第一章39 『マイのスキル7』
「今回はしっかり見張りをこなせたみたいだね」
「どうにかね」
僕らは朝ごはんを食べないので、ノールさんから昨日のあまりのスープをもらって、ちびちび飲む。
シャルは普通に朝食をとっている。
「朝ごはんを食べないと、体が温まらないわよ。マイは大きくならないですわ」
「仲間ができるたびにそれ言われると、もうなにも思わなくなるな」
「まあ、小さい方が可愛くていいと思いますわ」
余計なお世話だよとはスープを飲んでいたので言えなかった。
「じゃあ、確実片付けをして。いらない荷物はここに置いていこう」
「荷物を置いていくなんて初めてですね」
「できるだけ動きやすいようにね。荷物の周りにはマイが結界張ってくれるから大丈夫」
結界を張る。何もすることはないので、そのままユリオスのところまで。
「もうそろそろかな」
「嫌な雰囲気ですわ」
道端には剣や鎧などが転がっている。転がってる物が人間のものと思うと、気分が悪い。
「もう少しで、森が開ける。そこにいる」
「何度もの戦いで、そこだけ気が切り倒されたんでしょうね」
「そうですわ。討伐隊が編成されるごとにこの場所はどんどん大きくなっていくのよ」
木がなくなり、開けた場所に来た。
真ん中に座っているのは、家ほどもある巨体で、口が裂けており、頭には大きな角が生えている。
しかし、全体的に細く見える。
「また、お前か?」
「そうですわ。今回こそは、お前を地獄の果てに突き落としてやりますわよ」
「お前じゃない。そっちのチビだ」
ユリオスは僕を指して言う。
「久しぶり」
「久しいな。今回もあの迷信の聖水の実験か?にしては、あのクソジジイがみあたんねぇか」
師匠と何度かユリオスにはあったことがある。
「ど、どういうことですの?」
「あの迷信の聖水、前に師匠とユリオスに効くのか調べに行ったんだよね」
「知り合いだったと言うことですか?」
「それも違う。あわよくば殺そうと思ってたけど、聖水の効果の実験かな。実際聞いたんだけど、思っていたより効果が薄くて、改良するたんびに聖水をかけに行ったんだよね」
みんなが驚くのも無理はないか。
「殺されてもおかしくないってのに、聖水だけかけて、体調べてのこのこと帰っていくんだもんな。ほんと最初は驚いた。最初なんて、なんか水かけられたと思ったら、ダメな水だなって言って帰っていくんだもん」
「次来た時は、師匠と酒交わしてたっけ?」
「それはその後だよ、坊主」
「坊主じゃない。マイって呼べって何回言ったらわかるの?」
そろそろ潮時かと思っていたところ、ユリオスが言った。
「今回は、俺を殺しに来たか?」
「そう。道中、ユリオスの方まで行くことがあったら、殺してけって師匠に言われたからね」
ユリオスの殺気が一気に膨れ上がる。
ただの威嚇だと分かっていながらも、逃げ出したくなってしまう。
「お前の師匠ですら通せなかった俺の耐性を、お前が通せんのか?それとも、聖水が完成したのか?」
「聖水なんてない。お前を殺す。その準備が整ったから」
「かかってこい」
3人より一歩だけ前にいた僕の前にユウが出る。
「ユウ……」
「前衛は任せて」
「私もやりますわよ。本当に、倒せるんでしょうね」
「よく分かんないですけど、引けなそうですね」
シャルは双剣を抜き、ノールさんは散乱銃を構える。
「そう言えばさ、めっちゃ関係ないけど、シャルの双剣って、魔道具なんだね」
「絶対今話すことではないですわよ⁉︎」
「ははは。じゃあ、行くよ」
ユウが走り出す。
ユウの持っているスキル、素早さ上昇大により、どんどんユリオスとの距離を詰めていく。
ユリオスがユウを狙って振り下ろした腕はユウがあっさりと避けた。
シャルは、そのユウに振り下ろされた腕に飛び乗り、そこから切り掛かりに行く。ノールさんは、2人のいる場所から離れて、反対側から狙いを定めている。
自分は、ユリオスの出す魔法を結界で止め、みんなが進む邪魔をしないようにする。
「雷系魔法!だあぁぁぁっ‼︎」
ユウが剣に雷を纏わせて高く跳躍する。ユリウスの腹部に剣を突き立てた。
しかし、ギィィーンと剣がなるだけで、ユリオスには傷一つつけられない。
ノールさんも、何度か散乱銃を撃ち、当たってはいたが全く効いていない。
シャルは飛び乗った腕から、ユリオスの顔までたどり着いている。横から飛んできたユリオスの右手から身を守ろうとして、その拳に双剣をバッテンに重ねて受けたが、そのまま吹き飛ばされた。
そこから、ユウも左手で振り払われている。ノールさんは距離を取って、被害は受けていない。
「硬い。無理だ。マイ、お願い」
「お前の師匠でも無理だというのに、どうするというんだ?」
「さっきも聞いたよ。ユリオス」
研究して、これまでの魔法は全て詠唱を短くした。
このために。
「暴爆。大剣。氷弾。鎌鼬」
自分の後ろに魔法で作られた色々なものが浮かぶ。
そして、
「防御力、低下」
吹き飛ばされていたユウがユリオスに飛び掛かる。
もうユウは持っているもう一つのスキルでしっかり回復していた。
このために余計な魔法は放たず、最低限の結界だけを使っていた。
これで、物理が入る。
ユウに遅れて、自分の出した魔法も全てユリオスに向けて一気に放つ。
「よし!攻撃が入る」
ユリオスの腕に切り傷をつけたユウがそう言うと、シャルも双剣で襲いかかる。ノールさんもスナイパーを構えた。
「は、ははははは!結界」
しかし、僕の魔法は全てユリオスの結界によって止められた。その威力と防御力は相殺し、結界は割れて粉々になって地面に落ちる。
「面白い。面白いじゃねぇか」
耳障りな笑い声を含ませながら、そう言ってくる。
「防御力、上昇」
ユリオスの防御力が戻ってしまった。
「まさか、俺の魔法耐性を無視してくるようなものがいるとはな。それがあのジジイの弟子とは……面白い。面白い!」
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
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