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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
四章 セラフィナと音楽

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7.ミカエルの友人、ダニエル

 ミカは誕生日に色んなプレゼントをもらっていた。

 その中にその本はあったのだ。


 歌劇団の公演を見に行ってから、ミカは色々と考えていたようだが、ついに自分で考えた演目を勝手に作った歌で歌い、子ども部屋で演じるようになっていた。

 その演目の内容が、プレゼントされた本に影響されたものだったのだ。


「おこまりかな、ごれいじょう。せっしゃがまいったからには、もうだいじょうぶ……おねえさまー! 『せっしゃ』ってなぁに? 『まいった』ってまけたってこと?」


 よく分からないが東方の島国を舞台にした物語だったようで、その中に出てくる「ブシ」とかいうものにミカはなりきってしまうのだ。


「拙者……拙者というのは、自分のことだと思います。参ったとは、『来ました』というのを丁寧に言っているのだと思います」

「はーい! わかったー! ありがとうー!」


 返事をすると、すぐにきりっと表情を引き締めて、ミカは役に戻っていく。


「さがっていなさい。おかくご! ……『おかくご』ってなぁに?」

「えっと、『心の準備はいいですか?』みたいな意味だと思います」


 東方の言葉はよく分からないが、ミカが聞いてくるのでわたくしは必死になって答える。

 納得して、ミカは歌い出す。


「せっしゃに~かかれば~きさまらなど~いっしゅんでほうむりさってくれるわ~♪」


 歌っている。

 作曲、作詞ミカの歌である。

 歌ってから、ミカはわたくしに視線を向けた。


「おねえさまー! 『きさまら』ってなぁに? 『ほうむりさってくれる』ってどういういみ?」


 意味も分からずに使っているのに、様になっているからおかしい。

 その上、分からないところは演技を中断して一つ一つ聞いてくるのもかわいい。


「貴様らとは『あなたたち』の怖い言い方ですね。ミカ、普段は使ってはいけませんよ。葬り去るとは、『やっつける』みたいな意味です」

「はーい! ふだんはつかいません。あそんでいるときだけにするね!」


 難しい言葉を使って遊びたい年頃なのだろう。

 それから演舞のような戦いのシーンが入り、勝利の歌が披露される。


「これでおわりだ~♪ わるものはさった~♪ われらのしょうりだ~♪」


 歌い上げてから、ミカはわたくしに向き直った。


「おねえさま、『われら』ってなぁに?」

「『わたしたち』みたいな意味です」

「わかったー! ありがとうー!」


 歌って踊って戦って、ミカはものすごく満足している様子だった。

 そんなミカを見て、かわいいとは思うのだが、わたくしは少しだけ不安になってしまった。


 夕食の席でお父様とお母様とラファエルお兄様に相談してみる。


「ミカは最近、自分で作った歌と踊りで、一人で東方の『ブシ』という騎士のようなものを演じて遊んでいます。わたくしが男の子の遊びがよく分からないのと、忙しくて一緒に遊んであげられないので、ミカは一人で遊ぶしかなくて、寂しいのではないでしょうか?」


 わたくしが言えば、同席していたミカも、もじもじと口を開く。


「わたし、おねえさまががくゆうがいるのがうらやましいの。わたしもいっしょにあそぶあいてがほしい!」


 ミカにも早いかもしれないが同じ年くらいの子どもと遊ぶ場が必要なのではないだろうか。

 わたくしの発言をお父様とお母様は重く見てくれた。


「確かに、ミカエルはラファエルとも年が離れているし、セラフィナは女の子だし、男の子の友達がほしいのかもしれないな」

「ずっとセラフィナと遊んでいましたが、セラフィナも本格的に勉強をするようになって忙しくなりましたし、ミカエルにも遊び相手が必要になったのでしょうね」


 お父様とお母様は話し合っていたが、ミカのために動いてくれるようだった。

 翌日のギマール先生の授業のときに、ギマール先生はミカと同じ年ごろの薄茶色の髪に薄茶色の目の男の子を連れていた。


「ミカエル殿下、わたくしの息子のダニエルです。ミカエル殿下と同じ、四歳になります。今日からミカエル殿下の友人として一緒に遊ばせていただきます」

「ダニエルです。よろしくおねがいします」

「ミカエルです。よろしくおねがいします」


 ミカの方が発育がいいので背は高いが、ダニエル殿は利発そうな男の子だった。

 ミカもダニエル殿に興味津々である。


「ダニエルさま、いっしょにあそびましょう」

「ミカエル殿下、ダニエルのことは『様』などつけなくて構いません。ダニエルと呼んでやってください」

「ダニエル! ダニエル、あそぼう!」

「はい、ミカエルでんか!」


 ミカに誘われてダニエル殿は一緒に遊ぶことにしたようだ。

 ミカがお気に入りの東方の絵本を見せている。


「わたし、『ブシ』で、ダニエルがたすけられる『ごれいじょう』になって」

「ごれいじょうですか!? わたしはおとこのこです!」

「おとこのこは『ごれいじょう』にはなれないの?」

「ごれいじょうは、おんなのかたのことです」


 ダニエル殿に教えてもらってミカは一生懸命配役を考えているようだった。


「それなら、ギマールせんせいが『ごれいじょう』で、わたしとダニエルが、『ごれいじょう』をたすける『ブシ』になろう」

「わかりました。おかあさまをまもるのですね」

「『ブシ』はじぶんのことを『せっしゃ』っていって、むずかしいことばをつかうんだよ」

「ほんをみせてください。おぼえます」


 二人で打ち合わせをしてから、ミカとダニエル殿の劇が始まった。


「せっしゃ、ミカエルともうす」

「せっしゃ、ダニエルです」

「ダニエル、ともにごれいじょうをおまもりするのだ!」

「えっと……なにからおまもりするんですか?」

「あのね、わるいやつが、ごれいじょうをねらっているの。わたしたちは、わるいやつをやっつけるの」

「わかりました。おかくご!」

「おかくご!」


 二人で踊って戦って、最後にはミカとダニエル殿が歌う。


「これでいっけんらくちゃく~♪ われらのしょうり~♪」

「いっけんらくちゃく、ってどういういみでしょう?」

「わかんない……おねえさまー! いっけんらくちゃくってなぁに?」

「えーっと、『このことが無事に終わりましたよ』ということでしょうか」

「わるいやつをたおして、ぶじにおわったんだって」

「わかりました。セラフィナでんか、ありがとうございます」


 途中で意味が分からなくなるのは同じだが、意味を確認するし、ミカは一人で遊んでいるときよりもずっと活き活きしているように見えた。

 ダニエル殿はミカと一緒に勉強もしていった。

 一人だったのでギマール先生の授業に力が入っていなかったミカも、ダニエル殿という友人を得て、一緒に学ぶ楽しさを覚えたようだった。


「ギマールせんせい、わたし、ろうどく、できます」

「おかあさま、わたしもできます」

「それでは、順番に読んでもらいましょうね。先にミカエル殿下からどうぞ」

「はい!」


 絵本くらいなら読めるようになっているミカは、ギマール先生に指定された絵本をすらすらと読み上げる。ダニエル殿はそれを聞いていて、拍手をしていた。

 次にダニエル殿が絵本を読み上げる。ダニエル殿もつっかえることなく絵本を読めていた。


「絵本の中の男の子は、どうして道を間違ったのだと思いますか?」

「まっすぐっていわれて、みちのうえじゃなくて、そのまままっすぐいっちゃったからだとおもいます」

「わたしもそうおもいます」

「そうですね。真っすぐに進みましょうと言われたときには、道の上を真っすぐに進まなければいけませんね」


 絵本の内容を理解できているかギマール先生に問いかけられても、ミカはすらすらと答えていた。

 ミカに友人ができて、一緒に過ごすことができるようになって、わたくしは安心していた。

読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
この作品も毎日愉しみに読ませて頂いてます ミカちゃまが可愛い過ぎる!!  だけど詩ですか… 何処かの誰かの弟君を思い出します 私も若い頃は少しだけ読みましたけど流石に4歳では 中々大物ですね。 今は…
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