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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
四章 セラフィナと音楽

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23.ラファエルとアンリエットの新婚旅行

 結婚式が終わってから、アンリエットお義姉様は皇帝一家が住む棟に引っ越してきた。

 一緒に暮らせるようになって一番喜んだのはミカかもしれない。


「アンリエットお義姉様がご一緒。アンリエットお義姉様、わたしが案内します」


 張り切って皇帝一家の住む棟の案内を買って出たミカは、アンリエットお義姉様の手を引いて、連れ回していた。


「これが、わたしの犬のエリカです」

「よろしくお願いします、エリカ」

「こっちが子ども部屋のお庭です」

「こちらでいつも遊んでいるのですね」

「ここがティールーム、こっちがお姉様のお部屋、こっちがお兄様のお部屋……」


 一生懸命案内したところで、ミカにも報告があった。

 ラファエルお兄様がお父様とお母様の代わりに報告してくれる。


「ミカエル、一人部屋に移れることになったよ」

「わたし、一人部屋に移れるのですか? もう大人ですね」

「まだ大人ではないけれどね」


 苦笑しながらもラファエルお兄様は自分の部屋をミカに譲った。

 ラファエルお兄様はアンリエットお義姉様と隣同士の部屋になるようだ。

 部屋移動が行われて、ミカはわたくしの隣の部屋に、ラファエルお兄様とアンリエットお義姉様は少し離れた部屋に住むことが決まった。

 住居が決まってから、ラファエルお兄様とアンリエットお義姉様は新婚旅行に出かけることになった。新婚旅行先はルクレール公爵領だった。

 お祖父様とお祖母様に結婚の報告をしてくるのだ。


「お兄様はいいな。わたしも行きたい」

「新婚旅行について行くのはおかしいですよ。ミカ、我慢しましょう」


 羨ましがるミカをわたくしが宥めていると、ラファエルお兄様とアンリエットお義姉様が提案してくれた。


「ミカエルとセラフィナも来たらどうかな? お祖父様とお祖母様は二人にも会いたがるだろうし」

「そうですわ。アルベルト様についてきてもらうというのはどうですか?」


 新婚旅行だから二人の邪魔をしないようにしなければいけないと思っていたので、ラファエルお兄様とアンリエットお義姉様の言葉はわたくしたちにとっては驚きだった。


「いいのですか?」

「わたし、行きたいです」


 アルベルト様に即連絡して、日程を決めて、ルクレール公爵領に行くことになった。

 宮殿から馬車に乗って列車の駅まで行く。列車に乗り継いで、ルクレール公爵家まで行くと、ユリウス様とルカ様が迎えてくれた。


「ようこそ、ラファエル殿下アンリエット皇太子妃殿下、セラフィナ殿下、ミカエル殿下、アルベルト様」

「お兄様はもうすぐ結婚するのです。お祝いに来てくれたのですか?」

「今日は違うよ、ルカ。ラファエル殿下とアンリエット皇太子妃殿下と、セラフィナ殿下とミカエル殿下は、お祖父様とお祖母様に会いに来たんだ」

「そうでしたか! 勘違いしました」


 身分の高いラファエルお兄様が結婚するまで待っていたので、ユリウス様とレティシア嬢の結婚式はまだである。二人の結婚式も華やかになりそうで、わたくしは期待している。


「結婚式にはぜひおいでくださいね」

「ルクレール公爵領で結婚式をするのか?」

「帝都で皇帝陛下と皇后陛下の御前で式を挙げて認めていただいてから、ルクレール公爵領に戻って披露宴を開くつもりです。ラファエル殿下とアンリエット皇太子妃殿下とセラフィナ殿下とアルベルト様は帝都での式に参加してください」

「喜んで参りますわ。おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 地方に領地を持つルクレール公爵家は、結婚式は帝都で皇帝であるお父様と皇后であるお母様の御前で挙げて、披露宴はルクレール公爵領で挙げるようだった。どちらにも参加したいが、わたくしは自由に動ける範囲がまだ狭い。

 今回も、ラファエルお兄様とアンリエットお義姉様が一緒で、アルベルト様まで保護者として来てくれたから旅行が実現したのだ。


 ルクレール公爵家で歓迎を受けていると、ユリウス様が声を潜めてラファエルお兄様とアルベルト様に囁いているのを聞いてしまった。


「ストラレイン王国とカラステア王国は、ミカエル殿下を狙っているようなのです」

「ミカエルを?」

「はい。ミカエル殿下と自国の王族を結婚させようと画策しています」

「ミカエル殿下はまだ五歳ですよ」

「セラフィナ殿下がお生まれになったときからずっと結婚の申し込みをしていた常識知らずなところがありますから、ミカエル殿下がまだ五歳でも構わないのでしょう」


 わたくしが生まれたときから結婚するように狙っていて、わたくしがアルベルト様と婚約したので諦めたように見えていたストラレイン王国とカラステア王国だが、今はミカを狙っている。

 その由々しき事実にわたくしはミカの手をぎゅっと握る。

 よく事態が分かっていないミカは、金色の目を丸くしていた。


 ルクレール公爵家の食事は帝都の宮殿と同じくらい贅沢なもので、わたくしたちはそれを美味しくいただいた。泊まる部屋は新婚のラファエルお兄様とアンリエットお義姉様が一緒で、わたくしとミカが一緒で、アルベルト様が一人部屋だった。

 お風呂に入って髪を乾かすと、ミカがわたくしのベッドに潜り込んでくる。


「ミカ、ちょっと暑いです」

「わたし、寂しいの。お姉様一緒に寝て」

「仕方がないですね」


 旅行中は環境も違うのでミカも慣れないのだろう。最近移動した一人部屋では眠れているようなので、旅行中といういつもと違う状況だからだと思ってわたくしは受け入れる。

 ミカはわたくしにぎゅっと抱き着いていた。


「わたし、どこか遠いところに行かされるの?」


 眠る前にミカが小さな声で呟いたのを聞いて、ミカもストラレイン王国とカラステア王国の話を聞いていたのだと察する。ミカにはよく分からなかったかもしれないが、ラファエルお兄様とユリウス様とアルベルト様の表情から、何かが起きていることは感じているようだった。


「お父様とお母様はミカが大好きですよ。ミカをどこか遠くに行かせたりしません」

「本当に?」

「わたくしのときも、遠くの国に来てほしいとお話があったのですが、お父様もお母様もそれを断って、わたくしはアルベルト様と婚約しました」

「お姉様のときもあったの?」

「はい。でも、大丈夫でしたよ」


 わたくしのときもお父様とお母様が守ってくれたことを告げると、ミカはやっと安心したようだった。少し汗ばんだミカの額にキスをして、お腹を優しくぽんぽんと叩いて宥める。ミカはしばらく微睡んでいたが、眠りに落ちていく。それにつられるように、わたくしも眠りに落ちた。


 翌朝、ミカはすっきり起きて来て、ルカ様と朝の散歩に出かけていた。

 朝食前の時間は、まだ日が高くなくて外を歩くのもそれほど暑くない。

 ルカ様とたくさんお喋りしたのか、帰ってきたミカは頬っぺたを赤くして興奮していた。


「ユリウス様の結婚式は、二回行われるの」

「帝都で式を挙げて、ルクレール公爵領で披露宴を挙げると仰っていましたね」

「ルカ様は結婚式に参列する衣装を仕立てたって言ってた」

「きっと素晴らしい衣装でしょうね」

「わたしは参加できないけれど、それなら『おめでとう』のお手紙を書いたらどうですかって、ルカ様に言われたの。わたし、お手紙を書こうと思う」


 これまでならば参加できないことに拗ねてしまったり、寂しくなってしまったりしていたミカだったが、ルカ様はそういうミカの気持ちも掬い上げてくれたようだった。


「お手紙を書くのはいい考えですね。帝都の結婚式のときに届くようにお花も添えたらどうですか?」

「お花! わたし、お花も添える」


 ミカが参加できないことをがっかりするよりも、前向きに自分のできるお祝いをしようと考えていることがわたくしは嬉しかった。

読んでいただきありがとうございました。

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