メタルナ・アイーツが降ってきた日
「さて、とりあえず初日は首都圏30……以外に20くらいでいいか? 世界中同じくらいいっとくか」
子供部屋に響く無邪気な独り言。
「さぁ、良い子の皆さんお待たせしました……マダオサンタさんですよー」
前言撤回。子供部屋に響いたのは邪気しかない独り言であった。
……
メタルナアイーツ降下初日。
世界同時多発的に降り注いだ未知の物体は瞬く間に世界の話題を攫った。
それは公園の草むらに、駐輪場に放置された自転車の籠の中……時には自販機の取り出し口にも珍入していた。謎に満ちたメタリックな生物『メタルナ・アイーツ』は降下当初から多くの憶測が飛び交う。
『某国の新兵器か』などとの警戒から『宇宙人襲来』などさまざま語られ、それは一見馬鹿馬鹿しい記事の多くまでがSNSで特大の拡散を受け、荒唐無稽な考えほど真実に近いとされた。
それは、人類が関与したとは思えない一点『メタルナ・アイーツ』が雲一つない快晴の空から広範囲同時に降る光景が動画として出回った為だった。
そして、その効能が明らかになるにつれ、メタルナ・アイーツは多くの人間を魑魅魍魎の争奪戦へと誘っていくのである。
……
メタルナ・アイーツが降り注いだ国々の反応は、お国柄により様々であった。
喧騒鳴り響く首都圏の歓楽街。
報道カメラを向けられ、インタビュアーに町の人が答える。
「え? あのニュースですか? いや普通に怖いんでプリン買ったら帰ります」
「なんかウチのじいちゃんが踏んだら潰れて消えたとか言ってて……あと腰痛が治ったとか? え? 効能? いや……あれは腰痛が治ったんじゃなくて、認知症が始まったんだよ」
彼らはまだ知らない。
メタルナアイーツの価値に気付かない。メタルナアイーツの効能に気付かない。あの時気づいていれば……人生とは得てしてそういうものである。
そして、こういうものでもある。
非常に鋭い勘を持つ者、自分の命を顧みないもの。そして、偶然にも降下したメタルナアイーツが股間に直撃した少年。それらはたった一つのメタルナアイーツを潰しただけでも、その効果を体感で理解する。これはヤバいと。
「……え? これチャンスじゃね?」
そう、ヤバいチャンスである。個人にとっては。
気づいた少数の間で発生したミーム。
メタルナアイーツを潰した者をメタラー、潰した数を何メタルと表現する謎ルールの発生。
この話題はSNSのトレンド2位を大きく引き離すが、依然として真っ当な人間は警戒した。なにせ不可解な降り方をした上に、潰すだけで身体能力が向上するトンデモドーピングアイテムである。
以下SNSに投稿された『今話題のメタルなヤツ潰したら足が超速くなった件』のコメントより一部抜粋。
『いや、フェイクニュースでしょ』
『マジだとして、副作用とかヤバそうじゃん?』
『ちょっと俺、探して食ってみるわ』
『いや、食うなよww でも、捕まえとくくらいありか?』
『やめなよ……急に毒ガスとか出るかもじゃん』
その日の夕方、政府からは危険物の可能性があるとの報道。
これにて事態は少なからず収束を見せる……筈もない。
ゲーム的に言えば倒しただけで、レベルが上がるメタルナアイーツの争奪への不参加の続出。
それは既に有用性に気づいたメタラーにとっては、むしろご褒美である。
メタルナアイーツ降下の初日。
裏社会の人間など複数人が1メタルから2メタルのメタルナアイーツを獲得していた。そして、その中で最も頭角を示した者……黒木影人『クロキカゲヒト』は部下との人海戦術により8メタルを回収、所持していた。




