16話 「伝言」の意味
俺は朱鬼を椅子に座らせて、俺は地べたに座り、目線を同じくして話を始めた。
「ごめんな、勝手に話を終わらせようとして……何か伝えたいことがあるなら最後までちゃんと聞く、だから教えてくれないか?」
「リュカ様……それであれば、『伝言』をお聞かせ願うことは可能でしょうか?」
「伝言」か――
「わかった、その代わり小出しにせず、まとめて話してくれ。『伝言』は"小さな嘘と人形"だ」
「ありがとうございます――では要点をまとめてお話いたします。『伝言』の人形とは佐伯の作ったフィギュアのことだと思います、そして片割れの傀儡はそのフィギュアに憑依している、と僕は考えます」
「フィギュアにか、でも傀儡は呪霊なんだろ? 呪いの人形とかになるんじゃないのか?」
「傀儡は二体、一体は呪符、片割れの一体は護符です。なので危険はないかと」
そうか、「片割れ」とは二体あるうちのひとつという意味だったのか、俺はてっきり体の一部だとばかり思っていた。
「呪符に護符か……」
「確実な情報です。なぜならその傀儡はこの寺に供養されていたからです。しかしです、その傀儡を佐伯が持ち帰った、両親の墓参りと偽って」
「あっ、それが『伝言』の小さな嘘か!」
「おそらくは。佐伯は丹精込めて作ったフィギュアをこの寺に供養してもらっていたらしいです。その時に傀儡を見て共鳴するものがあったのではないでしょうか、傀儡は使い手を選ぶと言いますから」
なるほど、佐伯は傀儡に選ばれた人間ということか、でもそれが死に繋がってしまった――
それはそうと、朱鬼の口からミライの話が出でこないのはなぜだ、言いづらいことなのだろうか、なら俺から聞いたほうが良さそうだ。
「なあ朱鬼、さっきミライは来ないと言っていたが、どうして来ないとわかるんだ?」
朱鬼は俯き加減にポツリと告げた。
「死にました……」
「…………!」
俺は言葉を失った、なぜかと問うのは忍びなく、切ないと思うよりも、憤りを感じた。
「彼女の死は寿命です。不治の病に侵され、そう長くはなかったのです。心残りはがあるとすれば、自分より愛する者が先に逝ったことでしょうか……」
「そう……だな」
「リュカ様、凹んでいる場合ではございません、まだ問題は山積みなのです!」
なんかラパに言われているようでちょっとムカつく。まあ気持ちの切り替えには丁度いいが。
そのとき、待合室の外から複数の足音が聞こえた。屈みながら窓を覗くと、黒帽子と黒いスーツの男達が待合室の前を牛耳っている。
「朱鬼、物影に隠れてじっとしていろ」
俺は言って待合室を出た。外には案の定、銃を構えて俺を出迎える。
そこへ細身の男がスッと前に出た。ボスか、あるいは幹部か、タバコを咥えて偉そうに立つ。
「なんだ、帰ったと思ったんだがな」
「フッ、いえね、花束を買い忘れてしまって、菊の花にしようか、薔薇にしようか、選んでいたらつい遅くなってしまったんですよ、結局は買わずじまいでしたが。ああ申し遅れました、私はイントルーダーの幹部のひとり、ジルドと申します」
よく喋る男だ。幹部のひとりということは他にも幹部候補がいる、ならこいつはハイエナのように嗅ぎ回る下級の兵隊ってところか。
弱いものほどよく吠えるとよく言ったものだ。
「その幹部さんが何の用だ」
「ある片割れといいますか、この寺といいますか、あわよくば喋るぬいぐるみといいますか、ないものねだりに来たのですが――おやおや? 今日はぬいぐるみをお持ちでない、では小さき者にお尋ねしましょう。おっと、建物が邪魔ですね」
そう言って幹部のジルドは部下に指示を出す。すると、部下が大砲のような物を抱え前に出た。そして待合室に狙いを定める。
「おい! 何をする気だ!」
「ハァ、貴方にお応えする義務はないのですが、いちおう吹き飛ぶのでご注意ください」
幹部の合図と共に、部下は引き金を引く――
俺は瞬時に男を斬り捨てるが、時すでに遅く、弾は爆音と共に待合室を吹き飛ばした。
俺はギリギリと奥歯を噛み、ただ立ち尽くすしかなかった。
そこへ――
「ゎぁぁぁああああ!」
という叫び声と小さい物体が空から降ってきた。あれは――
「朱鬼参上仕る。リュカ様は僕がお守り致す!」
と、果敢に名乗る朱鬼は、手に大きな金棒を持ち、俺の前に凛と立つ。
「朱鬼! 無事だったか!」
「もちろんです、あれしき屁でもございません! 今回は着地に成功してなによりです!」
そっち? そういえば飛べたんだっけ……と悠長に構えてる場合じゃない。
奴らが一斉に銃を構える、俺は朱鬼の前に出る。
「朱鬼、果敢なのはわかったから、後は任せろ」
「拳銃の弾ごときが僕に当たるとでもお思いか、リュカ様こそ御用心召され」
えっと、なんかサムライ言葉になってるけど……どうした?
「――いざ、参る!」
言って朱鬼は俺の手をすり抜け、風よりも疾く走り、金棒を紙のように軽々と振り回し、雨のごとく降り注ぐ銃弾を難なく弾き飛ばして敵を討つ。
俺は唖然としながらも、ここで役立たずになるわけにはいかないと参戦する。
《亡霊》
俺はソードを抜き、男達の銃を持つ手を斬り落とすと、朱鬼が金棒で頭を潰す。初めての連携プレイにしてはなかなかどうして、一蓮托生である。
しかし惨めな生き残りがひとり――
「ほう、部下を盾にするとは卑怯な奴だ。では拷問といこうか、なあ、ジルドさん」
「私はただ部下の失態を……」
と言った瞬間、ジルドの頭に一本の矢が刺さる。これは――




