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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
四章 セラフィナと音楽

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15.ルクレール公爵家の祖父母とハーブティー

 ルクレール公爵家のお祖父様とお祖母様に会う日は、学園の冬休みの終わりごろに決まった。

 ルクレール公爵領に行くので、わたくしはワクワクしながら荷造りをしていた。

 お祖父様とお祖母様はルクレール公爵領の外れの方で静かに静養していらっしゃるとのことだった。

 まだ一度も会ったことのないお祖父様とお祖母様。

 父方のお祖父様とお祖母様に関しては、もう会うことはないだろうから、母方のルクレール公爵家のお祖父様とお祖母様だけがわたくしにとって会える祖父母だった。


 ミカもオレリアさんに荷造りをしてもらって、出かけるのを楽しみにしているようだった。

 ルクレール公爵領のお祖父様とお祖母様のお屋敷までは列車で半日、そこから馬車に乗り継いで半日かかる場所にある。

 一日で行けないので、馬車でルクレール公爵家まで行って、そこで一泊して、お祖父様とお祖母様のお屋敷まで行って、そこで一泊して、帰りもルクレール公爵家に一泊して、宮殿まで帰るという三泊四日の日程になっていた。


 皇帝であるお父様と皇后であるお母様がそれだけの日程を休むのは難しかったらしくて、お祖父様とお祖母様のお屋敷には気軽に行ける場所ではないということだけは確かだった。これまで行けなかったのも、四日間も皇帝と皇后が宮殿を空けることができなかったからだろう。

 わたくしのお願いを聞いて、お父様とお母様は何とか日程を空けてくれた。


 ルクレール公爵家のお祖父様とお祖母様に会う日、わたくしとミカとラファエルお兄様とお父様とお母様は早めに朝食を終えて、馬車に乗って列車の駅まで行った。

 列車の個室席に乗って、ミカとわたくしが窓側で、お父様とお母様が真ん中に座って、ラファエルお兄様がお母様の隣に座った。


 ミカは列車に乗るだけで興奮している。


「おねえさま、おそとがみえるよ! あそこ、うまがいる!」

「馬が馬車を引いていますね。わたくしたちの馬車も、馬が引いていたのですよ」

「おにいさま、パンをうっているおみせがあるよ」

「美味しいパンかなぁ」


 列車が動き出す前から帝都の様子を見てはしゃぐミカに、わたくしもラファエルお兄様も微笑ましく答えていた。

 列車が動き出すと、ミカは窓にへばりつくようにして外を見ていた。


 昼食の時間になると、持ってきていたお弁当を食べる。

 お弁当はサンドイッチだったが、わたくしとミカには食べやすいように小さいものが入っていて、お父様とお母様とラファエルお兄様には大きめのサンドイッチが入っていた。

 ラファエルお兄様が水筒からカップに紅茶を注いでくれて、それぞれにサーブしてくれる。


「ありがとう、おにいさま」

「ありがとうございます、お兄様」


 お礼を言ってわたくしとミカは食べ始める。


「ミカ、こちらがクリームチーズとジャムのサンドイッチですよ。最後にしましょうね」

「はい、おねえさま」


 ミカが食べるのを見守りながら、わたくしもサンドイッチを食べていた。

 食べ終わると、眠ってしまったミカをお父様が抱っこしていた。


 ルクレール公爵領にはお茶の時間の前には着いた。

 ルクレール公爵家に馬車で行くと、ユリウス様とルカ様と伯父様と伯母様が迎えてくれた。


「お祖父様とお祖母様に会われるのですよね?」

「こちらでお迎えできるように待っていました」


 ルクレール公爵家では、お茶をして、夕食を食べて、その日は泊まった。

 わたくしとミカはお母様と同じ部屋で、お父様とラファエルお兄様が同じ部屋になった。

 お母様と一緒に寝るのは、怖い夢を見て部屋に走って行ったとき以来だったので、嬉しくなってしまう。ミカもはしゃいでいる様子だった。


 お風呂に入って暖炉で髪を乾かしてからベッドに入る時間になると、ミカがもじもじしながらお母様に言っている。


「わたし、もうおねしょをほとんどしなくなったの」

「それは偉いですね」

「よるはオムツだけど、おかあさまといっしょにねたいの」

「今日だけは特別ですよ」


 お母様がミカをベッドに招いて、ミカが嬉しそうにベッドに入って行く。

 ベッドで横になったお母様にミカが一生懸命話していた。


「わたし、うたがじょうずっていわれるの。おかあさまにこもりうたをうたってあげる」

「それはよく眠れそうです。お願いします」


 ミカの子守唄を聞きながら、わたくしも隣のベッドで健やかに眠った。


 翌朝、朝食を食べるとルクレール公爵家の皆様に送り出されて、わたくしたちは馬車に乗ってお祖父様とお祖母様のお屋敷まで向かった。馬車に半日揺られているのはお尻も腰も痛くなるし大変だったが、何とかお茶の時間の前には辿り着くと、宮殿の煌びやかさとは全く違う、庭も野草やハーブが植えてある、牧歌的なお屋敷だった。

 お屋敷の中に入ると、使用人たちが迎えてくれる。


「ようこそいらっしゃいました、皇帝陛下御一行様。ご主人様と奥様はティールームでお待ちです」


 執事長のような老年だが背筋の伸びた男性が告げて、わたくしたちはティールームに招かれた。

 ティールームには銀髪の女性と、灰色の髪の男性が座っていた。わたくしたちが入ってくると、立ち上がって歓迎してくれる。


「皇帝陛下、セレナ、よく来てくださいました」

「そちらはラファエルですか? 大きくなって。それと、セラフィナとミカエルだったでしょうか? セラフィナはセレナの小さなころにそっくりです。ミカエルはラファエルと皇帝陛下にそっくりです」


 声をかけてくださるお二人がお祖父様とお祖母様のようだった。


「初めまして、セラフィナと申します」

「わたし、ミカエル! おじいさまとおばあさまですか?」

「ご挨拶をありがとうございます。わたしがあなたたちの祖父です」

「わたくしは祖母です」


 挨拶を返してくれる男性と女性。やはりこの方たちがわたくしのお祖父様とお祖母様だった。


「ラファエルです。小さいころには何度かお会いしたと思うのですが、幼かったのであまり記憶がなくて」

「ラファエルは今年成人するのですよね。とてもおめでたいことです」

「こんなに立派に大きくなって……。長年会えなかったわたくしたちを許してください」


 わたくしたちに近寄ってきて、お祖父様とお祖母様がハグをしてくれる。抱き締められて、わたくしはお祖父様とお祖母様に愛されている実感を得ていた。


「おじいさま、おばあさま、わたしはうたがじょうずです! ぜひきいてください!」

「落ち着きましょうね、ミカエル。お茶をしてからにしましょう」

「はい、おかあさま」


 今にでも歌い出しそうなミカをお母様が止めている。

 お茶がカップに注がれて、お茶菓子が出される。

 お茶菓子はアップルパイだった。


「このお茶、紅茶ではありませんね」

「庭のハーブから作ったハーブティーです」

「庭でハーブを育てるのが趣味になりまして。お口に合うといいのですが」


 お茶の色と匂いで紅茶ではないことは分かっていたが、お祖父様とお祖母様が作ったハーブティーだとは思わなかった。


「これに蜂蜜を少し入れると美味しいのです」

「やってみます」


 お祖父様に言われてわたくしはハーブティーに蜂蜜を入れてみた。爽やかな香りに蜂蜜のくどくない甘さがよく合う。


「とても美味しいです」

「おじいさまとおばあさま、おちゃがつくれるのですか?」

「そうですよ。庭のハーブを収穫して乾かして作るのです」

「体にもいいのですよ」


 ミカも興味津々で蜂蜜を入れてハーブティーを飲んでいた。

 お茶菓子のアップルパイもとても美味しく、わたくしたちは和やかにお茶をすることができた。


「義父上、義母上、お久しぶりです。最後にお会いしたのはラファエルが五歳のときだったでしょうか」

「皇帝陛下、長くお会いできなくて申し訳ありませんでした」

「夫の体調も安定していなかったので。でも、最近は落ち着いてきました」

「それならばよかったです。義父上と義母上には長生きしてもらわないと」


 お父様もお祖父様とお祖母様とにこやかに話している。

 実の両親とは関係が微妙なだけに、お父様にとってルクレール公爵家のお祖父様とお祖母様は特別なのかもしれないと思っていた。

読んでいただきありがとうございました。

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