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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
四章 セラフィナと音楽

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18.忙しい春

 季節が春になって、暖炉も使わなくなった。

 ラファエルお兄様とアルベルト様は学園の卒業やアカデミーの入学に向けて忙しいようで、あまりわたくしとは時間が合わなくなってしまった。

 わたくしはわたくしで、お母様と一緒に衣装を誂えるために仕立て職人を呼んでいた。


 これからラファエルお兄様とアルベルト様の誕生日のお茶会が開かれて、ラファエルお兄様とアルベルト様は皇族の成人の儀式にも参加される。

 わたくしはラファエルお兄様とアルベルト様のお誕生日のお茶会には参加するし、ラファエルお兄様とアルベルト様の皇族の成人の儀式にも参加することが決まっていた。

 それだけではない。わたくしは学園の卒業パーティーにアルベルト様のパートナーとして参加しなければいけないし、学園の卒業式が終わったら、ラファエルお兄様とアンリエットお義姉様の結婚式にも参加しなければいけない。


 目が回るほど忙しい春と夏が来るのだ。

 その準備は万端にしておかなければいけなかった。


「ラファエルとアルベルト殿のお誕生日のお茶会のドレスは同じものでいいですね」

「はい」

「何色にしますか?」

「アルベルトお兄様の目の色に似た薄茶色にします」

「二人の成人の儀式に参加するときのドレスは白と決まっています」

「はい」

「アルベルト殿の卒業式のパーティーに出席するドレスは何色にしますか?」

「それは、お茶会と同じドレスではいけませんか?」

「季節が春と夏で違いますし、あまり同じドレスを着るというのも感心しませんね」


 お母様に助言してもらいながら、わたくしは採寸をしてドレスを誂えてもらう。

 アルベルト様の卒業式のパーティーに出席するときのドレスは、葡萄色に決まった。

 本来ならばわたくしやアルベルト様の目の色や髪の色を使うのだろうが、アルベルト様の目の色はお誕生日のお茶会で使ってしまうし、わたくしの髪の色は銀色で目の色は金色、アルベルト様の髪の色も金色と、ドレスに向く色ではない。仕方なく、別の色を選ぶことになって、葡萄色に決めたのだ。


 成人の儀式に参加するときには、わたくしは白いドレスを着ると決まっているようだった。

 ラファエルお兄様の結婚式に参加するときにも、同じドレスでいいとお母様は判断した。


「本来ならば花嫁以外が白を着るのはタブーなのですが、セラフィナはまだ幼いですし、白を着ても問題はないでしょう」

「分かりました」


 お母様がいなければわたくしはドレスの色や形を決められなかったので、お母様が一緒にいてくれてとても心強かった。


 ラファエルお兄様のお誕生日のお茶会は盛大に開かれた。

 ラファエルお兄様はこの日、成人するのだ。皇太子の成人の日なので国を挙げて祝われることとなった。


 お父様がお茶会では挨拶をした。


「ラファエルも今日で成人となる。これまでラファエルが健康に成長できたのは、たくさんのひとたちのおかげだと思っている。ラファエルは学園を卒業したらアカデミーに進学するが、その前にアルマンドール公爵家のアンリエットと結婚する。これからもラファエルをよろしく頼む」


 お父様の挨拶が終わると、自然と「皇帝陛下万歳!」「ラファエル殿下、おめでとうございます!」という声が上がっていた。

 席に着くとラファエルお兄様にアルベルト様が話しかけていた。


「ラファエルも成人か。わたしもすぐに成人するけれど、先を越された気分だな」

「アルベルトの成人のときには、盛大に祝うよ」

「ありがとう。そして、おめでとう、ラファエル」


 アルベルト様がラファエルお兄様の学友として宮殿に来て、今世で会ったのはわたくしが生まれて数か月のころになる。それから七年以上、アルベルト様とラファエルお兄様は親交を深めて来た。

 アルベルト様はラファエルお兄様の親友と言えるのではないだろうか。


 親友に祝われてラファエルお兄様は嬉しそうに金色の目を細めていた。


 数日後に、アルベルト様のお誕生日が祝われた。

 お茶会に参加すると、アルベルト様はわたくしの手を取って、わたくしを横に立たせた。


「皆様、本日はわたしの誕生日に来てくださってありがとうございます。わたしも今日、成人の年を迎えました。この年まで無事でいられたのも、皆様のおかげです。思えば十歳のときに馬車を襲われて、死を覚悟したこともありました。あの後、わたしはわたしを庇って亡くなったメイドのことばかり考えていました。メイドのことは生涯忘れることはないと思っていますが、わたしを救い出してくれたのは、婚約者となってくれたセラフィナ殿下です。これからもセラフィナ殿下と共に、一年一年を大事に過ごしていきたいと思います」


 アルベルト様の挨拶はクラリッサのことにも触れていて、本当にアルベルト様の心の中から出てきた言葉なのだろうと感じられた。

 わたくしの手を取って手の甲にキスをしたアルベルト様に、わたくしは頬が熱くなってしまったけれど、周囲の方々は「おかわいらしいこと」と微笑ましく見守ってくれた。


 今年は忙しくてラファエルお兄様にもアルベルト様にもお誕生日お祝いが準備できていなかった。

 そのことをアルベルト様のお誕生日のお茶会で席について謝った。


「わたくし、今年はお兄様とアルベルトお兄様のお誕生日のドレス、成人の儀式のドレス、卒業式のパーティーのドレス、お兄様の結婚式のドレスと、誂えるのに忙しくて、お兄様とアルベルトお兄様のお誕生日お祝いを準備できていません。申し訳ありません」

「気にしなくていいのに」

「それなら、セラフィナ、わたしたちのために一曲歌ってくれない?」


 アルベルト様の提案にわたくしは目を丸くする。

 歌うことがお誕生日プレゼントになるだなんて思わなかった。


「リヴィア嬢のお誕生日でセラフィナはリヴィア嬢とセリーヌ嬢の演奏に合わせて歌ったよね。とても素晴らしかった。あれをミカエルも聞きたがっていると思うから、宮殿の音楽室で、披露してくれないかな?」

「そんなことでいいのならば、させていただきます!」


 ミカにはわたくしたちの演奏を聞かせたかったし、リヴィア嬢もセリーヌ嬢も協力してくれるだろうから、わたくしは宮殿の音楽室での演奏に乗り気になっていた。


 近くの席に座っているリヴィア嬢とセリーヌ嬢にお願いしに行く。


「アルベルトお兄様のお誕生日お祝いに、歌ってほしいといわれました。せっかくですから、ミカにも聞いてほしいので、リヴィア嬢とセリーヌ嬢に演奏してほしいのですが、お願いできますか?」

「わたくしも、ミカエル殿下にお聞かせしたいと思っていました。ぜひ協力させてください」

「わたくしも協力いたします」


 快く協力を申し出てくれたリヴィア嬢とセリーヌ嬢に感謝する。

 日程は後で決めるとして、宮殿の音楽室で小さな演奏会ができそうだった。


 お茶会には音楽隊が呼ばれていて、その一角で踊っているひとたちがいた。

 アルベルト様がわたくしに手を差し伸べる。


「セラフィナ、踊ってくれる?」

「わたくし、踊っていいのですか?」

「卒業式のパーティーで踊るだろうから、練習しておかない?」

「そうですね。練習しておきたいです」


 ダンスは習っていたが、アルベルト様のような体の大きな男性とは踊ったことがない。わたくしはアルベルト様に手を引かれて踊りの輪に入って行った。

 アルベルト様とは体格差があったけれど、リードがとても上手で、踊りにくいことは全くなかった。むしろ踊りやすくて安心した。

 一曲踊って、席に戻ろうとすると、ラファエルお兄様が待ち構えていた。


「アルベルトはいつも抜け駆けする。わたしもセラフィナと踊りたいんだからね!」

「アンリエット嬢はいいのかな?」

「アンリエット嬢とはいつも踊っているから。セラフィナとはこういう場所でしか踊れないからね」


 少し拗ねたようなラファエルお兄様に、アルベルト様は笑いながらわたくしを託した。

 ラファエルお兄様もリードが上手で踊りやすかった。

読んでいただきありがとうございました。

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