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転生皇女セラフィナ  作者: 秋月真鳥
四章 セラフィナと音楽

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11.冬の庭

 ゆっくりと季節が過ぎていき、日々寒くなって、暖炉に火がともされることが多くなり、雪も降り始めた。雪が降ってもわたくしとミカは子ども部屋の庭にお散歩に出ていたが、わたくしは最近は子ども部屋の茂みに区切られた庭ではなくて、もっと広い宮殿の庭に興味があった。

 お母様の部屋から見える庭には、黄色が濃くて金色に見える薔薇が植えてあるのだという。その薔薇をいただいてアルベルト様にプレゼントしたことがあったが、そちらの方にも行ってみたい。

 わたくしがそう思っていると、マティルダさんとオレリアさんが話を通してくれたようだった。

 わたくしとミカは子ども部屋の区切られた庭ではなくて、宮殿の大きな庭に出る。

 冬場なので噴水の水は止まっていたが、噴水があり、その縁に雪が積もっている。

 とても広大な庭なので、わたくしとミカが行っていい場所は限られていたが、金色の薔薇の茂みも見ることができた。金色の薔薇は春に咲くので咲いてはいなかったが、これが金色の薔薇だと教えてもらうと、わたくしもアルベルト様のことを見ながら眺めることができた。


 お散歩にはエリカもついてきていて、いつもより広い庭を走り回っている。

 元気に走っては戻ってくるエリカに、最初はミカもついて行こうとしていたが、途中で諦めて、お散歩のときに持っている木剣を真剣な表情で振り始めた。

 室内では振ってはいけないことになっているので、外ではミカは木剣を振りたがるのだ。


「ダニエルもいっしょだったらよかったね」

「ギマール先生にお願いしてみたらどうですか? ミカはダニエル殿と雪で遊びたいのではないですか?」

「おねえさま、わたし、ダニエルとゆきであそびたい! ギマールせんせいにおねがいしてみる!」


 わたくしが提案すると、ミカは金色の目を輝かせて答えていた。


 部屋に戻ってから雪で濡れたマフラーや手袋やコートを暖炉のそばで乾かしていると、今日の授業のためにバロワン先生がやってきてくれた。

 わたくしが机に着くと、今日の授業が始まる。

 子ども部屋にはギマール先生が来てくれていて、ダニエル殿とミカが一緒に授業を受けているだろう。


「今日は宮殿の子ども部屋の庭ではない広い庭に出ました。宮殿の庭はとても広くて、端の方が見えませんでした」

「この宮殿はとても広いですからね。厩舎と牧場もありますし、小さな森もあります。小川が流れている場所もあります」

「宮殿の敷地内にですか?」

「はい。セラフィナ殿下はお誕生日にベルンハルト公爵家からポニーをもらいましたよね。そのポニーに乗れる場所もありますよ」


 そうだった。

 わたくしはお誕生日にベルンハルト公爵家からポニーをいただいたのだった。

 まだ馬に乗る練習はしていないのでポニーには会っていないが、会ったら名前を付けるように言われている。春生まれのポニーで、わたくしが乗れるようになるにはもう少し時間が必要とのことらしい。


「ベルンハルト公爵領は苺や果物がよく採れると聞いていますが、馬の産地でもあるのですか?」

「馬の産地はどちらかといえばルクレール公爵領ですね。ルクレール公爵領は牛や馬などを育てる牧畜が盛んで、ベルンハルト公爵家はルクレール公爵家からセラフィナ殿下にプレゼントするためにポニーを買ったのだと思いますよ」


 わたくしはこの国の地理を習い始めていたが、まだ細かい領地の特産品まで把握していない。

 バロワン先生の教えてくれることはとても勉強になる。

 今日はその話から、各地の特産品の話になった。

 クラリッサだったころはそんな細かなことは教えてもらっていなかったので、わたくしはとても興味を持って勉強に挑めた。


 午前中の勉強が終わると、わたくしとミカで昼食をとる。

 ラファエルお兄様は学園に行っているし、お父様とお母様は忙しいので、昼食はほとんどの場合わたくしとミカの二人で食べていた。

 ミカが生まれて食事を共にできるようになるまで、わたくし一人で食べていたので、ミカがいてくれて寂しくなくなってとても嬉しい。

 マティルダさんという乳母はいるが、食事の介助はしてくれても、同席することはなかった。


 昼食を食べ終わるとミカはお昼寝をする。

 その間にわたくしはピアノの練習をしたり、マナーやダンスの勉強をしたりする。

 ミカが起きてくると一緒にお茶をして、オトテール先生の声楽の稽古を一緒に受ける。


 わたくしとほぼ同時期に声楽を始めているミカは、もう楽譜が読めたし、オトテール先生のピアノに合わせて正確に歌うことができるようになっていた。


「オトテールせんせい、わたしはさいきん、じぶんでうたをつくって、ミュージカルをえんじているのです」

「それは興味深いですね。作った歌を歌ってみてくれますか?」

「はい!」


 ミカがオトテール先生に話しかけて、最近作った曲を披露していた。

 短い曲だが、オトテール先生は興味を持ったようだ。

 五線譜を出して楽譜に書き起こしてくれる。


「ミカエル殿下が歌った旋律はこのようになります」

「わたしのうたが、がくふになった!?」

「これに伴奏をつけると、こうなります」


 オトテール先生はミカの歌も馬鹿にすることなく、真剣に聞いてくれて、ミカの歌に伴奏をつけてピアノで弾きながら歌ってくれた。

 ピアノの伴奏が付くと本物のミュージカル曲のようでわたくしも感動してしまう。


「オトテールせんせい、わたしもそのきょくをうたいたいです」

「ではピアノを弾くので歌ってください」

「はい!」


 オトテール先生のピアノ伴奏で自分が作った曲を歌わせてもらって、ミカはとても興奮していた。


「作曲をするのも悪くないかもしれません。ミカエル殿下には譜面の書き方を教えましょう」

「わたし、がくふがかけますか!?」

「自分の思う曲がどの音かピアノで確かめて、その音を譜面に書き起こしていけば、楽譜になりますよ。まずは、わたしが弾いた曲を譜面に起こすところから始めましょう」

「はい」


 オトテール先生が簡単な旋律を弾いて、ミカがそれを一生懸命楽譜に書き起こしていく。わたくしもその勉強をしたくなった。


「オトテール先生、わたくしにも譜面に書き起こす作業を教えてください」

「それでは、こちらにどうぞ」


 オトテール先生が五線譜の書かれた紙を渡してくれて、簡単な旋律を弾く。それを聞きとって、わたくしは五線譜に書き起こしていく。

 最初は聞き間違いや、書き間違いもあったが、練習していくうちにミカもわたくしも楽譜が書けるようになりそうだった。


 オトテール先生の授業を終えて、わたくしは自分の部屋に、ミカは子ども部屋に帰る。

 わたくしは夕食に備えてお風呂に入って髪を乾かして着替え、ミカも子ども部屋でお風呂に入れてもらって着替えて夕食の食堂に集まった。


 最近はお父様もお母様も夕食はご一緒してくださる。ラファエルお兄様も一緒だ。

 ミカは今日のオトテール先生の授業が衝撃的だったようで、お父様とお母様に興奮した様子で話していた。白く丸い頬が真っ赤に染まっている。


「きょうは、オトテールせんせいにわたしがつくったうたをうたったら、がくふにしてくれて、ばんそうもつけてくれたのです」

「それはよかったね」

「その曲をわたくしも聞いてみたいですわ」

「それに、きょくをがくふにするほうほうもおしえてもらいました」

「ミカエルは作曲家になれるかな?」

「今度一緒にその曲を歌いましょう」


 お父様もお母様も優しい眼差しでミカを見守り、言葉をかけていた。


「セラフィナは今日は子ども部屋の庭ではなく、宮殿の前庭に出たそうだね」

「はい。ミカとエリカと一緒に行きました。お母様の部屋から見える金色の薔薇の茂みを見ましたが、今は咲いていなかったので、春になって見るのが楽しみです」

「あの薔薇はヘリオドール様がわたくしのために植えてくれたのです」

「アルベルトお兄様にプレゼントしたことがありますが、とてもきれいな薔薇ですよね」


 お父様とお母様はわたくしのことも気にかけてくださっていた。


「セラフィナは学園には卒業のパーティーがあるのを知っているかな?」


 ラファエルお兄様に声をかけられて、わたくしは学園のことは詳しくなかったので、「いいえ」と答えると、ラファエルお兄様が教えてくれた。


「学園の卒業のパーティーには、自分のパートナーを招待するんだ。それは学園に所属していない人物でも構わない。多分、アルベルトから申し込まれると思うから、来年の夏には準備しておいた方がいいよ」

「パートナーって、その……一緒に踊ったりするパートナーですか?」

「そうだよ。わたしにとってはアンリエット嬢、ユリウスにとってはレティシア嬢だね。アルベルトはセラフィナと婚約しているから、セラフィナ以外をパートナーにすることはないよ」


 その話は初耳だったのでわたくしは驚いてしまった。

 来年の夏といえば、わたくしはまだ八歳になる前である。

 そんな年齢のパートナーを連れていて、アルベルト様は馬鹿にされたりしないのだろうか。


「わたくし、小さすぎませんか?」

「小さくても、アルベルトの婚約者はセラフィナだけだからね。アルベルトは間違いなくセラフィナを誘うと思うよ」


 学園の卒業パーティー。

 出てみたい気持ちはあるけれども、わたくしはこんなに小さくても構わないのかという不安もあった。

 卒業生は全員わたくしよりも十歳は年上だし、わたくしだけが浮いてしまうのではないだろうか。


「セラフィナ、一緒にドレスを選びましょうね」

「お母様、お願いします」


 少しでもアルベルト様に相応しいようにしなければいけないと、わたくしは思っていた。

読んでいただきありがとうございました。

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