【只今より本作には非常に強い光景が描写されます。ご覚悟の上閲覧頂くことをお願い申し上げます】
【只今より本作には非常に強い光景が描写されます。ご覚悟の上閲覧頂くことをお願い申し上げます】
また一つ、大きな転機が迫っていた。
メタルナアイーツの降下が始まり5日目の早朝、首都圏隣接の東部某県。
「おい、なんだあれ……」
「え? ウソでしょ……人、女の人よ!!」
陸屋根の上で揺れるベビードールの女性。
その足はふらふらと揺れながらも、確実に空へと向かっている。
その女性の名前は、無い。
気づけば娼婦をしていた。非合法な娼館で、金の概念もなく育った。学校も教科書も知らない。客との会話で考えるに、正しい感情というものも……何度考えても判然としなかった。
女性を多くの人が見る。
皆一様に、これから起こる悲劇を想像した。口々に叫ぶ言葉は違えど、そのどれもが強い静止の言葉だった。
しかし、誰からともなく悲鳴が聞こえた。
数秒後、名前のない娼婦は床に落ちた……が、何事もない様にすくと立ち上がった。
安堵の声、叱責の声、様々な声があたりを埋め尽くす。
一様に皆が彼女を心配し、その無事に胸を撫で下ろした。
それは愛、なのだろう。
見返りなんてない。ただ純粋に、彼女が生きていた事実を喜んだ。喜んでしまった。
愛だった。好意と言ってもいい。
そして、名前のない娼婦は黒木の部下だった。
彼女が6メタルで得た能力は【心操作】である。
好意を向けられる事を条件に、人を操る能力……その一例は、笑顔で挨拶をするなど、非常に微細な好意にまでが該当する。
当然、自殺したと思った彼女の無事に安堵する事は、好意である。
周囲が静まり返る。
彼女を心配した無数の人は、自らの手で命を落とした。
……
「はいはいはーい黒木さんの部下Bだぜ!」
「部下Cだよ」
「俺たち2人合わせてバイヤーブラザーズ!! 昔はチンケなバイヤーだったけど、黒木さんに出会って今では立派な忠臣だぜ」
「そうだね。ここに至るには聞くも涙語るも涙の……」
「いやいや、俺たちの話しは今は良いんだって。今言うべきは名前のない娼婦だよ。ヤバすぎるでしょ」
「あ…‥そうだよね。僕ちょっとチビったもん」
「まぁ……俺は平気だったけどな(震)」
「それで、今回は名前のない娼婦の何を話すの?」
「あー、とりあえずな、名前のない娼婦だけどさ」
「だけどさ?」
「1人で某県制圧しました……」
「は?」
「某県を、制圧しました(震)」
「……マ?」
「……うん」
「その、チート過ぎない?」
「うん……うん? いや? うーん。どうかな……正直、強いよ? 能力はね」
「あ……(察) せ、い、か、く?」
「1億歩譲っても、意思疎通できるの黒木さんしかいねーのよ」
「ああ、黒木さんマジパネェ……」
「その黒木さんだってギリギリだよ? あの能力が黒木さんなら、誰も殺さず全員配下だろ」
「あー、うん。凄いけど、凄いけども……あの黒木さんでも100は扱えないのね」
「そうだな。あのマダオとかいうのから黒木さんにメタルナアイーツ貰ったじゃん? それで娼館いくとか言った時は流石に意味不明だったけどな」
「あ、それはそう。今思うとアレはヤバいやつの方がヤバい能力になるかの実験的な感じ?」
「だろうな。まぁ黒木さんの事だからある程度の手綱は取れる自信あったし、なんなら今回のも実証結果の1回程度にしか考えてないんじゃないかな」
「く、黒木さんマジパネェ……(2回目)」
「ま、そんなわけで今某県は俺たちしかいないと……暇だな」
「暇だね……」
「まぁ良い休暇だと思うか。多分、また忙しくなるだろ?」
「あーうん。黒木さん魔王宣言しちゃったもんね。あれは絶対政府オコでしょ」
「まぁなぁ……ぶっちゃけ心配だな。名前のない娼婦だって、微妙な好意も向けない気配りしたらただの人間だしな」
「え、僕たち……ヤバない?」
「ヤバいよ? でもさ……黒木さん裏切って逃げるとかなくない?」
「あ、それはない! 文字通り死んでもついてく所存だよ!!」
「だよな? ま、そういう事だから考えてもムダムダ! とにかく俺たちは今日も今日とで黒木さんの忠臣……」
「バイヤーブラザーズだぜっ!!」




