同僚(友人)
「うーす」
声をかけて出勤する。
深夜のバイトが始まる。
「うーす」
声が返ってくる。
「ねえ今日って何時まで?」
同僚の声が店の奥から聞こえる
「5時。シフトくらい見とけ」
「口悪い〜!確認のために聞いたんですぅ〜」
荷物を裏に置いて、着替える
「ってかさ〜もうすぐ10月が終わるじゃん?」
「うん。終わるな」
「給料が出るわけじゃん?」
「うん。出るな」
で?先を言えよ
いつもこいつはこうだ。要点を言わない。
「だからさ〜5000円貸して」
「断る」
「そこをなんとか」
「無理」
「頼む」
「ダメ」
「お願い」
「絶対嫌」
「今回だけ!」
「じゃあ前回と前々回の12000円返せ」
「そのうち返すから」
信用ならない。
そう言って去年貸した○witch帰ってきてないし。
「ダメ〜?」
「うん。絶対ダメ。死んでもダメ。」
「冷たいなぁ」
お前は物理的に冷たいけどな!
幽霊だし!
ああ、そういえば、こいつ幽霊だったな。
あれは俺がバイト始めてまもない頃ーー
***
俺はソウマ。
深夜バイト中だ。
最近、給料が良くて残業手当がつくこのコンビニにバイトを始めた。
なんでも、金持ちが作ったところらしくて、立地が悪すぎて客はそこそこ来るのに店員が出勤しずらい。
その金持ちは、「金に糸目はつけないから店員を探せ」って店長に言ったらしい。
だからここは時給2560円。
ただ最近、困っていることがある。
幽霊が、出るのだ。
深夜、バイトに行くと必ず先にレジに立っている。
最初は、同僚かな?と思ったのだが、店長に聞いてもその時間は俺一人だったと。
でも、いる。
しっかり客対応をして、レジ打ちしてる。
あと、こいつ
「ねぇ6000円貸して〜」
「たけのこ派?きのこ派?」
「おにぎり在庫切れた!まだ二時間残ってるのに」
「5500円でいいから貸して」
「死ぬまでにピカソの絵を見てみたいなぁ」
「ゲルニカってどこにあるんだっけ?」
「わかった!4800円!4800円でいいから!」
めっっっっっっっっっっっちゃ話しかけてくる!!
いや、俺も友達とくっちゃべってるのはどちらかと言えば好きよ?
けど、深夜のバイト中に現れる幽霊がやることじゃなくない?
幽霊ってさ、こう
「恨めしや〜」
とか言うもんじゃないの?
なんで金を借りようとしてんだよ!
翌日の朝。
交代で出てきた店長に俺は相談した。
すると店長は「アタシに任しときな!」
って言っていたんだ。
それを信じて深夜コンビニに行ったら店長と幽霊。
「あ、やっときた!こいつ、今日から雇ったから!」
「は?」
は?
?
え?
?
「あ、お願いします〜みおって言います!」
「じゃ、頑張って〜!」
「ちょっと店長!説明してくださいよ!」
「旦那と息子のご飯作らなきゃ行けないんだわ!本人から説明聞いて!」
逃亡。
「……面白い?店長ですね……」
「うん……そうだね……」
「とりあえず、バックヤードで座ってもらって。」
「は〜い」
「みお、さん?」
「みおでいいですぅ〜距離感あるの嫌いなんで」
「ああ、そう。俺はソウマ。よろしく。」
「よろしく〜」
何から聞こうかな。聞きたいことは山ほどあるけど。
「えっと、人間?」
「幽霊。」
「自覚あるんだ」
「みんなありますよ」
「そうなんだ……みんな?」
「幽霊って日本国籍を取るために一回国会に集められるんですけど、そのときに何人かとLINE繋いでまして〜」
「いっぱいいるんだ」
「そうなんですよ〜」
なんか、情報量多すぎて疲れたな。
「えっと、雇用契約結んだの?」
「はい〜結びました〜」
「あっそう。」
頭が痛いってか頭痛が激しく痛いってか。
何言ってんだ俺。
「それで〜ソウマさん〜」
「ん?ソウマでいいけど」
「じゃあ、ソウマ」
「なに?」
「2000円貸して」
「なんで?」
「可愛い人形があって〜買いたいんだけどちょっと高いから〜」
買いたい人形って藁製だったりする?
「可愛いクマちゃんの人形が欲しくて〜」
よかった平和だ。
「金欠なの?」
「いや別に」
「じゃあ貸さない。」
「ケチ」
「普通だろ」
「働き始めたことに対するご祝儀的な感じでくださいよぅ」
「そんなもん俺が欲しいわ」
なんか、幽霊ってか、友達じゃね?学校の。
俺、大学生だからそう思うのかもしれないけど。
「なんでもするって言ったら貸してくれる?」
「あんまりそう言うこと言わない方がいいんじゃないか?まあ、どちらにせよ貸さないけど。」
「ケチ」
「ケチで結構」
「ってか、年上に向かってそう言う態度なの良くないんじゃない?」
「年上?」
「私、大学2年生なんだけど?」
「いや、俺も!誰が年下だ!」
「え?嘘?サバ読んでも大学1年かと」
「初対面で勝手に判断するな!あとサバ読むって言って増やす方ないだろ」
「細かいなぁ」
***
うん。思い返してみても出会いからして最悪だ。
「ねぇ〜聞いてる?」
「聞いてない」
「ちゃんと聞いてよ!だから、2500円貸してって!」
「だから嫌だって言ってる」
「一緒に映画行ってあげるから!」
「俺の徳ないじゃねーか!」
「この可愛いくて可憐でキュートでラブリーな私が一緒なのに?」
「本当に可愛いやつは自分で言わないんだよ!」
「この前も告白されたんだよ?可愛いに決まってるじゃん!」
「じゃあその告白したやつと一緒に行けばいいじゃねーか」
「いや無理。」
「なんで?」
「断ったから。」
「また?」
「だってタイプじゃないし〜そもそもあんま話したことなかったし〜」
「あっそ。」
「冷たい!」
「いいからレジ締めしろ。もう閉めるぞ?」
「そういえばここ、コンビニなのに24時間営業じゃないよね」
「そうだな。15時間。午前10時から翌日の早朝1時まで。」
「だから大学生の私たちでもバイトできるしね。」
「よし、帰るか。」
「は〜い」
「ってか、今日大学?」
「私は一限情報、その後3限別科目ある。ソウマは?」
「俺は一限に現代文やったらフリー。」
「じゃあ暇なんだ?」
「まあ、暇っちゃ暇だけど。」
「じゃあうちに10時に○mazon届くから受け取ってくんない?」
「リビングの机に置いときゃいいの?」
「うん。合鍵渡したから持ってるでしょ?」
「うん。持ってる。」
「じゃあよろしく〜」
「りょーかーい」
「いや、本当にありがたいね。持つべきは彼氏より荷物受け取ってくれる友人だね。」
「人によるだろ」
「まぁね。」




