第一章37 『マイのスキル5』
「はーあぁ」
「眠そうだね」
「まあ。いつもなら寝てる時間だから」
ローブだけ羽織って、ユウについて行った。
ユウは村の外れの森の方に進んでいく。
「ここら辺でいいかな」
何をしているのかよくわからないので、何も言わない。もっとも、眠いのもあるが。
「いっか。はい。マイ」
「なに?」
「私のやつ貸してあげるから。古いやつだから買い換えようと思ってんだよね。買い換えたらそれはあげる。いらなかったら別にいいけど」
「ありがとう」
持ち方はなどと教えてもらう。
「まあ、短刀だったら逆手持ち。短刀使いは大体2つ持ちだからそう。そう持てばいいよ」
普通に剣を握るのとは逆に刃が下に来るように持つ。
「そしてら。……滑舌が。そしたら、構えは出来るだけ体を低く。腕はどうでもいいけど、防御姿勢ならば、左を前に出して、右の短刀をその左腕にそはせてのっける感じ。攻撃的に行くならば、左を前に下げて、右腕は後ろに隠すような感じ。今回は攻撃の方でやってみよう」
「こう?」
「そう。そしたら、一回貸して。この棒を剣を構えるように持っててくれない?」
言われた通りに棒を前に出して剣を構えるようにする。
「ここから、相手の懐に入り込んで、脇腹を掻っ切っていく。それか、胸に突き刺す」
ユウが脇腹のところを走り抜けた。
探知魔法のおかげで見えたが、肉眼じゃあ厳しい。
「はい。やってみて。私が剣構えるから」
「身体強化魔法」
「ずるくない?」
ユウの懐に入り込み、そこから右の脇腹を掻っ切っていく。
本当に当たる前に、引っ込めはするが。
「ああ。うまい。そんな感じ」
身体強化魔法の改善を寝ている間にやっていたため、少し使ってみたが副作用は小さい。
成功かもしれない。
「そしたらね。剣を振り下ろしてくるでしょ?それを受け止めるのは短刀じゃ無理だから、受け流してやっぱり脇腹を狙っていく感じ。まあ、私が剣振り下ろすからそれを受け流して脇腹通って行ってみな」
いきなり難易度が上がった気がするが、やってみるしかない。
実験のために、身体強化魔法は付けたままにしてある。
どれくらい耐えられるだろうか。
体を低くして、走る。
探知魔法でユウの剣が振り下ろされた瞬間に身をひねって、片方の手に握っている短刀で剣の筋道を変える。
背中側に地面が来ているが、魔法で浮けるから問題はない。
そのままもう片方に持っている剣で、ユウの脇腹を切る。
「うーん。才能はあるな」
「才能はあるんだ」
「それ以前のものがないって意味」
ちょっと失礼なことをサラッというよね。
「体力、そして筋力」
「それは自覚あるや」
「それがあればトップクラスの剣士になれたのにね」
残念な気もするが、魔法がトップクラスなだけで我慢しておこう。
「いましたわ。ユウ。お手合わせお願いしてもいいかしら?」
「いいよ。たぶん昨日私が言ったんでしょ」
「そうですわ」
「じゃあ、マイとやって。マイ。その短剣は貸してあげるから」
えー。やなんだけど。2回目じゃんシャルと戦うの。
「魔法は、身体強化と浮遊だけね。探知魔法も使うのかな?まあ、そこらへんはいいや。シャルは全部使っていいから」
「流石に結界は?」
「許可する」
「話の意図が見えないけど、いいですわ。私は魔法をどれだけ使ってもいんですわね」
「うん。いいよ」
いきなり過ぎて、不安しかない。
「切っても切られても、マイが回復魔法使えるから安心してね。じゃあ、はじめ」
言われた通りに体勢を低くして、左手を前に。右手は左腕に沿わせるように。
探知魔法でシャルの動きを見る。
「火炎魔法」
「結界!」
結界で防いだのはいいが、目の前に展開された煙幕で目視ができなくなった。
探知魔法に集中する。結界を回り込んで右から来るか。それとも……。
結界にヒビが入り、無効化された。相手も大魔法使い。結界破りくらいは簡単だったか。
短刀よりも間合いが大きい双剣の刃が上から迫ってくる。
もう片方に握れられている双剣は下に待機されているから、迂闊に受け止めるわけにもいかない。
「結界」
下にある双剣を短刀で抑え、結界を足場にしてそれにのる。
少し浮遊をかけているので、その剣にも乗ることができた。
そこから上の剣を受け止めて……。
「氷系魔法」
左右から鋭い氷が飛んでくる。
両手は上下の双剣を抑えるのに使ってしまっている。
「結界」
右側に結界を展開して、左からくる氷に飛び乗る。そこから抑えている上側の剣を滑り込ませ、自分は一回転しながらシャルの後ろへ。
とった!
そう思ったが、すぐに振り返ったシャルの双剣に弾かれ、チャンスは逃した。浮遊魔法でそのまま後ろに飛び、距離を取る。
「そこまで」
確かにシャルの戦い方は分かった。
魔法、物理問わず、死角から攻撃していく。心強い味方が増えた。
「一朝一夕で得られる技術じゃなかったですわよ」
「忘れがちだけど、マイも一応男の子だから剣術は習ってたんじゃん」
「小さい時、習ってたことはあるけど、この体力と筋力じゃって言われてやめた覚えがある」
「今も十分小さいと思いますわ」
「それに関しては、同感」
「昔ってこと!」
本当にやっていたことはあった。
確かボコボコにされて以来、自分は剣術以外を極めようと誓ったんだよな。
「マイがもっと魔法を使ったら、私は確実に負けていたと思いますわ」
「まあ、マイは結界の使い方とか探知魔法とか極めてるからね。正しい使い方とは言わずとも、応用は上手いと思う」
「あと、一つ聞きたいのが、あのノールって人なんですの?」
「呼びました?」
「うぎゃっ!」
シャルの後ろにはノールさんがいた。
「驚かせないでほしいですわ」
「驚かせた気はないんですけどね」
シャルが聞きたいのは、こういうことだろう。
「確かにノールさんって、魔力探知かかりにくいよね」
「本当ですわよ。ずっと思ってたけど、あなたの魔力どうなってますの?」
「もしや俺も、魔法が使える?」
「「いや。ないない」」
「面白かった!」
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