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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
四章 セラフィナと音楽

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2.演奏会の後で

 演奏会の後は、オトテール先生と指揮者も招いてお茶会が開かれた。

 オトテール先生も指揮者も大人たちの席の近くに座っていて、わたくしはセリーヌ嬢とリヴィア嬢の間に挟まれて、前にはラファエルお兄様とアンリエット嬢とアルベルト様が座っている。

 セリーヌ嬢とリヴィア嬢はわたくしと演奏会の素晴らしさを語りたい様子だった。


「女性の独唱、あの高音の響きは天にも昇るような心地でした」

「あんなに高い音を美しく出せるものなのですね」

「男性の独唱の低い響きも素晴らしかったこと」

「お姉様が歌劇団の演奏を聞きに行ったことがあるのです。そのときに、男性と女性が歌い合っていたというのを聞きました。わたくし、歌劇団の演奏を聞いてみたくなりました」


 セリーヌ嬢とリヴィア嬢が感想を言い合っている中で、リヴィア嬢の口から歌劇団という単語が出てわたくしは胸がドキドキしてしまう。

 前世でわたくしは歌劇団のことは知っていた。自分が聞きに行けるわけがないと分かっていたけれど、歌劇団がどんな演目をするのか配られるチラシを手に入れたことがあって、それを大事に取っていた思い出がある。

 家同士の諍いによって引き裂かれる恋人同士の切ない恋物語だった記憶がある。

 それを見に行きたかったが、わたくしの給料ではとても無理だったし、休みも取れなかったし、チケットを手に入れることもできなかった。


「わたくしも歌劇団の演奏、聞いてみたいです」


 わたくしが興味を持ったことを示せば、ラファエルお兄様がわたくしに声をかけて来た。


「セラフィナが行きたいのなら、一緒に行く?」

「いいのですか、お兄様?」

「それは、わたしもお誘いしようと思っていたよ。セラフィナ、わたしと行かない?」

「アルベルトお兄様まで!」

「それでは、わたくしとラファエル殿下、ユリウス様とレティシア嬢、セリーヌ嬢とリヴィア、アルベルト様とセラフィナ殿下で、ボックス席を予約して行くのはどうでしょう?」


 ラファエルお兄様とアルベルト様の言い合いになってしまうかと思ったら、素早くアンリエットお義姉様が助け舟を出してくれる。

 アンリエットお義姉様とラファエルお兄様、ユリウス様とレティシア嬢、セリーヌ嬢とリヴィア嬢、アルベルト様とわたくしならば、ラファエルお兄様とアルベルト様が衝突することなくみんなで歌劇団の演奏を聞きに行けるだろう。


「アンリエットお義姉様、わたくし、行きたいです」

「わたくし、帝都の歌劇団のファンですの。次の演目がどんなものか調べたら、お知らせいたしますね」

「ありがとうございます、アンリエットお義姉様」


 アンリエットお義姉様のおかげで、わたくしは歌劇団の演奏も聞きに行けそうだった。


「歌劇団ではどのような演目をするのですか? 確か、ミュージカルと呼ばれる、お芝居と歌を一緒にしたものをされているという噂ですが」


 セリーヌ嬢が興味津々でアンリエットお義姉様に質問している。セリーヌ嬢も歌劇団の演奏は聞いたことがない様子だ。


「歌とお芝居が一緒になった素敵な舞台ですよ。セリフを歌い上げることもあります」

「セリフを歌で!」

「セリーヌ嬢はお芝居は見に行ったことがありますか?」

「いえ、まだありません」

「お芝居だけをするときと、ミュージカルをするときがあるので、歌劇団でどちらも楽しんだらいいと思います」


 歌劇団はお芝居だけをするときも、ミュージカルをするときもあるようだ。

 ミュージカルとは歌とお芝居が一緒になっているというが、セリーヌ嬢と同じでお芝居を見たことがないわたくしは、どういうものか想像がつかない。

 歌劇団の舞台もわたくしは楽しみにしていた。


「わたち、せいがくかになりまつ!」

「ミカ!?」


 身を乗り出して発言するミカに、わたくしは驚いてしまう。

 三歳にしてミカはあの演奏に感動して、声楽家になりたいと思ってしまったようだ。


「皇族に声楽家がいてもいいな。ミカエルは皇子としての教育も受けてもらうが、声楽家としての勉強も同時にすればいい」

「芸術に触れるのはいいことだと思います」


 お父様もお母様もミカの言葉に笑顔で応じていた。


 演奏会が終わってから、わたくしはこれまで以上にピアノと声楽に熱心になっていたが、ミカも同じようだった。

 ついにミカはギマール先生と共に、わたくしと一緒にオトテール先生の授業を受けるまでになっていた。


「ミカエル殿下、曲の始めには、一礼します」

「あい」

「歌い終わったら、演奏が終わったところで、ピアノ演奏者に視線を向けて、ピアノ演奏者が立ち上がったところで一緒に一礼します」

「あい」


 オトテール先生が指導をして、ギマール先生が伴奏を弾く。それでわたくしとミカの声楽の授業は一緒になってしまった。

 始めた時期が同じだったのもあるが、ミカはものすごい熱意であっという間にわたくしに追い付いて、譜面も自分で読めるようになって、わたくしを追い抜かん勢いで成長しているのだ。

 ミカに音楽の才能があったということでオトテール先生もミカに期待していたし、ギマール先生もミカにしっかりと教えてくださっているようだった。


「ミカエル殿下は譜読みができるようになっています。この年齢ですごいことです」

「こえは、ド、こえは、レ」

「上手に読めていますよ」


 ギマール先生はミカに文字を教えるのと同時に、楽譜の読み方も教えていたようだった。

 今ではミカはしっかりと楽譜を読めるようになっている。


「ミカエルまで声楽を始めたなんて。わたくしは娘と息子と合唱ができそうですわ」


 時々練習に顔を出してくださるお母様は、ミカが声楽が上達していることをとても喜んでいた。


「わたち、せいがくなになりまつから!」

「頑張ってくださいね」

「あい!」


 ミカの声楽家になりたいという夢は、日に日にしっかりと形を持ってきているようだった。


 わたくしと声を揃えて歌うと、ミカは時々音を外すが、三歳にしてはしっかりと歌えていると思う。ギマール先生が上手に休憩を入れつつ導いているのもあるが、オトテール先生の授業を最初から最後まで集中して受けられるのもすごいと思う。


 わたくしは前世の記憶があるからできるのだが、三歳のときには精神が肉体に引っ張られて、こんなに集中できなかったのではないだろうか。


 ミカの才能と集中力にわたくしも驚いていた。


 学友ができてから、わたくしは二週間に一度、学友とお茶をしていた。リヴィア嬢もセリーヌ嬢もしっかりと教育されていて、優しくていい子たちだし、わたくしは会うのが楽しみだった。

 リヴィア嬢は近くなったラファエルお兄様のお誕生日のお茶会について話していた。


「ラファエル殿下のお誕生日のお茶会で、わたくしたち、お揃いのリボンを身に付けませんか?」

「お揃いのリボンですか?」

「ラファエル殿下の髪の色の赤と、目の色の金のリボンはどうでしょう?」

「三人でお揃いにするのですね! いいですね。胸につけてもいいし、髪に結んでもいいのではないですか?」

「胸に付けるのはいいアイデアですね」


 リヴィア嬢を中心にわたくしとセリーヌ嬢で盛り上がっていると、同席していたミカが目を輝かせている。


「わたちもおそろい、ちたい!」

「ミカエル殿下もリボンをつけますか?」

「胸に付けたらいいのではないでしょうか? ミカエル殿下もラファエル殿下と同じで髪は赤、目は金色です。よくお似合いになると思います」

「ミカもお揃いですね」


 リヴィア嬢からもセリーヌ嬢からも受け入れられて、ミカは喜びに目を輝かせていた。


 リヴィア嬢がリボンを注文してくれることになって、お茶の時間はお開きになった。

 わたくしはラファエルお兄様のお誕生日のお茶会に着ていくドレスを選ぶ。

 ドレスはわたくしが日々大きくなっているので、毎年作り替えているが、色は菫色と薄茶色が多い。

 わたくしがドレスを選んでいると、お母様が部屋に来てくださった。


「今度のラファエルの誕生日には、リヴィア嬢とセリーヌ嬢とミカエルとお揃いのリボンをつけるそうですね」

「そうなのです。それで、ドレスをどうしようか悩んでいました」

「ラファエルのお誕生日の後には、アルベルト殿のお誕生日もありますね」

「アルベルトお兄様のお誕生日に、薄茶色のドレスを着たいので、お兄様のお誕生日は菫色のドレスにしようかと思っていたのですが、赤と金のリボンが似合うでしょうか?」


 それが今のわたくしの悩みだった。

 わたくしが口に出して言えば、お母様がわたくしのリボンのコレクションから赤と金のリボンを取り出して、菫色のドレスに合わせてくれる。


「髪に結ぶのならば気になるかもしれませんが、このようにして、胸に飾ったらどうですか?」


 お母様はリボンをくるくると巻いて、薔薇の花のようにしてしまった。

 こんな風にリボンを加工することもできるのか。

 わたくしは薔薇の花のようになったリボンを菫色のドレスの胸に当てる。


「これなら造花をつけているようでいいですね」

「リボンで造花を作れるのですよ」

「知りませんでした」


 お母様のおかげでわたくしはラファエルお兄様のお誕生日に着るドレスが決まって安心していた。


読んでいただきありがとうございました。

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