↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義士英雄譚-緑と赤の誓い-  作者: レイン
第一節 常盤の子

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/44

幕間 三歳の夢

幕間 三歳の夢


 兄の背が、門の向こうへ消えようとしていた。


 呼び止めれば振り返る。そう分かっているのに、声が出ない。

 手には兄から預かった書物がある。少し重く、抱え直すと紙の端が胸に当たった。


「達者でいろ」


 兄が振り返り、そう言った。


 聞きたいことはほかにあった。いつ戻るのか。次に会ったときも、こうして話せるのか。

 けれど兄はもう歩き出している。


 待って――。


 伸ばした手が空をつかみ、牛若は目を開けた。


 薄明かりの中、見慣れた天井がある。胸の上には書物などなく、寝巻きの袖を自分で握っていた。


「兄上……」


 隣で常盤が身を起こす。牛若が三つになってから、夜中に呼ばれることが増えていた。


「今若に会いたくなった?」


 牛若はうなずきかけて、やめた。夢の兄は、今若ではない。

 顔を思い出そうとすると、門の向こうへ歩いていく後ろ姿ばかりが浮かぶ。


「乙若も、お寺で元気にしているわよ」


 常盤が牛若の髪を撫でる。


「今度、会いに行きましょうね」


「……うん」


 牛若は常盤の手に頬を寄せた。もう一度目を閉じるころには、兄に何を預けられたのかも思い出せなくなっていた。ただ、胸の上に残る重みだけが、しばらく消えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。