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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
四章 セラフィナと音楽

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8.ルクレール公爵家に宿泊する

 学園の夏休み期間中に、ルクレール公爵家から申し入れがあった。

 わたくしとラファエルお兄様に、ルクレール公爵家のタウンハウスに泊まりに来ないかということだった。

 ルカ様の名前を聞いてわたくしはミカのことを考えた。

 わたくしとラファエルお兄様がお泊りに行って、ミカだけ残されたらミカは拗ねるだろうし、寂しがるだろう。それに、男の子の友達が欲しい年頃であるミカはルカ様と遊ぶのは楽しいのではないだろうか。


「お父様、お母様、ミカはルカ様と一緒に遊べるのではないでしょうか? 泊まりに行くのならばミカも一緒ではいけませんか?」


 夕食の席でわたくしが発言すると、ミカが元気に手を上げる。


「わたし、いいこにできます! ルカさまとあそびたいです」


 ダニエル殿と遊んで、同年代の男の子と遊ぶことの楽しさを知ったミカ。ルカ様はミカよりも二つ年上だが、年齢も近いし、女の子であるわたくしよりも楽しく遊べるのではないだろうか。


「ミカエルとルカは従兄弟同士だね。仲良くしておくのもいいかもしれない」

「ミカエル、わたくしとヘリオドール様は行きませんが、ラファエルとセラフィナと三人でも平気ですか?」

「わたし、おにいさまとおねえさまがいっしょならへいきです」


 答えたミカに、お父様とお母様の決断は早かった。

 翌日にはルクレール公爵家に返事を書いてくれて、翌々日からわたくしとラファエルお兄様とミカはルクレール公爵家に行くことになったのだ。

 ルクレール公爵家に行く荷物はすぐにまとまった。夏の暑い時期なので衣類は薄いものばかりだが、汗をかいたら着替えられるように多めに入れておく。

 わたくしはマティルダさんに手伝ってもらって、ミカはオレリアさんに荷物を作ってもらった。


 出発の日はよく晴れて暑かった。

 宮殿からルクレール公爵家のタウンハウスまではすぐで、わたくしとラファエルお兄様とミカは広い庭のあるルクレール公爵家のタウンハウスでユリウス様とルカ様とルクレール公爵家の伯父様と伯母様に迎えられていた。


「ラファエル殿下とセラフィナ殿下がベルンハルト公爵家に泊まりに行ったと聞いたときから、ルカもうちに泊まりに来てほしいと騒いで聞かなくて」

「誰かが泊まりに来たことなんてなかったから、わたしも経験してみたくて」


 苦笑するユリウス様に、ルカ様が一生懸命言い訳をしている。ベルンハルト公爵家のアルベルト様もわたくしたちの従兄弟であるので、同じ従兄弟であるルクレール公爵家のユリウス様とルカ様のところにどうして泊まりに行ってはいけないのか、ルカ様は羨ましかったのかもしれない。

 遅れて馬車から降りて来たミカがルカ様に駆け寄った。


「あそぼう!」

「あ! ミカエル殿下も来てたんですね! よし、とっておきのいいものを見せてあげる」

「えー!? なになに?」


 ミカの姿を見てぱっと笑顔になったルカ様はミカを連れて自分の部屋に向かっていた。

 わたくしとラファエルお兄様は泊まる部屋に荷物を置いて、ルカ様に連れて行かれたミカの様子を見に行く。

 ルカ様はミカに木剣を見せていた。


「最近、剣術の稽古をしてもらえるようになったのです。これがわたしの木剣です」

「うわー! かっこういい! ちょっとかして!」

「部屋の中で振り回すと危ないので、庭に行きましょうか?」

「はい!」


 見せられた木剣に夢中のミカは大人しくルカ様について行く。

 ルカ様は快くミカに木剣を貸してくれて、ミカはそれを振り回して大喜びしていた。


 それを見ながらユリウス様がわたくしとラファエルお兄様に声をかける。


「ミカエル殿下が生まれたとき、ルカは、自分も弟がほしいとものすごく羨ましがっていたのです。ミカエル殿下が来てくれると聞いて、ルカはとても喜んでいます」

「ミカエルもルカに遊んでもらって嬉しいと思うよ」

「ミカには最近友人ができたのです。同年代の子どもと遊ぶことを覚えて、ルカ様と会うのも楽しみにしていたのですよ」


 ユリウス様とラファエルお兄様とわたくしが話していると、ルカ様はミカに教えてもらった剣術の型を見せていた。


「腰を少し落として重心を安定させて剣を構えるのです」

「こ、こうですか?」

「そして、無駄のない動きで剣を振るのです」

「こ、こうかな?」


 教えてもらってミカは一生懸命ルカ様の真似をしている。

 ルカ様と遊ぶと楽しいだろうというわたくしの予想は当たっていたようだ。


「ルカー! ミカエル殿下ー! 外は暑いのでそろそろ部屋の中に入りませんか?」

「はーい、兄上!」

「はーい、ユリウスさま!」


 ユリウス様に呼ばれると、ルカ様もミカも素直に返事をして庭から駆けてお屋敷の中に入って行った。

 お屋敷の中では昼食の準備がされていた。

 昼食は夏野菜がたくさん入ったラタトゥイユとパンとポークステーキだった。元々好き嫌いがないミカは美味しそうに食べていたし、わたくしもラファエルお兄様も美味しくいただいた。

 ミカがぱくぱくと夏野菜を食べているのを見て、ルカ様が目を見開く。


「ミカエル殿下、野菜、食べられるんですか!?」

「とてもおいしいです」

「えー……」

「ルカ、好き嫌いはいけないよ」

「は、はーい……」


 ルカ様は野菜が苦手なようだった。それでも年上だからミカに格好悪いところは見せられないと思ったのだろう。頑張って夏野菜のラタトゥイユを食べていた。


 食べ終わるとミカはお昼寝をする。

 その間にわたくしとラファエルお兄様とユリウス様とルカ様は新しい本について話していた。


「東方の物語を訳した本が手に入って……」

「騎士みたいな格好いい男が出てくるんです!」


 あれ?

 これはなんだか聞いたことがある。


「それは『ブシ』という職業ですか?」

「そうですよ。珍しい本だったので、ミカエル殿下の年齢によさそうなものもあったので、誕生日お祝いに贈らせていただきました」


 わたくしの問いかけにユリウス様が笑顔で答える。

 ミカがすっかりと東方の絵本にはまってしまったのは、ユリウス様が原因だったようだ。


「ミカはあの本をとても気に入っていて、自分で脚本、演出、作曲、作詞をして、ミュージカルのように演じて遊んでいるんですよ」

「それは多彩ですね!」

「それ、面白そうです! わたしも一緒に遊びたい!」


 ユリウス様とルカ様が興味を持ってくれて、ミカと遊んでくれるひとはますます増えそうだった。

 ミカがお昼寝から起きたところでお茶の時間になる。

 お茶の時間にはお茶菓子に桃のコンポートが出た。甘い桃のコンポートは口の中で溶けるようでとても美味しい。

 わたくしが喜んで食べていると、ルカ様がミカに話しかけている。


「『ブシ』ごっこをしているのですか?」

「『ブシ』のミュージカルをつくっているの。ルカさまもいっしょにする?」

「教えてくれますか?」

「はい!」


 お茶の時間の後は、ルカ様とミカで、ミカの作ったミュージカルを即興で演じることになった。


「おねえさま、れいじょうやくになってください」

「はい」

「おにいさまとユリウスさまは、わるいやつです!」

「悪い奴かぁ」

「まぁ、年上だし引き受けましょうね」


 ミカはてきぱきと配役を決めて、わたくしとラファエルお兄様とユリウス様も巻き込んでいく。


「ルカさまとわたしは、『ブシ』で、わるいやつにねらわれるごれいじょうをたすけるのです」

「分かりました。セラフィナ殿下をお守りするのですね」

「はい」


 そして、ミカの劇場が始まった。


「そこのごれいじょう、つけられておりますぞ。たすけがひつようでは?」

「わたしたちが助けましょう」

「ありがとうございます」


 打ち合わせをしたわけではないのに、息ぴったりに演じるミカとルカ様に、わたくしは二人の後ろに隠れる演技をする。

 視線を向けられて、ラファエルお兄様とユリウス様が様子を伺いながら参加する。


「えーっと、令嬢はどこに行ったのかなぁ?」

「わたしたちは悪い奴ですよー」

「れいじょうはわたさぬぞ! かくご!」

「われわれがきたからには、もうだいじょうぶ!」


 ダンスが始まり、踊りながら戦う動きをするミカとルカ様。ラファエルお兄様とユリウス様は様子を見ていたが、退場するタイミングだと思ったのか、二人で顔を見合わせて頷いている。


「うわー! やられたー!」

「強すぎます! 逃げましょう!」


 上手に負けてくれたラファエルお兄様とユリウス様に、満足して踊り終わったミカとルカ様がポーズを決める。


「これでわれわれのしょうりだ~♪」

「勝利だ~♪」


 最後は歌って終わっていた。


 四歳のミカが考えたにしては頑張っているのではないだろうか。

 わたくしはミカとルカ様に拍手を送る。


「とても上手でしたよ」

「おねえさま、ほんとうはわたし、『つけられております』って、なにをつけられたのかよくわからなかったの」

「『つけられております』というのは、『悪者がひっそり後ろからついて来ていますよ』という意味で、何かをつけられたわけではないのですよ」

「そうなの? わかった!」


 途中で分からない単語があったが、雰囲気を壊さないために、演技が終わるまでは聞かないで我慢していたらしい。それだけルカ様との共演が楽しく、その時間を壊したくなかったのだろう。

 ミカの遊びにも成長が見られた。


 夕食後、わたくしたちは夜風に当たるためにテラスに出た。

 空には満天の星が輝いている。


「ラファエル殿下とセラフィナ殿下とミカエル殿下は、流れ星を見たことがありますか?」

「ながれぼしって、なぁに?」

「空の星が、光りながら流れていくのです。流れ星を見ると願い事が叶うと言います」

「えぇ! わたし、ながれぼし、みたい!」


 ルカ様の問いかけにミカが必死になって目を凝らしているが、そんなにタイミングよく星が流れるはずもない。


「わたしは一度だけ見たことがあります。兄上と一緒にこのテラスで」

「あのときは驚いたよね」

「はい。星が流れるだなんて思わなかったから、願い事をするのも忘れていました」


 流れ星が見られるのならば見たかったけれど、残念ながらわたくしたちが星を見ているときに流れ星は見られなかった。


 翌日、ルカ様が伯父様と伯母様に頼んだのか、ミカのための木剣が用意されていた。

 ルカ様が使っているものよりも小さくて、軽いものだった。


「兄上が小さなころに使っていたのだそうです。ミカエル殿下に差し上げます」

「いいの!?」

「特別です」

「うれしい! ありがとう!」


 ミカは木剣を譲ってもらえてとても嬉しそうだった。

 宮殿に帰ってからもミカは木剣を振って、ミュージカルごっこをするのかもしれない。

 それにダニエル殿が加わることもあるだろう。


「こんどは、ルカさまがきゅうでんにあそびにきてください」

「はい、行きます!」

「おともだちのダニエルにもあわせたいです」

「ぜひ会いたいです」


 約束するミカとルカ様は、お泊りを経験して、仲良くなれたようだった。

読んでいただきありがとうございました。

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