鉄の魔王とイチゴミルク
「やぁクーちゃん。派手にやったねぇ」
飲み終えたイチゴミルクのパックを潰した男は、軽薄な笑みを浮かべて言う。
「……反省の多い日になった。その一つは世道虚、お前の過大評価だ」
黒木影人は、無感情に、そう返したが、責任を問われた世道虚は眉ひとつ動かさない。
「辛辣ぅ……絶好調じゃないの。俺から言わせれば、これの何が不満なのって感じだけどね」
土煙の舞う空と瓦礫の中で黒木と世道が見つめ合う。
黒木は無表情に、世道は白々しく陽気に。しかしお互い、務めて本心を隠したままそこに対峙している。
「それで報酬の10メタルなんだけど?」
「お前の働きは3メタルだ。戦闘ヘリや戦車を出されたのは、お前の偽の情報が甘かったからだ」
「えー……8メタルはあってもいいでしょ? 異常事態対策本部への侵入の経費考えてよ」
「お前の事だ、政府にも暴利をふっかけているだろう……5メタルだ」
異様な交渉。
お互いに初めから、そうなると分かっていた様に、日常会話の様に。
「……はぁ、黒木ちゃんは相変わらず手強いね。いいよ……これ以上の交渉は時間が無駄だね」
世道虚がわざとらしくため息をつき、手をひらひらと振ってみせる。
その報酬が妥当。本当に諦めたのか、それとも、初めからそう思っていたのか。
「決まりだな。今回のお前の報酬は7メタルだ」
「え……?」
初めて、世道の言葉と表情が重なる。
「2メタルは今後のお前への期待分だ」
あいも変わらず無表情に黒木影人が言う。
「はは、敵わないねぇ……それじゃあ今後ともご贔屓に」
短く、世間話もなく……それだけを言うと世道虚はその場を去った。
駆けつけ、一部始終を見た黒木の部下たちには、この2人がどこまでも自分とは違う生き物の様に見えた。
「世道虚……あいつ、やっぱ化け物ですね。完全に手を組むべきでは?」
「無駄だ……あいつは、誰にも飼えない悪人だ」
だが、悪人同士は、お互いに裏切りを予防すれば誠実な交渉が成り立つ。黒木はそう言って土煙が晴れていく空を眺めた。
「出過ぎた言葉でした」
部下は心酔からではなく、本心の部位で理解して、そう応えた。
「いい……それよりも半日休息をとる。明日には東京に戻り、メタルナアイーツの争奪戦を続けるぞ」




