第一章38 『マイのスキル6』
「残念ですね」
「逆ですわ。逆」
「逆というと?」
「全く使えないってことですわ」
そう。僕も驚いたが、全く使えない。
それどころか、
「石、どよね」
「石よりでてないですわよ」
「石以下か」
「えっと、ディスられてます?」
「私にもディスってるようにしか聞こえない」
「ですよね?」
うーん。これは説明するべきなのだろうか。
「ノールさんさ。狩の腕ってかなり……だよね?」
「そうですね。前一緒に旅した狩人たちの中では驚かれましたね。なんでそんなに近づいて動物とか魔物に気づかれないのかって」
それがほとんど答えみたいなもんなんだけどな。
「前にも言ったと思ったんだけど、ノールさんって魔力を普通の人よりも持ってる量が少ないんだよね」
「ああ。そんな話しましたね」
「それ、訂正。ノールさんは全く魔力を持っていない。これっぽっちも。物によって差はあるけど、石よりも少ないから探知魔法に全く引っかからないんだよ。だから、狩の時もそれが役に立ってるんだと思うんだよね」
「まさか……本当に石以下?」
「もっというと、空気に含まれてる魔力よりも少ないですわよ」
「俺は……空気以下?」
言わない方がよかったかな?
「そんなことありえるんですか?」
「うーん。ありえないね。まあ、それがあるから敵から攻撃を読まれないっていうのもある。だから、狩人は適職だったんじゃない?」
「肉を食べるためだけに着いた職が適職とは運がいいですね」
「まあ、どう捉えるかは別として、動機が思ったより……」
こんなに朝早い時間に全員揃ってしまった。
それにしては、何もやることがない。
「なんか無駄に全員揃ってるから何かやる?」
「鬼ごっことか?」
「わざわざ朝にやること?」
鬼ごっこなんて小さい時もろくにやったことないわ。
「俺は大抵狩りに行くんですけどね」
「それ、夜まで帰ってこれないやつじゃん」
「私は剣振ってる」
「私も同じですわ」
参考にならないな。
「マイは……ああ。そうだよね」
「寝てるね」
自分も参考にならない。
「各自何かやってますかね。俺は撃ってるんで」
「じゃあ、シャルは私に付き合って」
「分かったわ」
「……寝てよ」
「よくこの流れでサラッと言えたわね?」
「はい。じゃあ出発ね。今日中にユリオスの近くまで行って、明日討伐に向かうってことで。マイ。マップ見せて」
「はい」
魔法で地図の幻影を出す。
しっかり経路は乗っている。
「ありがとう。大体わかった。かなり強い魔族みたいだから、魔物を操ってることも考えられる。今日の野宿する場所では、マイが結界を張るとはいえ、交代で見張りを立てるよ」
「見張りか」
「大丈夫。マイの見張りの時は私も起きてるから」
「いつまで経ってもマイさんの見張りの信頼度は低いですね」
前に見張りを交代しながら野宿していた時に、うっかり寝てしまった。
その時に、魔物に食われかけてユウに助けられたことがあった。
「で、そのまま朝まで気づかずに寝ていた。らしい」
「らしいっていうのはどういうことですの?」
「本当にそんなことあったのか僕は知らないんだよね」
「よくそんな環境で寝れますわね」
「マイさんが見張りの時は、いつでも起きれるようにしとくのがおすすめです」
「つくづく信頼されてないよ」
出発してから時間が経ち、日も暮れてきた。
「ここら辺かな」
「ん?」
「この先行くと、少し危険かもしれない。そろそろ、体を休めたほうがいいかもってのもあるし」
ユリオスのいる場所までかなり近い。逆にユリオスから襲ってきてもおかしくはない距離だ。
「自分は浮いてるくせにいいですわね」
「これはこれで大変なんだよ」
「はいはい」
ちょうどよく開けた土地があるので、そこに荷物を置く。ノールさんと僕は火おこし。ユウとシャルはテント張りをする。
「結界張っとくね」
「分かった」
用心して一番強い結界を張っておく。対魔族用のだ。
これまで一度も壊されたことはないので、平気だろう。
「マイさん。火、お願いします」
周りにあった乾いた木を拾って集めていたノールさんがいう。
「わかった。炎系魔法」
それから、ノールさんもテントを建て始めた。
慣れた手つきで、先に建て始めていたユウやシャルよりも建て終わるのが早い。
みんながテントを建てている間、僕は日にあたらせてもらう。
「少し手伝ってくれてもいいでしょ?」
テントを建て終わったユウが僕の後ろに立ち、僕を抱えてユウの膝の上に座らせられ、そのまま抱きしめられる。
「だってさ。僕があの時点で手伝いに行っても……」
「小さいからなにも届かないか」
冬になってからはよくやられる。
シャルが羨ましそうな目で見てくるので、落ち着かないが。
「もう少しさ……」
オブラートに包んでよ。
野宿の用意は整った。
「飯にしますか。今日はあの時のドラゴンの肉と、そこら辺にあった山菜の汁って感じですかね」
「ドラゴンの肉……。あなたたち本当になんでも食べるんですわね」
「もちろん食べるよ。肉だもん」
「そのうち巨人の肉とかも食べ出しそうで怖いですわ」
山菜の汁は、肉の茹でじるをつかっているらしい。ドラゴンの肉は保存用に何かにつけておいた物だそうだ。燻製にしたのもまだまだあるとか。
みんなでいただきますと言って、今日の晩飯を食べ始める。
ユウは一応警戒するということで装備を外していない。
戦いを前にして、少し重苦しい。
「本当に、魔法も物理も通らないのに、倒せるんですの?」
「倒せるかどうかは分からないけど、魔法は通るし、物理も通る。本当に魔法耐性が完全じゃない限りは」
「そんな人いるの?」
「さあね」
そんなのがいるとは思えないが、よく分からない。記憶が昔すぎるがために、どうなんだろうか。
「まあ、明日に備えて寝るだけだよ」
「魔物に気づかずね」
「そうそう」
重い雰囲気の中に笑い声が響き、少し軽くなった気がした。
「大丈夫。結界の中に魔物がいないことは確認したから」
「まさかそれを怠ったわけじゃないでしょうね」
「怠ってたね。あの時は」
また一段と明るくなる。
「面白かった!」
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