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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
四章 セラフィナと音楽

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9.セラフィナ、七歳

 学園の夏休みの間にセリーヌ嬢のお誕生日のお茶会が開かれた。

 わたくしとラファエルお兄様は招かれていて一緒に出席した。

 ロズベルク侯爵家の大広間にはグランドピアノが置いてあって、セリーヌ嬢はレティシア嬢と一緒に連弾を披露してくれた。

 セリーヌ嬢は七歳と思えないくらいピアノが上手で、レティシア嬢もピアノがとても上手で、音楽一家に生まれるとこういう風に育つのかと感心してしまった。

 演奏の後でわたくしはセリーヌ嬢に声をかけた。


「連弾、とても素晴らしかったです。お二人の上手だったこと」

「ありがとうございます、セラフィナ殿下。まだまだお姉様には敵いませんが、わたくしも精進したいと思っています」


 今でもとても上手なのに、セリーヌ嬢はまだまだ精進したいと思っている。ピアノは才能だけでなく努力でなりたっているのだと、わたくしもピアノの練習に力を入れようと思った。


 セリーヌ嬢のお誕生日のお茶会が終わって、夏休みも終わりに近づくと、わたくしのお誕生日のお茶会が開かれる。

 わたくしは新学期が始まるぎりぎり前に生まれたようなので、セリーヌ嬢とリヴィア嬢と同じ学年になれるが、学年の中では生まれが遅い方になる。

 小さいころは数か月の差はとても大きいものだが、学園に入学する十二歳になっていればそれほど気にはならないだろう。


 わたくしのお誕生日のお茶会は、わたくしも準備に加わった。

 招待客はお父様とお母様が厳選してくださるが、わたくしは招待状にサインをしたのだった。

 本来ならばお茶会や夜会などの招待状は自分で手書きしなければいけない。わたくしはまだ七歳になるということもあって、サインだけ手書きして、他の部分は他の者に代筆してもらっていた。

 サインだけだとしても、招待する貴族の数はとても多く、大変だったが、そのうちに全部の招待状を手書きできるようにならなければいけないのだと思うと、サインはいい練習になった。

 お父様とお母様にお願いして、アルベルト様とリヴィア嬢とセリーヌ嬢の招待状だけはわたくしが自分で書かせてもらった。文面は決まっているのだが、間違えないように書くのが難しい。便箋を数枚無駄にしてしまったが、わたくしは何とか三人の招待状を書くことができた。


 お茶会の前にはアルベルト様が打ち合わせに来られていた。

 アルベルト様は胸に飾る造花のコサージュを持ってきていた。


「婚約者同士、衣装を合わせるのもいいけれど、今回は同じコサージュをつけるのはどうかな?」

「このコサージュ、わたくしがもらっていいのですか?」

「誕生日プレゼントのつもりで作らせたんだ。よかったらもらってほしい」


 金色の薔薇のコサージュはわたくしの手の中できらきらと輝いていた。

 誕生日プレゼントにもらったコサージュをアルベルト様とお揃いでつけられる。それは嬉しいことだった。


「ありがとうございます。ぜひお揃いにしましょう」

「セラフィナが気に入ってくれてよかった」


 微笑むアルベルト様に、わたくしは深く頭を下げてお礼を言った。


 お茶会の当日、わたくしは紅茶色のドレスに胸にコサージュをつけた。アルベルト様のくれた金色の薔薇のコサージュだ。金色の薔薇はアルベルト様の髪の色を思わせてとても美しい。

 アルベルト様は早めに会場に来てくれて、わたくしをエスコートしてくれていた。

 お誕生日のお茶会でもアルベルト様が横にいてくださると心強い。


「セラフィナ殿下お誕生日おめでとうございます。アルベルト様とお揃いのコサージュをつけているんですね」

「とても美しい金色の薔薇。お似合いですよ」


 セリーヌ嬢とリヴィア嬢がわたくしに挨拶に来てくれて、コサージュのことを褒めてくれた。


「ありがとうございます、セリーヌ嬢、リヴィア嬢。今日は楽しんでいってください」


 わたくしもセリーヌ嬢とリヴィア嬢にお礼を言って、挨拶もする。


 お茶会の席はわたくしとアルベルト様が隣で、正面がラファエルお兄様とアンリエットお義姉様、同じテーブルにリヴィア嬢とセリーヌ嬢もいて、知り合いだけのテーブルでわたくしは寛いで過ごせた。

 わたくしの誕生日を祝って、お父様が挨拶をする。


「本日はセラフィナの誕生日のお茶会に来てくれて感謝する。セラフィナも今年で七歳になる。セラフィナは生まれたときに呼吸をしていなかった。産声が聞こえず、わたしはかわいい娘が死産だったかもしれないと絶望した。だが、セラフィナはすぐに息を吹き返し、産声を上げた。あのときの感動は今も忘れていない。セラフィナが七歳まで健康に成長できたことを今日は存分に祝いたいと思っている」


 お父様の言葉に、わたくしはラファエルお兄様から聞いた話を思い出す。

 わたくしは生まれたときに呼吸をしていなかった。死産かと思われたが、その後医者が手を尽くしてくれて、わたくしは息を吹き返した。

 お父様にしてみれば生まれて来た娘が死んでいたかもしれないというのはとてもショックだっただろう。そんな娘が七歳まで無事に成長したということはお父様にとっては嬉しいことなのだ。

 お父様に愛されていることを実感して、わたくしはお父様の挨拶に拍手を送っていた。


 お茶会の席ではアンリエットお義姉様にアルベルト様が聞いていた。


「今回の歌劇団の演目はどうなのですか?」

「今回も古典ですが、素晴らしいものですよ」

「それなら、チケットを取ってみようかな……」

「あの歌劇団はとても人気なので、なかなかチケットが取れないのです。アルベルト様がお望みなら、わたくしが手配いたしますが? アルマンドール公爵家はあの歌劇団の援助をしていて、チケットを融通してもらえるのです」

「お願いできますか?」


 アルベルト様はわたくしと二人で歌劇団を見に行くという約束を忘れていないようだった。


「チケットが手配出来たら連絡いたしますね」

「ありがとうございます」


 アルベルト様と歌劇団を見に行けるかもしれないという期待で、わたくしはわくわくしていた。


「お姉様、わたくしも歌劇団を見に行きたいです」

「アンリエット嬢、わたくしも行きたいです」


 リヴィア嬢とセリーヌ嬢がアンリエットお義姉様に言っている。

 アンリエットお義姉様はちらりとアルベルト様の方を見た。


「リヴィア、セリーヌ嬢、アルベルト様は婚約者であるセラフィナ殿下とお二人で行きたいのだと思います。リヴィアとセリーヌ嬢もチケットを手配しても構いませんが、別の日に致しましょう」

「それなら、お姉様とセリーヌ嬢とレティシア嬢と一緒に行きたいです」

「リヴィア嬢とお姉様とご一緒できるのは嬉しいです」


 アンリエットお義姉様たちは、アンリエットお義姉様とリヴィア嬢とレティシア嬢とセリーヌ嬢で観劇に行くようだった。


 お茶会が終わると、わたくしはアルベルト様と一緒にお客様を見送って、最後はアルベルト様が部屋までエスコートしてくれた。

 アルベルト様は背がとても高いけれど、歩幅もわたくしに合わせてくれて、手を引かれても高い位置ではなかったので、わたくしは心地よくエスコートされることができた。

 せっかくなので子ども部屋に行って、ミカにわたくしとアルベルト様の姿を見せたかった。

 子ども部屋に行くと、遊んでいたミカがわたくしとアルベルト様の方に駆けてくる。


「おねえさま、おたんじょうびおめでとうございます。アルベルトおにいさま、ようこそいらっしゃいました」

「ありがとうございます、ミカ」

「セラフィナを送ってきたよ」

「ミカにアルベルトお兄様とお揃いのコサージュをつけているのを見てほしかったのです」


 わたくしが言えば、ミカはわたくしとアルベルト様がお揃いのコサージュをつけていることに気付いたようだった。


「きんいろのばらですね! とてもすてきです!」

「アルベルトお兄様からお誕生日にいただきました」

「わたしも、おそろいのコサージュをつけるあいてができるのでしょうか」


 まだ四歳のミカが婚約する日は想像できない。

 わたくしは国の思惑があって早くに婚約したが、ミカはそんなことはないだろう。

 ミカにはゆっくりと相手を選ぶ時間があってほしいと願っていた。

読んでいただきありがとうございました。

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