貸し借り(同僚)
「いらっしゃいませー」
「ありがとーございましたー」
俺が客に声をかけると、みおがそれに続く。
「いらっしゃいますー」
す?
「ありがとうございましてー」
て?
「なんかおかしくね?」
「ばれた?実は数日前からやってたの。」
「お客さんよく気づかないな……」
いや、気づかないか。いちいち店員の一言なんか気にしないな。
「ってかさぁ、○witch」
「○witch?」
「持ってったでしょ。私の○witch」
「いや、俺のな!俺が初任給で買ったやつ!何ちゃっかり自分のものにしてんの?」
「だって、私の家にずっと置いてあったんだからそれもうほぼ私のでしょ?」
「いや、無理だよ?うん。絶対無理」
「ケチ」
「いや、普通だから。そんなことやってると友達いなくなるよ?」
「いや、ソウマにしかやってないから」
「それって、俺とは仲悪くなってもいいや的な事?」
「そう」
「ついでに借りてるもの返さなくて済むしラッキー?」
「そう!」
「いや、出来るか!貸してるもん全部返すまで縁切らないからな!」
「ちぇ」
イタズラっぽい笑みを浮かべながら笑うみお。
「ちぇじゃない」
「ってか、そうやって言うならソウマも私の貸した漫画返してよ!」
「漫画?何を言ってーーあ」
「もしかして忘れてたの?人から借りた物を?人には散々あれだけ言っておいて?」
「いや、これはその……休憩入りまーす!」
そう言って奥に引っ込む。
「逃げた……『全部返してもらうまで縁切らない』って。私だって、返してもらうまで縁切らせてやんないから」
***
「終わった……仕事疲れたー!」
「いや、ほんとに疲れたぁ〜なんで最後あんなにお客さんが来るわけ?」
帰りの支度をしつつ雑談をする。
「帰ったら何すんの?」
「特に決めてなぁい。ゲームする?」
「いいよ。じゃあ3時にネットでいつものとこに集合ね」
「スキン新しいのきたんだよねぇ〜」
「マジ?俺外れたわ」
さて、帰りますか。
おっと、店長だ。
「お疲れ様でーす」「お疲れでーす」
「ああ、お疲れ様。ちょっと二人とも、来てくれる?」
「「ん?」」
「いや、すぐ終わるから。」
バックヤード。店長が椅子に座る。
「君たちさ、いつ返してくれんの?」
「何がですかぁ?」「何がっすか?」
何か借りたっけな……記憶にない。
「私が貸した、26000円。先週までには返すって言ってたよね?」
「「あ」」
忘れてた!そうだ確かーー
***
「ねぇソウマ〜2万円貸して〜」
「おむしろ俺が貸して欲しい」
「なんで?」
「そっちこそなんで?」
「私はぁ、欲しいネイルの期間限定販売があってぇ」
「月末だから金がないのね。」
「そう!って、なんでわかったの?」
「俺も、新作ゲームを買う金が月末だからなくて!」
「あら。じゃあないの?」
「無い。俺もみおに借りようと思ってた。」
「どうしよっかなぁ」「どうしようかな……」
「ん?金貸して欲しいの?貸そうか?」
「「店長!」」
「え?いいんですかぁ?」
「うん。ちゃんと返してくれるならいいよ。」
「10月二週目までには返します!」
「私も!」
***
って、ことがあったんだった……
「さて、今、10月の何週目?」
「三週目です……」
「しかも?」
「末です……」
「でも店長!私にはちゃんと言い分があってぇ!」
「俺も理由が!」
「うんうんうんうんうんうん。とりあえず、正座。」
「「え?」」
「うん。普通に説教。だから正座。」
「店長これパワハラ」
「そうだ!そうだぁ!」
「あ?」
「「なんでもないです」」
「おい!」
星座をしつつ小声でみおに話しかける
「なに!」
「今いくら持ってる?」
「24000円!」
「俺は25000円!」
「二人ともギリギリ足りないじゃん!」
「だから千円貸して!」
「はぁ!?そしたら私の金がもっと足りなくなっちゃうじゃん!」
「どうせ足りないんだからいいでしょ!俺は怒られたくないの!」
「はぁ!?ふざけんなし!私だっておこられたくないし!」
「それはわかってるけど!」
「わかってるなら言うな!」
「正論言ってくんじゃねぇ!」
「言われたくないなら言われるようなこと言うんじゃないよ!」
「俺はセンチメンタルなステンドグラスのようなハートしてんだぞ!」
「耐熱ニッケル合金の間違いだろ!」
「なんだそれ!」
「知らない!なんか硬いやつ!」
「ショート?」
「そう!ショートで見たの!」
「お前ら……『う・る・さ・い』」
「「はい」」
その後、俺たちはみっちり怒られたのであった。
***
「全く…‥散々な目にあった……」
「こっちのセリフ!てか、やばい電車間に合わない!」
「俺は余裕〜」
「じゃね〜」
ふう。まったく。
あいつといると碌なことにならない。
まあ、楽しんでる自分もいるが。
まあ、振り回されてるけど、俺は助けられたしな。
あいつが最初っからあの空気で接してくれたから、俺は救われたんだし。
そう考えると……俺はあいつにでかい借りがあるんだな。
これをいつか返せんのかな。あいつが困ってる姿見たことないけどな。
「まあ、その時が来たら精一杯助けてやるか!」




