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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
三章 セラフィナの婚約

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25.ミカエルの詩

 新学期が始まり、ラファエルお兄様とアルベルト様とアンリエットお義姉様とユリウス様は五年生になっていた。

 十二歳で学園に入学したラファエルお兄様とアルベルト様とアンリエットお義姉様とユリウス様がもう十六歳というのは早く感じられる。

 わたくしが二歳のときに学園に入学したので、それから四年以上経っているのだ。

 わたくしはまだあと六年しないと学園には入学できない。そのころにはラファエルお兄様もアルベルト様もアンリエットお義姉様もユリウス様も学園から卒業しているだろうし、結婚もしているかもしれない。

 ラファエルお兄様とアルベルト様は学園卒業後、アカデミーに進学すると言っていたから、そちらで勉強しているかもしれないが、アンリエットお義姉様とユリウス様の進路はわたくしは知らなかった。


 お茶会の席では慌ただしくてリヴィア嬢ともルカ様ともユリウス様とも言葉を交わせなかったのを気にしていたのがお父様とお母様には分かっていたのだろう。

 進級祝いということで、宮殿でお茶会が開かれた。

 ベルンハルト公爵家の叔父様と叔母様とアルベルト様、アルマンドール公爵家のご両親とアンリエットお義姉様とニコ様とリヴィア嬢、ルクレール公爵家の伯父様と伯母さまとユリウス様とルカ様がお茶会に参加した。

 わたくしたちは、お父様、お母様、ラファエルお兄様、わたくし、ミカの五人である。

 ミカはもじもじとしながらリヴィア嬢になにか折った紙を渡していた。

 ミカに聞いてみると、「ち」と答えた。

 「ち」?

 何のことだろう。

 紙を広げたリヴィア嬢も、グネグネとしたミミズののたくったような線が書かれているだけで、何が書かれているのかよく分からないようだ。リヴィア嬢がミカに聞く。


「ミカエル殿下、これは、なんと書いてあるのですか?」

「こえは、『だいすちなリヴィアじょうへ。わたちのこころはちぢにみだれていまつ。わたちのむねのなかのばらのしげみが、とげをみせ、わたちのきじゅつきやついこころをかくちているのでつ。どうかこのはながさくまで、まっていてくだたい。わたちのこころがみちるまで』とかいてあるのでつ」


 詩!?

 なんということでしょう。

 ミカは三歳にして詩作にふけっていたのです。

 まさかそんな才能があるだなんて知らなかったし、その才能をリヴィア嬢に向けて発揮するだなんて思わなかったのでわたくしはものすごく驚いてしまった。

 誇らしげにしているミカに、リヴィア嬢は「詩なのですね。ありがとうございます」と口にはしているが、顔にははっきりと「意味が分かりません」と書かれている。ミカの詩を聞いていたラファエルお兄様も沈痛な面持ちになっている。


「ミカエルは影響を受けやすい年齢なんだ……。ストラレイン王国、許すまじ! ミカエルにこんな詩を吹き込んで!」

「ミカが詩を書いてしまうだなんて。しかも、あの詩集にそっくり」


 頭を抱えるラファエルお兄様とわたくしに、何事かと他の方々が聞いてくる。わたくしたちはミカのことについて説明した。


「ミカエルはストラレイン王国の王族から贈られた詩集をとても気に入っているのです。その内容はわたしたちには理解ができないもので……」

「三歳なのに自分で詩を作るなんて思いませんでした。これほどまでに影響力が高いなんて、ストラレイン王国の詩、恐ろしい……」


 ラファエルお兄様とわたくしが本気で恐怖しているのに、ミカは無邪気に「すばらち!」と言って手を叩いていた。

 わたくしたちの恐怖が逆に興味を持たせてしまったのか、アンリエットお義姉様とユリウス様がストラレイン王国の詩集について話している。


「ミカエル殿下がそんなに熱中している詩集ならば興味がありますわ」

「わたしも読んでみたいものですね」

「やめてください、アンリエット嬢、ユリウス!」

「そ、それはやめましょう!」


 ラファエルお兄様とわたくしが止めても、アンリエットお義姉様とユリウス様の興味は薄れない様子だった。

 ルカ様がリヴィア嬢の手から紙を奪って何が書いてあるのか確認している。


「これが詩? 全然読めないよ」

「ミカエル殿下はまだ字が書けないのでしょう。書いたつもりになっているのですよ」

「ミカエル殿下はまだ三歳だからな。字が書けなくても仕方がないか」


 リヴィア嬢に窘められるルカ様に、ユリウス様が頭痛がするような仕草で頭を押さえている。


「ルカ、公の場での喋り方を習ったはずだろう!」

「えー……あれ、面倒くさいんだもん」

「ミカエル殿下は年下だが皇族で、リヴィア嬢はレディだ。態度を改めなさい」

「あーはいはい」


 どうやらルカ様は六歳になってもまだ教育が行き届いていない様子だった。このまま大人になっても大丈夫なのだろうか。心配になるわたくしに、ニコ様が話題を変える。


「今年度からわたしも学園に入学しました。姉上と一緒に通学できるのは二年間だけですが、姉上を見習ってしっかりと学ぼうと思います」

「おめでとうございます、ニコ殿」

「おめでとうございます、ニコ様」


 入学のお祝いにラファエルお兄様とわたくしがわいていると、ルカ様が小声でミカに囁きかけている。


「ミカエル殿下のお気に入りの詩集、ちょっとだけ見せてもらえませんか?」

「あい。オレリアたん、もってきてくだたい」


 ミカがオレリアさんに頼んで持って来させると、ルカ様は詩集を読んで吹き出した。


「な、なにこれ!? 意味わからないんだけど!?」

「すばらちいでつ!」

「ミカエル殿下は、これを素晴らしいと思っているのですか?」

「あい! ルカたまには、わからないのでつね?」

「よく分かりません」


 笑っているルカ様から詩集を取り上げて、ミカは大事に抱き締めてオレリアさんに渡していた。

 笑うのはちょっと酷いかもしれないが、詩集の内容が理解できないのはわたくしもなので、わたくしもなんとも言えない。ラファエルお兄様もアルベルト様も詩集の内容を知っているので、何とも言えない顔をしていた。


 お茶菓子はお芋のモンブランタルトで、舟形のタルト生地にたっぷりと裏ごししたお芋が詰まっていて、上にクリームが乗っている。

 ミルクティーと一緒にいただくと美味しくてわたくしはあっという間に食べてしまう。口の周りをクリームだらけにしたミカがお代わりを要求していたが、たっぷりと量があったのでミカのお代わりの分もあった。


「セラフィナ殿下のお誕生日のお茶会では、セラフィナ殿下にお祝いも申し上げられず、すみませんでした」

「たくさんの方が来ていましたから、リヴィア嬢がわたくしに声をかけるのが難しいのは分かっていました」

「今、ここでお祝いをさせてください。セラフィナ殿下、本当におめでとうございます」

「ありがとうございます」


 六歳のリヴィア嬢が、他の参加者を押し退けて挨拶をするわけにはいかないので、わたくしにお祝いを言いに来るのは不可能だっただろう。それを理解してわたくしが言えば、リヴィア嬢はこの場でわたくしをお祝いしてくれた。


「おれ、じゃない、わたしも、お祝いをできなかったので、この場でお祝いをさせてください。セラフィナ殿下、おめでとうございます」

「ルカ様、ありがとうございます」


 ルカ様もお祝いを口にしてくれたので、わたくしは心からお礼を言う。

 小さなころから知っているリヴィア嬢やルカ様にお祝いされて、わたくしは心から幸せだった。


「リヴィア嬢のお誕生日はいつですか?」

「わたくしは冬です。冬の終わりごろです」

「ルカ様のお誕生日は?」

「わたしは夏です」


 二人のお誕生日のお茶会にもわたくしは出席したいと思っていた。

読んでいただきありがとうございました。

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