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無敵のガーデナー 〜花を美少女に変える魔法でハーレム作ります【悲報】煩悩が消えて美少女たちは変態で俺は魔王と呼ばれています〜  作者: 余儀ノ理人


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㉒樹皮、いわゆる膜の内側

 部屋に戻るなり、プータスはダボダボのコートの裾をパタパタとはたきながら、鼻を鳴らした。


「ふん。あの第七王子とやらの脳内構造は、偏執狂的な好奇心に満ちた欠陥品ですが、我が知的優位性を証明するには格好の遊び相手でしたね。マスター、私の完璧な論理的交渉術と、至高のディベートスキルを心ゆくまで称賛してもいいのですよ?」

 相変わらず上から目線で尊大な態度を崩さないプータスだが、その小さな頭にちょこんと乗った丸い実の髪飾りは、先ほどの激しい議論で少しだけズレており、どこか間抜けな愛嬌を漂わせていた。


 俺はため息をつきながら、彼女の前に歩み寄る。

「よくやったよ、プータス。だがな、お前は少し力みすぎだ。知性の過剰投下は、魔導植物にとって肉体的・魔力的な負荷でしかない」

「な、なんですか急に。物理的な接触は効率的な魔力伝達を阻害する要因となり得るので、あまり近づかないで……ぐっ!?」


 俺は抵抗するプータスの両肩を容赦なく掴み、その小さな体を無理やり自分の膝の上に座らせた。

「ちょっ、マスター!? 何をする気ですか、私を解体でもするつもりですか!? 定義域を逸脱した不法接触です!」

「バカ言うな。手入れだよ」

 俺は指先を微かに発光させ、彼女のくすんだ緑色の髪や、プラタナスの樹皮を模したコートの繊維に指を滑らせた。


「プラタナスは本来、街路樹として大地に深く根を張り、太陽の光と膨大な地下水を吸い上げて成長する大木だ。いくら魔導植物として小型化されているとはいえ、昨日の今日で急激な高負荷の魔力演算を行えば、末端の葉脈や魔力回路の分岐点に微細な詰まりが生じる。……ほら、ここ、枝先の神経が異常にこわばってるだろ?」

「っ……! そんなの、私の高度な演算処理能力の前には些細な誤差です。放っておけば勝手に……」

「放っておくか。草花と違って、樹木の手入れは根元と樹皮の呼吸を整えるのが基本なんだよ。こうして、余分な熱を逃がしてやるように優しく撫でる」


 俺は指先をプータスの青白い頬から耳の付け根、そして背中へと丁寧に流していく。本来ならば樹木であるプラタナスの地肌はごつごつとした硬い樹皮のはずだが、草花として生まれ変わったプータスの背は驚くほどスベスベで、みみずくのような瑞々しい潤いに満ちていた。

 だが、樹木の皮には植物としての生命線を握る大切な働きがある。外敵や病原菌を寄せ付けないための最後の砦であり、内部の水分蒸発を防ぐための精巧な膜なのだ。それが十分に機能しているか、あるいは魔力過多で熱を持っていないか。それを把握するためには、直接肌に触れ、微弱な脈動を確かめるほかない。

 すべては、極上の花を咲かせるための厳格な園芸学的プロセスに他ならないのだ。


「ひ……あ……っ?」

 プータスの全身が、ビクリと激しく跳ねた。

 瞳の奥でギラギラと狂気的な知性の光を放っていたはずの漆黒の瞳が、まるでショートした電気回路のように、急速に霧散していく。ダボダボの袖の中で、小さな手がガタガタと痙攣していた。


「な……なにこれ……身体の芯が……熱い……魔導回路の最適化どころか、思考の定義域が完全にバグっていく……。白亜紀の太古から数万年間、幾億年の歴史の中で、一度たりとも体験したことのない未知の周波数……これが、有機物の……」

 冷徹で傲慢だった天才ロリの目は完全に据わり、トロリと甘い熱を帯びて潤んでいた。口を半開きにし、ダボダボの袖で必死に顔を隠そうとするが、もはや自分の体重を支えるだけの筋力すら残っていない。


「マスター……それ、は、反則です……。私の脳内データベースが……『ハナという存在の前では、いかなる論理も無力である』という恐怖と快感の例外処理で、完全に埋め尽くされていく……ぅ」

「おっ、素直になったな。いい子だ、もっと力を抜け」

「もう……異議申し立ては……しません……。私のすべては、この不条理で過激なマスターの管理下に……ひぅっ、そこ、枝先の神経に直接触れられるのは……脳が溶けます……!」

 完全にとろけきったプータスは、トプンと俺の胸元に全体重を預けるようにもたれかかり、目を閉じた。


 よし、これでだんだん魔導植物の生態と、樹木系特有のメンテナンス手順が把握できた気がするぞ。

 この調子で、他の個体のデータも……と意気込んだその瞬間だった。


「痛っ……!」

 脳天を、鈍器のようなもので強烈に殴り飛ばされた。


「どうして私の目の前で、そんな極限まで卑猥な行為を行えるのですか? 査問委員会が死刑を宣告するまでもなく、今この場で私がハナ兄さんに引導を渡して差し上げます」

 振り返れば、エミリーが鬼神の如き形相で立っていた。その手に握られた魔導書の角が、殺意に満ちた青白い光を放ってピキピキと鳴っている。

「まっ、待てよエミリー! 俺は全然卑猥な気持ちは無くてだな、純粋に植物としての魔力循環と呼吸器のメンテナンスを……」

 必死の弁明を試みるべく、俺の隣で白目を剥いてトロトロに身悶えているプータスを一瞥する。

 ……うん、どう言い訳しようとも、その姿はどこからどう見ても極上の背徳感に満ちた光景でしかなかった。

 しかし、断言しよう。俺は一切エロい気分など抱いていない。まったくだ。男としての反応は微塵も起きていないのだ。

 くそうっ、こんなにも愛らしくて神秘的なロリ美少女が俺の手で身悶えているというのに、脳内を占めているのは「プラタナスの樹皮呼吸の効率化」という純度百パーセントの園芸データだけなのだ。一体どうなっていやがる。


「もう一度この鈍器で殴られる前に、プータスから一ミリたりとも違わず離れてください」

 修羅のような形相のエミリーの圧力には、いかに天才の魔力バフがかかっていようとも逆らえない。

 俺はプータスの服装を整え、まるで取り調べを受ける容疑者のような姿勢で、ぴしゃりと正座した。


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