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144.空助の堅実な判断

今週は1話だけしか思いつきませんでした。

(九十九 空助視点)


「ギュリュリュゥゥゥゥゥ~!」


ードシィィィン!ドシィィィン!


「……あれが、例の龍神モドキですか……」


……村長さんから話を聞いて十数分後、案内役の村長さんを含めた僕達4人は山道を掻き分けた先の神域で目的の龍神モドキを見つけました。


ただし……


「話に聞いていた通り、とても荒ぶってるでございますね……」


「体のあちこち地面や崖に打ち付けて、だいぶ皮が剥がれ落ちてるケラ……」


「ギュリュリュゥゥゥゥゥ~!」


ードシィィィン!ドシィィィン!


……当の龍神モドキはその全身を地面や崖へ勢い良く打ち付けていて、全身の表皮が剥がれ落ちかけていたのです。


と、ここで怪良さんが何かに気付いた様な表情を浮かべて……


「ん?……あれ、皮膚が剥がれた場所をよ~く見たら、何か鱗が生えて来てるケラよ?」


「「「っ!?」」」


僕達が急いで怪良さんの指摘した箇所を確認すると、そこには純白に輝く硬そうな鱗が生え揃っているのが見えました。


「……ああ、やはり僕の予想した通り龍に成りかけの状態みたいですね……」


「しかし、それにしては脱皮?が上手く行ってない様子でございますが?」


「ふむ……となると、脱皮途中で"白容裔"だとバレてしまい、龍へ成るのに必要だった信仰心が途切れてしまったというところですかね……」


「あ~、進化直前でこっそり荒ぶってたら人を集めちゃって、その流れで正体バレした感じケラか~……」


本来、付喪神である"白容裔"が龍へと成るのは相当無理がある筈なんですが……


……龍神として長年祀られれば、そんな無理難題すらも可能になるのが妖の特徴ですからね……


ただし、途中で龍でない事がバレてしまえば途端に信仰心が揺らぐ訳で。


「で、では龍神様が今もなお苦しまれている理由はまさか……」


「……龍神を祀っていた信者にあたる村人の皆さんが、その正体に気付いてしまったせいでしょうね」


「そ、そんな……」


……この事態は、村人の皆さんが進化途中で荒ぶっていた龍神モドキを観察する内に、不運にもその正体に気付いてしまったせいでここまで長引いてしまったというのが現時点で最有力の仮説になってしまいました。


とは言っても、これで村人の皆さんを責めるのはお門違いでしょう。


普通、祀っているとはいえ龍神が荒ぶり始めたら警戒しない方がおかしいというものです。


……そして、更なる不運としてその時点ではまだ表皮が剥がれておらず鱗も見つけられなかった。


「……流石に、この状況で村人の皆さんに非があったなんて言うつもりはありません。……ただのミスや不運が重なっただけです」


そう、ミスや不運……


村人の先祖が"白容裔"を龍の子と間違えたのはミス。


正体に気付かず現代まで祀り続けてしまったのもミス。


現代になって"白容裔"が龍に進化し始めたのは不運。


このタイミングで正体に気付いてしまったのも不運。


そして、龍神モドキが土地神として信仰を集めていた範囲が村1つ分だったが故に、退魔連がさほど注目していなかったのもまたミスであり不運……


……それでこんな事態にまで発展するからこそ、ミスや不運は馬鹿に出来ないんですけどね。


ただまあ、村長さんはそれで納得出来ない様で……


「いいえ、この件の責任は私を含めた当村の者達にあります」


「……ハァ……貴方達がそう思いたいなら好きにしてください。……そうそう、最後に僕から1つ聞いておきたい事があるのですが……」


「はい?……まだ何か、私に聞きたい事が?」


「いえ、その……この龍神モドキは過去に、生贄や花嫁等を求めた事があるのかと……僕にとって、今後の方針を考えるのに重要な要素なので」


……そう、生贄や花嫁。


この手の土地神が庇護の見返りとして求めるものの代表例です。


それ等を求めた事があるかどうかで、この龍神モドキに対する処遇も変わるというレベルで警戒度が変わります。


……さて、今回はどちらでしょうか。


「生贄や花嫁、ですか……少なくとも、私が知る限りでは過去にそういったものが求められた記録はたったの1度もありません。……逆に、提案するも身振りで断られたという記述すら見つかった程で……」


「そうですか……よし、方針は決まりました」


「ほ、本当ですかな!?」


この龍神モドキは、過去に生贄や花嫁を求めていないどころか断っている……


……なのに、村の守護はやり遂げて来たと。


ふむ……


そうなると、残る手は1つだけですね。


「それでは村長さん、僕達はひとまず帰らせて頂きます」


「…………………は?」


……大変心苦しいですが、この案件は僕達の手に余ると判断せざるを得ません。


まず、前提として僕達3人は完全な近接戦闘型であり、大型の妖相手に優位を取るのは厳しい。


加えて、相手は龍への進化不全を起こしている厄災レベルの案件……


その上で……


「……おっと、勘違いしないで欲しいのですが、僕達にだってアレを倒せる可能性は残っています。……ですが、僕個人としてはアレを倒すのは得策とは言えません」


「ど、どうしてでしょうか!?」


「どうして、ですか。……あの龍モドキは、これまでこの村のために身を粉にして働き続けて来た健気な者だからですよ。……僕の見立てでは恐らく、神として祀られる事への見返りとして、これまでこの村のために尽くして来たと推測されます。……そんな益妖を荒ぶっていて危険だという理由だけで討伐するのは、あまりにも心苦しいと思いませんか?」


「そ、それは……」


……多分、村人に山で拾われた"白容裔"は神として祀られた事への恩義を返し続けて来たのでしょう。


だというのに、最後は正体がバレて腫れ物扱い……


それを討伐出来る程、僕達は無慈悲にはなれません。


……かといって、この龍モドキの進化不全を治す方法も持ち合わせていません。


「1度、この案件は上に報告します。……宗雪様か学校かそれとも退魔連の上層部か……何処かは言いませんが、適切な者が送られて来るでしょう」


「わ、私達を見捨てはしないのですね!?」


「少なくとも、僕に見捨てる気はありません。……村人の皆さんも、この龍モドキも……」


「ハァ……本当に空助さんはお人好しでございますね」


「あ~あ、結局何もせずに帰るんケラか……」


そういえば、ここに来たのも特訓目的でしたね。


……少し冗談でも言ってみましょうか。


「なら怪良さん、僕達でアレと戦いますか?」


「……生意気言ったケラ……」


「分かれば良いです」


ふむ、折れるのが早いですね。


……夜はあんなに積極的な割に、こういう時は誰よりも堅実な判断をしますよね。


「……流石にアレは無理でございましょうし、あまり冗談でも言うものではございませんよ?」


「沙耶花様の言う通りですね、僕も肝に銘じておきましょう」


「……空助さん、実際のところ反省してないでございますよね?」


「バレましたか」


さて、それはそうと何処に報告すべきでしょうかね。


……宗雪様の一派でこの案件に対応出来そうな方はそれこそ玖尼様ぐらいですが、今の玖尼様に問題事を持ち込むのは気が引けますし……


悩ましいですね。


と、ここで……


「話は変わるケラが、報告先で悩んでるなら学校に報告しとくと良いケラよ?……ぶっちゃけ、丸投げ先としてはバッチリだケラ!」


「……露骨に話を逸らしたつもりでしょうが、確かに好ましいですね」


ふむ、ここは国立退魔連大学附属高等学校の先生方にでも丸投げしましょう。


「は、はぁ……つまり、私達は数日後に来られるであろうその方々を迎えれば良いのですかね?」


「その認識で大丈夫です。……という訳で、僕達はこれで」


「は、はい……」


と、そんなやり取りを終えて僕達は急なトンボ帰りをする羽目になりました。


……物語の主人公であれば八面六臂の大活躍で龍モドキをどうにかするのでしょうが、僕にそんな力はありませんので無理な話です。


「……これで良かったのでございましょうか?」


「仕方がないとはいえ、モヤモヤするケラ……」


「……僕達に出来る事がない以上、これが最善策ではありますから……割り切るしかないですよ」


そうして、僕達は帰路につきました。


……途中で国立退魔連大学附属高等学校へ、事態の報告を行いながら……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(俯瞰(ふかん)視点)


それから3日後……


「ふふふ、報告にあった患者はここでふよね?」


「……ったく、あてしは本を読んでいたいだけフミなのに……」


「まあまあ、"図書室の幽霊"だからっていつまでも閉じ籠ってると体調悪くなるでふよ?」


「幽霊に体調も何もないフミ!」


……空助の狙い通り、国立退魔連大学附属高等学校から適切な人員が派遣される事になる。


「ふふふ……今日は保健室の外でのお仕事でふか~」


「図書室から出たくなかったフミ……」


その人員は片や養護教諭、片や七不思議の1席であったのだが……彼女達の活躍は、また別のお話。

ご読了ありがとうございます。


今の空助、緊急性が低い時に勝てない敵へ挑戦する様な愚行はしません。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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