6日目の首都圏と気になる噂
同日(6日目)の首都圏。
一般人の多くはお利口に自粛する。とはいえ、流石に危険を感じている者は増えていたのだが……今更である。
飛び込める筈がない。
日本刀を持ったアクロバティックヤクザが斬り合う現場に、目の血走った警官が拳銃を向ける真っ只中に、だ。
一般人に多いといえば、仕事を辞めてでも田舎に引っ越そうとする、行動派のお利口さんが増えた。……そんな感じ。
以下、真偽不明の噂。
下水から突然水柱が立ち上った。
それは人の形になって走り去った。
動物園のゴリラが『マジそれな』と喋った動画がSNSで拡散された。生成AIではないかという声が多い。
東部某県を制圧した黒木と名乗る男が、自身を魔王と名乗る動画が拡散されたが、発信されたアカウントは凍結。陰謀論説が濃厚。
東部某県に戦車含む重武装の出軍があったが、国民に説明はない。先のSNSから飛躍した創作と考えられている。
芸能人のつけているブラジャーが突然消える怪事件が発生。何故か水着や下着姿の時には発生せず、今のところ放送事故は0件
海人県で悪魔の様な姿の女が暴れている。
そして『握手を求める人助けの人』の噂。
「……あー、なんだかなぁ」
世道虚は、世間に散らばる噂の中でも一段特別にそれを気に掛けていた。
「このご時世に人助け? ははっ、バカバカしい……んん……」
「いや、あまりにも不気味。これはワンチャン人助けで得をする異常能力?」
とあるレンタル倉庫の中……という名称が妥当な世道の別荘。
整理された本棚、ホワイトボードに貼られた数々の資料。冷蔵庫の中に賞味期限順でズラリと並んだいちごミルク。そんな手狭な空間をウロウロと歩いては、何度となく、その記事に目をやった。
「いやーそんなバカな。なんだその周りくどい能力……コイツを現地調査するぐらいなら下水男の方が妥当だろ」
「……んん」
世道の目が下水男の記事と人助けの人の記事を交互に見る。
人助けの人、下水男、人助け、人助け……げ、すい男。世道はブンと頭を振った。
「下水男が異常能力だと仮定して、有用性はめっちゃデカいよな」
「水と同化できるなら侵入系、戦闘系のどちらでも有能。危険人物だとしたら尚のこと情報を得ておくべきだ……」
そう言って、冷蔵庫に頭をコツンと、打ちつけた。
「対して人助け!? ハハっ、異常能力だとしてもくだらない! ……どう考えても気にかけるネタじゃないよな」
………………逡巡。
「いや、でもお人よしならコントロールは楽か? だとすれば接触して損になる確率はかなり低く……いやいや、いやいやいや……」
2本目のいちごミルクにストローを刺し、口に咥える。
「でも、なんか。なぁ……」
世道はストローを噛み潰した。
……




