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18話 事件の真相と発想


 寺の駐車場――

 

 説明会は車の中でとなったわけだが、レオンは仕方なく運転席へ、マスターと朱鬼は隣り合わせに、奥にフィギュアとなったリーダーでミライが座る。

 残された座席に俺が座る、つもりだったが、この家族ごっこみたいな仲間のひとりにはなりたくないので、気分転換と言って助手席に座った。


 それにしても、この任務はどこまでやれば正解なんだろう。「伝言」のためと無い知恵を絞ってきたが、正直、人の心を探るのは面倒で億劫だ。

 結局のところ、今回の依頼は地獄界からなんだし、「伝言」の捜査は朱鬼や軍警に任せて、俺は悪魂を狩ればいいだけなのでは?

 どうせこの後、佐伯とミライの馴れ初めから始まるんだろうから――


 レオンが車を走らせると、朱鬼の説明会が始まった。案の定、リーダーのミライが思い出話を語る。

 俺は外の景色を眺めながら、風の便り程度に聞いていた。

 その話の中で俺が興味を持ったのは、ミライは死の間際、自分の魂と引き換えに「匡孝(まさたか)(かたき)を討ちたい」と言ったことだ。魂を代償にするということは、輪廻の放棄を意味する。だとすると、朱鬼が融合させたのではなく、魂となったミライが自らフィギュアの中に留まってしまったのではないか。

 

 ではその傀儡が憑依したフィギュアはどこからやってきたのか。考えられるのは、佐伯がミライの家に置いた、もしくは朱鬼が探し当てて持ち込んだ。

 これは確かめる必要がある。


 俺は座席越しに話し掛ける――


「ちょっといいか、なあ、朱鬼が融合させたというのは本当の話か?」


 マスターが応える――


「おお、リュカも嘘が見破れるようになったのか、これは(あなど)れないなあ、クハハハ!」

「ハァ、参りました……悪霊となるよりはマシかと思い融合を許してしまいました。も、もちろん、閻魔様にご報告し了承を得ております、はい……」


 なるほど、事件解決には手段を選ばずか。何も誤魔化す必要はないと思うが、もしかして俺を試したな――それはさておき。


「ではもうひとつ、傀儡が憑依したフィギュアがどうしてミライの家にあったんだ?」

「ああはい、僕が持っていました」


 随分と簡単に言ってくれる。


「そのフィギュアをどこで見つけた?」


 朱鬼は俺の問いに謎かけで応える。


「えっと、寺と死人に口なしですかね」

「寺……あっ、両親の墓か?!」

「さすがリュカ様、当たりです! 今日はあちこちと調査で大忙しでした……ハァ……」


 地獄界も人使いが荒いらしい、きっとマスターもこの茶番に一役買っている、と思う。


 やっと思い出話とミライのフィギュア化の話は終わり、ようやく朱鬼が事件の真相へと導く――


「では、軍警のレオンさんはもちろんですが、リュカ様も佐伯の会社設立についてはご存知だと思います。ここからは敵と定めるイントルーダーを組織と呼び、諸行についてお話しいたしましょう」

 

 朱鬼は軍警の情報まで把握しているのか、だとすると、既に大体の目処(めど)はついている。

 なら俺は聞き役に徹しよう。

 

「佐伯は脅迫されて会社を設立せざるを得なかったんです。発端はネットのブログにあります」


 確か奈來の報告だと、会社を設立するためにネットオークションに参加したと言っていたが、情報が錯綜してるのか?


 レオンも気づいたのか、バックミラー越しに訊ねる。


「あのう、オレの知る限りでは確か、佐伯が偽名を使ってネットオークションに参加し、落札金で会社を設立するためだったかと」

「それはすべて組織の指示です。この地に新たな会社を設立し、組織の資金にするためです。では話を続けます。組織はネットを頼りに傀儡を探していた際、佐伯のブログに人形供養の話が載っていた、そして佐伯が人形を盗んだことを嗅ぎつけ、それをネタに近づき脅迫したのです」


 おそらく、この時点で人形に傀儡が憑依しているとは佐伯も知らなかったのではないか、だが次第に傀儡の正体を知り両親の墓に隠した。

 

 しかしおかしな話だ、会社設立前に殺してしまうなんて、傀儡の在処(ありか)も聞き出せていないのにだ。そんな無利益なことするだろうか。

 

 佐伯を殺害したのはイントルーダーなのは明白だ。だがもし仮に、あの駐輪場の爆破は脅かす程度に仕掛けたはずが、思った以上に爆破が激しく、佐伯は瀕死になり、部下が慌てて片割れはどこかと訊いた。

 馬鹿げた話かもしれないが、あり得なくはない。それに、あの殺された幹部が「部下の失態」と言ったことがそう思わせる根拠のひとつでもある。あくまで俺の推測だが――

 

 しかし、俺としては未だに納得がいかないことがある。あの現状を見たとき、確かに黒帽子の男はほくそ笑んでいた、でもラパは「片割れはどこだ」と主張するし……ここまで奇抜なことばかり起こってるんだ、発想の転換をしたほうがいいのかも――


 奇抜な発想、もし、爆破が予定通りだとして、黒帽子の男が組織とは別の何者かだとしたら、幹部の「部下の失態」も筋は通る。

 なら第三者が何らかの目的で佐伯を殺した。イントルーダーは傀儡を探している、第三者は傀儡を隠したい、(あざけ)て「片割れはどこだ」と聞くのは、裏を返せば"お前は誰にも喋らないよな"と、念を押しているようにも取れる。

 我ながら奇抜な発想だが、あながち間違いではないと思う。


 では奇抜ついでに、第三者候補は倉庫街のボス、女盗賊団の仲間、イントルーダーの裏切り者、そして謎に包まれた鈴木岩太郎でロック・ハロルド。

 朱鬼はイントルーダーのボスは同一人物と言っていたが、果たしてそれも本当か怪しいものだ。


 おっと、そういえば、大河が倉庫を探れと言わんばかりだった。爆破に関係する材料でも置いてあるとか、なら客に組織がいると考えて良さそうだ。


 そこへ背後からマスターが指示を出す。


「おいリュカ、今宵は仕事に出掛けるぞ」


 ええ〜マジですか……。

 

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