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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
四章 セラフィナと音楽

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26.乗馬の稽古とユリウスの結婚式

 夏が終わって、季節は秋に差し掛かっている。

 日差しも強くなくなってきたころ、わたくしは乗馬デビューすることになった。

 初めての乗馬なので、緊張していると、ミカがわたくしにお願いしてきた。


「いい子にしているから、一緒に連れて行って。お馬さんを見ているだけだから」


 それに関してわたくしは判断できなかったので、お父様とお母様に相談した。


「ミカが乗馬について来たいと言っているのです。馬には乗らないけれど、馬を見ていたいと言っていて」

「ミカエルも近いうちに乗馬をする様になるだろう」

「馬に慣れておくのは悪くないですね」


 ミカに甘いお父様とお母様はミカが同行するのを許可してくれた。

 よく晴れた日に、わたくしは宮殿の敷地の中にある牧場に出かけた。

 普段はわたくしはワンピースを着ているが、今日は乗馬服にブーツという出で立ちだ。スカート以外をはくのは珍しいので慣れないが、この方が動きやすいのだからこれから慣れていかなければいけない。

 乗馬には指導員がついてくれていた。


「ノエル・モンタニエと申します。セラフィナ殿下、ミカエル殿下、よろしくお願いします」

「セラフィナです。よろしくお願いします」

「ミカエルです!」


 モンタニエ先生は、まず最初に鞍と(あぶみ)をつけたポニーを厩舎から連れてきてくれた。ポニーとは体高の低い馬のことで、色んな種類があるが、わたくしのポニーは(たてがみ)がふさふさで尻尾もふさふさの若いポニーだった。

 モンタニエ先生はわたくしとミカに人参を握らせて、ポニーに食べさせるように促す。


「歯がとても強いので、指を噛まれないように気を付けてください」

「はい、分かりました」


 人参を食べると、ポニーはわたくしにすり寄ってくる。小さいとはいえ、わたくしも体が小さいのでバランスを崩して転んでしまいそうになる。ミカは興味津々でポニーを撫でていた。

 触れ合って緊張を解したところで、乗馬の練習が始まる。

 踏み台に乗ってモンタニエ先生に支えてもらってポニーに乗ると、視線が高くなって胸がドキドキしてしまう。ポニーでこれなのだから、大きな馬に乗ったらどうなるのか分からない。

 モンタニエ先生が手綱を引いて、ポニーを歩かせて牧場を一周してくれた。


「どうですか、乗り心地は」

「ちょっとお尻が痛いです」

「ポニーが動くのに合わせて、お尻を浮かせるのです」

「やってみます」


 もう一周ポニーを歩かせると、なんとなく乗っているときのコツが分かってくる。

 わたくしがポニーに慣れてくると、モンタニエ先生は手綱をわたくしに渡してくれた。


「ポニーは賢いので、怖がっている相手はよく分かります。怖がらずに、堂々として乗っていてください」

「は、はい」


 緊張するが、平常心と心の中で唱えてポニーを自分で歩かせる。途中で歩くのをやめて草を食べ始めてしまうポニーに困っていると、モンタニエ先生がすぐに助けに入ってくれる。


「この子はまだ幼いので、遊びたがるのですよ。辛抱強く、『進め』と言ってください」

「はい」


 ポニーに進めと言い続けて、少し歩いてくれるようになったところで、今日の乗馬の稽古は終わった。

 わたくしがポニーに乗っているのをオレリアさんと一緒に観察していたミカは、白い頬を薔薇色に染めていた。


「お馬さん、とてもかわいかったの。わたしの手から人参を食べたんだよ」

「よかったですね、ミカ」

「また来たいな」

「わたくしの乗馬の稽古のときには一緒に来ましょうね」


 乗馬の稽古はそれから週一回行われるようになった。


 夏の終わりには、ユリウス様とレティシア嬢の結婚式が行われた。

 結婚式は皇帝であるお父様と、皇后であるお母様の前で挙げられる。

 ユリウス様は真っ白なタキシードを来ていて、レティシア嬢はふんわりとしたスカートの純白のドレスを着ていた。


「ユリウス・ルクレール、そなたはレティシア・ロズベルクを妻とし、生涯愛し、健やかなるときも病めるときも共に生きることを誓うか?」

「はい、誓います」

「レティシア・ロズベルク、そなたはユリウス・ルクレールを夫とし、生涯愛し、健やかなるときも病めるときも共に生きることを誓うか?」

「誓います」


 誓いの言葉が述べられると、ユリウス様とレティシア嬢が婚姻届けにサインをする。

 それから指輪の交換をして、誓いのキスをした。


 わたくしはお二人の結婚を祝って拍手をし、お二人が退場するときには花びらを撒いた。

 これからユリウス様とレティシア嬢はルクレール公爵領に帰って、そちらで披露宴をするのだ。そこにはわたくしは招かれていないが、小さなころから知っているラファエルお兄様の親友のユリウス様と、わたくしの学友のセリーヌ嬢の姉であるレティシア嬢の結婚式を見ることができて本当によかったと思っていた。

 ユリウス様はアカデミーには進学せずに、レティシア嬢と一緒に領地に住んで、領地を治める勉強をするようだった。


 二人の門出が素晴らしいものになるように、わたくしは祈っていた。


 秋の始めにはわたくしのお誕生日がある。

 わたくしもこの日で八歳になる。

 もう八歳というべきか、まだ八歳というべきか。


 お誕生日のお茶会の招待状は、わたくしはサインだけは全員分して、アルベルト様とリヴィア嬢とセリーヌ嬢の分は自分で書いた。十五歳で社交界デビューするころには、全部自分で書かなければいけなくなっているのだろう。

 それを思うと、少し憂鬱な気もしてくる。

 招待状は手書きで出すのが礼儀とはいえ、わたくしは皇女なので招待客が多いのだ。これを全部自分で書くとなるとかなり大変だろう。


 招待状が無事に出来上がって、お誕生日のお茶会も近付いてきたころに、わたくしはリヴィア嬢とセリーヌ嬢とお茶をしていた。

 お茶菓子はわたくしのお誕生日のお茶会に出す候補が並んでいる。


「モンブランは外せませんよね。スイートポテトも出したいです。南瓜はプリンにするか、パイにするか悩んでいるのです」

「南瓜のパイも美味しいですよね」

「でも、モンブランとスイートポテトと南瓜のパイでは、重すぎるかもしれません」


 リヴィア嬢とセリーヌ嬢の意見を聞きながら、わたくしはお茶会当日のメニューを決めていく。

 皇族のお茶会は豪華なので何種類ものお茶菓子が出て、サンドイッチやキッシュの軽食も出される。

 南瓜のプリンとパイで迷って、わたくしは南瓜のプリンを選んだ。


「これはなんですか?」


 リヴィア嬢がナッツのように小皿に入れられている炒った南瓜の種を摘まんで齧ってみている。ナッツのようにぽりぽりと齧れるそれも、わたくしはお茶会で出そうと思っていた。


「お祖父様とお祖母様のお屋敷に行ったら、これの入ったパンが出されたのです。とても美味しくて、聞いてみたら南瓜の種を炒ったものだと教えてもらいました」

「南瓜の種が食べられるのですね」

「ナッツのような食感でとても美味しいです」

「ヒマワリの種も食べられるようです。お祖父様とお祖母様のお屋敷では、宮殿では食べられないものを食べられます」


 わたくしがお祖父様とお祖母様の話をすると、リヴィア嬢もセリーヌ嬢も興味深く聞いてくれていた。


「南瓜の種とヒマワリの種とクルミとレーズンとクコの実を一緒に出すのはどうでしょう?」

「色んな味が一度に楽しめますね」


 リヴィア嬢が案を出してくれて、ミックスナッツとして南瓜の種とヒマワリの種とクルミとレーズンとクコの実を一緒に出すことも決まった。

 お誕生日のお茶会のメニューが決まって安心していると、同席していたミカが椅子の上でお腹を撫でていた。


「もう食べられません」

「え!? ミカ、全部食べたのですか?」

「美味しかったから……」


 ミカのことは前々から食いしん坊だと思っていたが、味見用のモンブランとスイートポテトと南瓜のプリンと南瓜のパイを全部食べてしまったようだ。よく見ると、ミカのために取り分けてあった南瓜の種も全部なくなっている。


「ミカ、食べすぎです」

「美味しかったです。全部美味しかったです」

「ミカエル殿下は食いしん坊なのですね」

「たくさん食べられましたね」


 リヴィア嬢もセリーヌ嬢もお腹をぽんぽこりんにしているミカに、くすくすと笑っていた。

読んでいただきありがとうございました。

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