るのを待つ!
そう思い至った俺様は、密かに空助を見捨てるのであった……
ご読了ありがとうございます。
次回、空助と怪良が沙耶花の部屋にお泊まり……
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




