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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
四章 セラフィナと音楽

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20.ミカエルの誕生日と音楽会

 初夏のミカの誕生日に向けて、わたくしはミカからお願いをされていた。


「わたし、おたんじょうびにおねえさまとリヴィアじょうとセリーヌじょうとうたいたいの。ダニエルもまねいて、おんがくかいをしたいの」


 その件に関しては、わたくし一人では返事はできなかった。


「まずはお父様とお母様に音楽会を開いていいか許可を取りましょう。それから、リヴィア嬢とセリーヌ嬢にお願いしてみましょう」

「おねえさまからきいてくれる?」

「いいですよ。それがミカへのお誕生日お祝いになるのならば」


 わたくしはまず、その日の夕食の席でお父様とお母様に聞いてみた。


「ミカがお誕生日にわたくしとリヴィア嬢とセリーヌ嬢で音楽会を開きたいといっているのです。そこに学友のダニエル殿も招きたいと言っています」


 わたくしの報告に、お父様とお母様が頬を緩める。


「ミカエルは歌が本当に好きだからね」

「セラフィナがリヴィア嬢とセリーヌ嬢の演奏で歌っていたのが羨ましかったのでしょう。ミカエルのお誕生日ですから、ミカエルの願いを叶えてあげたいですね」

「ダニエルも招けるようにしよう」


 お父様とお母様からの許可はあっさりと下りた。話を聞いていたミカが両手を上げて喜んでいる。


「わたし、がんばってうたいます! きいていてください」

「楽しみにしているよ、ミカエル」

「頑張ってくださいね」


 話がまとまったので、今度はわたくしがリヴィア嬢とセリーヌ嬢に事情を書いた手紙を送った。リヴィア嬢とセリーヌ嬢は宮殿に来てくれて、ミカとわたくしと練習をしてくれることになった。


「わたくし、有名音楽家の新曲の楽譜を手に入れました。少し長くて難しいですが、これを歌うのはどうでしょう?」

「難しそうですが、わたくし、バイオリンを頑張ります」


 セリーヌ嬢が持って来てくれた有名音楽家の新曲の楽譜を、わたくしは受け取る。それは人数分用意されていた。


「わたし、がくふがよめます。このうたもうたえるとおもいます」

「ミカエル殿下はわたくしと一緒に音取りをしましょう」

「おととりですか?」

「わたくしがピアノで歌の旋律を弾いていくので、それに合わせて歌って、旋律を覚えてください」

「はい!」

「セラフィナ殿下もご一緒に」


 二歳からピアノを弾いているセリーヌ嬢はさすが、こういうことにも慣れているようだ。リヴィア嬢が楽譜を見て練習している間に、わたくしとミカをピアノのそばに立たせて、歌の旋律を弾いてくれる。

 わたくしとミカはそれに合わせて練習をした。


 リヴィア嬢とセリーヌ嬢はほぼ毎日宮殿に来てくれた。

 勉強の合間を縫って練習をしていたが、わたくしたちは少しずつ上達して、難しい有名音楽家の新曲も演奏できるようになっていた。

 音楽の勉強になるということで、オトテール先生も指導についてくれていた。


「リヴィア嬢のバイオリンソロはもっと音を響かせて。セリーヌ嬢は伴奏として、もっと歌声に寄り添って」

「はい、オトテール先生」

「そのように致します」


 リヴィア嬢もセリーヌ嬢もオトテール先生の指導に一生懸命ついて行っていた。


「この音楽家は、わたしの弟子なのですよ。立派に成長していて嬉しいです」


 休憩時間にはオトテール先生は有名音楽家の話もしてくれた。


「わたしが音楽院で指導をしていたころの生徒で、そのころからとても才能がありました。今は有名な音楽家になっていて、わたしは師として誇らしいです」

「オトテール先生のお弟子さんだったのですね」

「オトテール先生はそんなすごい方だったのですね」


 話を聞いてセリーヌ嬢もリヴィア嬢も驚いていた。


 ミカの誕生日には、ベルンハルト公爵家、アルマンドール公爵家、ルクレール公爵家、ロズベルク侯爵家、ギマール先生とダニエル殿が招かれて、音楽室に集った。

 わたくしとミカとリヴィア嬢とセリーヌ嬢は一列に並んでお辞儀をして、リヴィア嬢がバイオリンを構え、セリーヌ嬢がピアノの椅子に座った。

 オトテール先生が指揮をしてくれて、演奏会が始まる。


 有名音楽家の新曲はかなり長く、演奏するのも歌うのもとても大変だった。それでも何とか形にして歌い上げると、聞いていた方々から大きな拍手が送られた。

 ほっとして全員で並んでもう一度お辞儀をする。


 オトテール先生も一緒にお辞儀をしてくれていた。


 音楽会が終わると、お茶の時間になる。

 一番広いティールームで皇帝一家とベルンハルト公爵家、アルマンドール公爵家、ルクレール公爵家、ロズベルク侯爵家、ギマール先生とダニエル殿がお茶をする。

 ミカは席につく前に、ダニエル殿とルカ様に囲まれていた。


「ミカエル殿下、とても上手でした」

「歌が上手で驚きました」

「ありがとうございます。お姉様とリヴィア嬢とセリーヌ嬢とたくさん練習しました」


 褒められてミカは誇らしげな顔をしている。

 五歳になったミカは、以前よりも大人びた話し方になっていた。


「ミカエル、素晴らしかったよ。セラフィナも、リヴィアも、セリーヌも素晴らしかった」

「よく頑張りましたね。あんなに難しい曲を間違えずに歌って」


 お父様もお母様もわたくしたちを褒めてくださっている。


「オトテール先生が指導をしてくれたのです」

「オトテール先生の指導は分かりやすくて、とても勉強になりました」

「バイオリンの腕が上がった気がします」


 わたくしとセリーヌ嬢とリヴィア嬢が言えば、オトテール先生が笑顔で言葉を添えてくれる。


「セリーヌ嬢は幼いころからピアノを習っていたので、最初からとても上手でした。リヴィア嬢のバイオリンもその年齢とは思えない上達ぶりでした。セラフィナ殿下とミカエル殿下は声質が似ているのでしょうね、二人で歌うと響き合ってとても美しかったです」


 指導してくれたオトテール先生の手放しの称賛に、わたくしもミカも胸を張る。

 お茶の席に着くと、横に座っていたアルベルト様がわたくしに囁きかけて来た。


「今日の演奏もとても上手だったよ。わたしは、わたしのために歌ってくれた誕生日プレゼントの歌が一番好きだけどね」

「あのときよりも上達したはずなのです」

「それでも、わたしのために歌ってくれたということは特別なんだよ」


 アルベルト様の言葉に頬が熱くなってしまう。

 アルベルト様にとっては、今回の難しい曲よりも、アルベルト様のお誕生日お祝いに歌った簡単な曲の方が心に響いたようだ。

 音楽とはそういうところがあるのかもしれない。

 ひとを感動させる音楽というのは、曲の難しさではなくて、歌う相手の気持ち次第なところがあるのかもしれないとわたくしは思っていた。


「セラフィナとミカエルが歌っているのを聞くと、セレナと出会ったころのことを思い出すね」

「そうですか? ヘリオドール様はわたくしの歌を気に入ってくださっていたのですか?」

「セレナを初めて見たのは、学園の温室でのことだった。セレナは花を見ながら、歌を口ずさんでいたよ」

「まぁ!? そんなところを見られていたのですか!?」

「とてもいい声で、楽しそうで、こんな女性とならば楽しく過ごせるのではないかと思った」


 お父様とお母様の出会いも、歌が関係していた。

 お父様はお母様の歌を聞いて、お母様に興味を持ったようだった。


「それから、音楽の授業を専攻している生徒が演奏会を開くというので、見に行ってみたら、セレナが歌っていた。セレナの歌はとても美しかった」

「演奏会にも来てくださっていたのですか!?」

「観客が多かったから、セレナは気付いていなかっただろうけれど、あの場にわたしもいたのだ」


 お父様はお母様に気付かれていない時期から、お母様のことを気にしていて、演奏会に行っていたようだ。それはお母様も初耳のようで顔を赤くしていた。


「セラフィナもミカエルも学園では声楽を専攻して、セレナのように歌うのかと思ったら感慨深かったよ」

「セラフィナとミカエルが歌を好きな子に育って、わたくしも嬉しいです。子どもが生まれたら、一緒に歌うのが夢でした」


 お父様とお母様が寄り添っていい雰囲気になっているのを見ていると、アルベルト様がわたくしの方を見ていた。


「セラフィナは音楽では声楽を専攻する予定なのかな?」

「わたくしは、できれば声楽を学びたいです」

「わたしはピアノを弾けるよ。セラフィナのために伴奏ができる」

「アルベルトお兄様と歌うのもいいですね」

「今度わたしの伴奏で歌ってくれる?」

「はい!」


 アルベルト様の伴奏で歌うのも楽しそうだ。

 わたくしはまだ学園で何を専攻するかは決まっていないが、できることならば声楽は続けたいと思っていた。


読んでいただきありがとうございました。

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