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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
四章 セラフィナと音楽

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3.リボン造花

 リヴィア嬢から届いたリボンは、赤で両端に金色のラインが入っていた。

 その美しいリボンを、お母様がくるくると巻いて薔薇のようにして加工してくれる。針と糸で留めて、数個集めるとリボン造花のコサージュが出来上がった。


「これはとてもかわいいです。リヴィア嬢とセリーヌ嬢にも教えてあげないと」

「リヴィア嬢とセリーヌ嬢の分も作りましょうか?」

「いいのですか、お母様?」

「もちろんですよ。このくらいすぐにできます」

「それではミカの分も作ってくれますか?」


 お揃いにしたいというミカの願いを叶えてあげたいわたくしに、お母様は少し首を傾げる。


「ミカエルはまだお茶会には参加できないのでは?」

「そうでした。ミカにそのことを言うとショックを受けるでしょう」

「お茶会に参加できなくても、その後で開かれるお誕生日のお祝いのときにつければいいですね」

「そうですね」


 ミカはまだ三歳なのでお茶会デビューしていない。お茶会の後にはミカもラファエルお兄様を祝えるようにお祝いが開かれるだろうから、そのときにミカもリボン造花のコサージュをつければいいとわたくしは思った。


 ラファエルお兄様のお誕生日のお茶会で、わたくしは菫色のドレスを着て、リヴィア嬢は薄桃色のドレスを着て、セリーヌ嬢は若草色のドレスを着ていた。三人とも胸にお母様が作ってくださったリボン造花のコサージュをつけていた。


「セラフィナ殿下のドレス、お似合いですね」

「お母様の目の色を身に付けさせていただきました。お母様とお揃いなのです」

「とても素敵です。リボン造花もよく似合っています」


 リヴィア嬢とセリーヌ嬢に褒められて、わたくしは誇らしい気持ちになっていた。

 このリボン造花がお母様の作ったものだと思うと、ますます誇らしい気持ちになる。


「お母様、わたくしもこれを作れますか?」


 お茶会の席につく前にわたくしは小声でお母様に聞いてみる。


「練習すれば作れると思いますよ」

「お兄様のお誕生日お祝いに毎年お花を用意していますが、今年はこれを贈りたいのです」

「それならば、わたくしと一緒に作りましょうね」


 お母様はわたくしと約束をしてくれて、わたくしは安心して席についた。

 ラファエルお兄様が挨拶をする前に、お父様が口を開く。


「ラファエルの誕生日を祝ってくれて感謝する。ラファエルも今日で十七歳。わたしはラファエルを立太子させようと思っている」


 ラファエルお兄様が皇太子になる。

 これまでもラファエルお兄様が皇太子になることは疑っていなかったが、はっきりとお父様が宣言されたのは初めてだと思う。

 それを受けてラファエルお兄様が挨拶をする。


「皆様、わたしの誕生日のお茶会に来てくださってありがとうございます。わたしは今日、父より立太子をすることを宣言されました。皇太子として、父の後を継げるように精進していきたいと思います」


 ラファエルお兄様の挨拶に拍手が巻き起こる。

 立太子の儀式は別に行われるのだろうが、今日からラファエルお兄様は皇太子の自覚をもって振舞う様子だった。


 お茶会の席はラファエルお兄様とアンリエットお義姉様が正面で、わたくしとアルベルト様がお隣に座った。

 アンリエットお義姉様が表情を引き締めているのが分かる。


「わたくしも皇太子妃となるのですから、これから自覚をもっていかなければいけませんね」

「アンリエット嬢がわたしと一緒にいてくれるのならば、安心です」

「ラファエル殿下のお力になれるように致します」

「父と母のように、支え合って共に生きていけたらいいですね」


 ラファエルお兄様は学園卒業後アカデミーに進学されるようだが、結婚は恐らく学園卒業後の十八歳でされるだろう。アンリエットお義姉様とラファエルお兄様は同じ年で、学園を卒業する年に成人する。


「ラファエル殿下はアカデミーに進学なさるのですよね」

「そのつもりです。皇太子として執務を執り行うために、より高度な勉強をしたいと思っています」

「わたくしもアカデミーに進学しようかと思っています」


 アンリエットお義姉様の言葉に、驚いたのはわたくしだけではなかった。

 ラファエルお兄様も、奥の席に座っているお父様もお母様も驚いていた。


「アカデミーの女性の進学率は非常に低いと聞く。アンリエット嬢はアカデミーに進学するつもりなのか」

「はい。わたくしも皇太子妃となり、いずれは皇后となるのです。国の政治を司るためには、勉強がまだまだ必要だと思います」

「立派な心掛けです。女性もアカデミーに進学することができる世の中になってきているのですね。わたくしのころにはアカデミーに進学するという選択肢がありませんでした。わたくしの分まで勉強してほしいです」


 お母様もアカデミーに進学したかったのかもしれない。お母様は学園を卒業してすぐに結婚して、翌年にはラファエルお兄様を産んでいる。皇帝家に入るのだから仕方がないとはいえ、お母様ももう少し選択肢があった方がよかったと思っているのだろう。

 アンリエットお義姉様を応援するお母様の瞳は真剣だった。


「お父様はアカデミーに進学されたのですか?」


 わたくしが気になっていたことを問いかけると、お父様は苦く笑う。


「進学したかったのだが、わたしに皇帝位を譲りたかった父が許さなかった。父は早く皇帝という座から解放されて、自由に生きたかったようなのだ」


 そういう話を前にも聞いたことがあったような気がする。

 お祖父様は皇帝になることもお祖母様と結婚することも嫌がっていて、お祖母様との間にお父様が生まれたのちはお祖母様にも近付かず、早く皇帝位を退くことだけを考えていたというような。

 わたくしがお祖父様とお祖母様が健在なのに会ったことがないのは、お祖父様もお祖母様も政略結婚で愛がなく、お父様のことも愛してはいなくて、孫に会うなどということを考えたこともないという状態だったからだとお父様から聞いたことがある。

 それだけに、お父様は学園で出会ったお母様を愛し、愛のある結婚をして、お母様を皇帝と同じ地位の皇后にしたのだとお父様は語ってくれた。


 お祖父様とお祖母様のこと、それにお父様がアカデミーに進学できなかったことは残念に思うが、それを繰り返さないために、お父様が努力しているのは立派だと思う。


「お父様のおかげで、わたくしたちは幸せです」

「父上、わたしのアカデミー進学を認めてくださってありがとうございます」

「セラフィナ、ラファエル、父親が子どものことを考えるのは当然だ。アンリエット嬢もアカデミーに無事に進学できることを願っているよ」


 愛を知らずに育ったはずなのに、お父様はとても愛情深い。

 わたくしたちを愛してくださるお父様に、わたくしは感謝しかなかった。


 ラファエルお兄様のお誕生日のお茶会が終わってから、わたくしはお母様と一緒にリボン造花を作っていた。

 リボンを巻いて薔薇の花のようにするのだが、リボンが滑ってなかなか難しい。

 小さな手ではとても大変だったが、なんとか巻いて形にすると、お母様がそれを縫って解けないようにしてくださる。

 わたくしはラファエルお兄様の分の赤と金の薔薇と、アルベルト様の分の薄茶色の薔薇を何とか仕上げた。

 どちらも三個ずつあって、まとめるとコサージュになる。

 お母様が葉っぱも作ってくださった。


「コサージュにはビーズも飾りましょう。セラフィナ、どのビーズがいいか選んでください」

「何色がいいでしょう? お兄様は薔薇が赤と金なので迷います」

「何色にでも似合う色があるのではないですか?」

「何色にでも似合う色……白と黒でしょうか?」

「そうですね。ラファエルとアルベルト殿のコサージュ、どちらをどちらの色にしますか?」


 赤と金の薔薇の花、薄茶色の薔薇の花に白と黒のビーズを合わせてみて、わたくしは決めた。


「お兄様が白いビーズで明るくまとめて、アルベルトお兄様が黒いビーズでシックにまとめるのはどうでしょう?」

「とてもいいと思います。そうしましょう」


 お母様が器用にビーズを飾ってくれて、赤と金の薔薇に白いビーズのコサージュと、薄茶色の薔薇に黒いビーズのコサージュが完成した。

 出来上がりに目を輝かせてわたくしはコサージュをお母様が用意してくださった箱に納めた。


読んでいただきありがとうございました。

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