最強の契約軍人
同日、連邦制の大国。
沿岸国家と同様にメタルナアイーツの降り続ける混乱が生じていた。
一般人が銃を所持している事が混乱を大きくしたが、州単位の決定権が広い事での事態対応は早く……つまりは、どっこいどっこいのヤバい状況だった。
大きく異なる点として、政府がメタラーを雇用する動きが積極的である。
『Randy Jr Hunt 』親しい者からはランディと呼ばれている契約軍人は、その中でも突出したメタラーだった。
メタラーにとってこの国は過酷だ。
広大な土地を持つ某大国では、個人が獲得できるメタルを分散してしまう。需要はあれど熱狂はあの国ほどではなく、メタルナアイーツの多くは、軍が保有するところとなった。
とはいえ、例外は存在する。
Randy Jr Huntは非公式実験の検体だった。
初めは兵器より弱いが局所的に有用な存在。
報酬にメタルナアイーツを要求されるが、それによる彼の強化は自国にとっても良いものだ。他の能力者と牽制させる事でコントロールしていけば、いずれは我が国の核に次ぐ武力となるだろう……。
そう思っていた時期が、彼らにもありました。
気づいた時にはもう遅い。
ランディの身体能力は横から叩く事で銃弾を弾くほどに肥大化。それは、彼が秘匿していた能力『I am the strongest』による、彼のあらゆる影響を倍にする効果が原因だった。
メタルナアイーツを潰す度に他のメタラーの2倍、身体能力を強化する。
攻撃に際してはその行動にも能力が上乗せされさらに倍。もっとも、受けるダメージも倍ではあるのだが。
ともかく、それは彼に報酬を渡す度に大きな格差となり……しかして、依頼を渋ればその大袈裟な身体能力で駄々を捏ねられる始末。某大国最強の契約軍人にして最強の目に上のたんこぶ。それがランディである。
「やぁブラウン、ちょっと俺さ……あの国に行ってきてもいいかい?」
先鋭基地局、という名のランディ接待場。
ランディの言葉は周囲を凍て付かせた。ブラウンは早くも額に汗を滲ませながら天を仰ぐ。出たよ。またこれだ。勘弁してくれ。女とベッドに入ったら秒で賢者になる癖に。
「いやぁランディ、分かった。一度落ち着こう。コーヒーはどうだい?」
「いやだよ。知ってるだろ? 俺は苦味も倍に感じるんだ」
「オーケー、バナナオレだ。これでいいか?」
ブラウンが目をやると、美しく着飾ったモデル級の美女がバナナだらけの冷凍庫からそれを掴み、ミキサーにかける。頬にキスされ、受け取ったバナナオレを一気に飲み干したランディが言う。
「いいね。甘さも2倍で最高! じゃあ俺、行ってくるわ!」
言うが早いか……だ。
「え? 待て待て、国際! 国際問題になるから!! ジュニア!!」
ブラウンの静止は、ランディには届かない。心にはもちろん、物理的にもだ。
「おい!! 誰かあの分からずやの聞かん坊を止めろ!!」
怒鳴るブラウンと溜息を吐くスタッフ。
「誰が止めれるんですか? 暴走した彼を? コミックのヒーローでも連れてきてください」
激しく机を叩く音の後、拳を摩るブラウンが言った。
「……アイツが勝手に突っ込む前に、個人的な来訪扱いとしてあの国に通達しろ。あのイキリのバカ息子め。いっそ、もう帰ってこないでくれ……」




