平和になったよ
メタルナ・アイーツが降らなくなって、1週間。
世界は平和になったよ。
国家の多くは、危篤状態。
強いメタラーがそれぞれの土地を管理しているだけ。その境界を越えることも、奪い合うことも、ほとんどない。だって、奪うものがもうないから。
……
山間部、巨人が集落を守る。
全てのメタラーが進攻を諦めた楽園。
「オデ、みんな守る。飯くれ」
食費の確保は大変だ。
それでもここは安全だ。ただ……。
「ばあちゃん、早く孫見せろって言ってたな……」
その言葉に集落の女性が固まる。
「なぁ、子どもはどうやって、作るだ?」
ま、まずは山より大きい女性を探すべきだろう。
巨人の楽園は、女性には息苦しいかもしれない。
他の集落もどっこいどっこい。
メタラーの支配はあるが、だいたい既存の人間のルールで生きている。人は働くし、通貨がある。病める時もあれば健やかなる時もある。
……そんな世界で、旅をする少年がいた。
10と数歳。小柄だ。ロングシャツとジーパンはくたびれている。補修の追いつかないリュックサック。旅というよりは遭難中にさえ見えるほどに、危うい。
「あ……やっと見つけた!!」
声の主が、少年の元に駆け寄る。
「やぁ、君が森川天星君? 噂の……『握手を求める人助けの人』だね?」
「え? はい。おじ……お兄さんは、誰ですか?」
目元に大きめのクマを持つ少年は、穏やかにそう言う。
「俺は世道虚。君に興味を持った普通の、おじさんだよ」
そう言って、世道虚はイチゴミルクを、ズズズと飲み干した。




