第一章34 『マイのスキル2』
「そうだなー。仲間にか」
ユウがいうと一瞬で大振りの剣を抜き、シャルに斬りかかった。
本気で切りに行ったわけではないと思うので、放置。
シャルの鼻先にユウの剣先が到達する前に、双剣によって弾かれた。
「なにするんですの?」
「いいよ。パーティーに入って。そのかわり、4つ約束」
ユウは剣を納める。
少し不機嫌そうなシャルも剣を納めた。
本当に敵対したわけではなく、自分が試されていたことに気がついたのだろう。
「なんですの?約束って」
「1つ目。命は保証できないから、自分で守ること」
「そんなの当たり前だわよ」
「2つ目、マイを取って食べないこと」
だから、僕は食用じゃない。
「3つ目。私のいないところでマイと喋らないこと」
ん?
「4つ目。マイに触らないこと」
なんかユウ、ヤンデレになってきてない?
「その最後の3っつまとめちゃっていいよね?ていうか要らなくない?完全に僕、ユウの所有物じゃん」
「いいの。マイは私のものだから」
ユウに抱きかかえられる。
最近、これは自分が歩かなくても良くなるため、別にいいのではないかと思い始めてから、抵抗はしてない。
抵抗しても意味はないが。
「分かったわ。最後の3つ以外。あなたからマイを取る機会があったら、容赦なくいつでも取るわ」
「望むところ」
うわぁ。めんどくせぇ。
「ところで、真っ直ぐユリオスの方に向かっている気がしますわ。もちろん、マイの言っていた聖水は取りに行くのですわよね?」
「いや。このまま倒しにいくよ」
「無理ですわよ。どんなにあなたたちが強くても、ユウの剣撃がどれだけ鋭くても、マイの魔法がどんなに強くても、あいつは物理は効かないし、魔法も全耐性持ちなのですわよ」
「大丈夫。魔法も効くし、魔法が効けば、物理も効く。私が倒すよ」
シャルはただ俯いただけだった。
「今回は村が近かったですね」
「ほんと。それに、結構大きんじゃない?」
「宿は4部屋も空いてるかな」
まあまあ遅い時間になってしまった。
もう冬も近づいてきたので、この時期にこんなところに商人がいると思えないが、それでもその日の宿が取れるかは心配になるものだ。
「なに言ってんの?3部屋だよ。節約のために」
「……」
宿に入ると、思ったより賑わっていた。
食堂では、もう酒盛りをしている人たちもいる。
「3部屋空いてますか?」
「ちょうど空いてますよ。1人部屋が3部屋。よろしいでしょうか?」
「はい」
流れるように決まっていったけど、さっきこの人、1人部屋が3部屋って言ってたよね?絶対言ってたよね?
「ああ……」
「3部屋ってことは、私とマイが同じ部屋ってことですわね」
ユウと一緒の部屋なのよりやだ。
ユウの後ろに隠れる。
「ほら、私と一緒に行きますわよ」
無理やり両腕を掴まれた。ユウは脇の下に手を入れて、シャルが引っ張る方向と逆に引っ張ってくる。
カウンターの前なんだよな。邪魔だよね。
「ノールさん。助け……」
「じゃあ、また夕食の時に」
ノールさんに助けを求めようと思ったが、もう鍵を受け取って自分の部屋に行ってしまった。
キリがない。
「拘束魔法」
シャルに拘束魔法をかける。
ちょっと強めにしたから、当分動けないだろう。
シャルの手が僕の腕から離れる。
「はぁ」
そのままユウと部屋に向かう。
「ちょっ。魔法解きなさいよ」
当分はそこで反省しててもらおう。
部屋に入って、早々にベットに座る。
「今回の目的地ってこっからどれくらいなの?」
「さあ。もう明日くらいには近くまで行けるから、明後日くらいかなって思ってる」
「ふーん。あと、あの人はもうパーティーの仲間ってことでいいの?」
「あのお嬢様の国のお許しがでたらね。あまり乗り気じゃないけど」
「僕も、ちょっと大変になりそうだからやだな」
毎回ノールさんと約束している、夕食の時間はまだなので、少し買い物にでも行こうかということになった。
「南の国は後どれくらいなんだっけ?」
ユウが言った。まだそこまで遅い時間ではないが、冬なのでもう暗く、顔は見えない。
「1週間くらいかな?2、3ヶ月は滞在できると思う」
「そっか」
なにも目的がないので、ただの散歩のようになっている。
「新しく短刀を買いたいんだけど、よって行っていい?」
「いいよ。でも、もっと大きい街じゃなくていいの?」
「期待はしてないけど、ダメ元でね。もしかしたら何かあるかもしれないから」
そこら辺を歩いている人に武器屋の場所を聞いて、聞いた通りに行くと店があった。
中に入ると、薄暗く、電気がついていなかった。
「店主寝てるよ」
「ほんと?」
探知魔法を使ったので、確実だ。
「すみませーん」
ユウが店の奥に向かっていうと、少し遅れて言葉が返ってきた。
「あ?なんだ?……電気電気」
店の中に光が灯る。
「らっしゃい。なんかあったら呼んでくれ。奥で寝てる」
「めっちゃやる気ないじゃん」
「ほんとだね」
短剣がたくさん並んでいるところで、商品を見定める。
僕にはどれがどうなのかなどは全くわからなかった。
「ないな」
ん〜。デザインはいんだけど、切れ味悪そう。とか言って幾つか手にとったりしている。
「戻ろうか」
「いいの?」
「うん」
帰りはただ何事もなく帰ってきた。
「風呂かな」
「そっか。早めにね」
部屋に帰ってきて着替えるための服だけ取る。
「んー。適当に……これでいっか」
ひとつ一番上にあったものをとって、先に部屋を出て行ってしまったユウを追う。
「先行っててもよかったのに」
「カギ閉めないとさ」
「忘れてた」
この建物の中は全体的に暖かく、半そででも過ごすことができる。
廊下までも暖かい宿は珍しい。
3階まで吹き抜けになっていて、一階には大きな暖房があるためだろう。
「じゃ。また」
カギを一階のカウンターに預けて、ふろ場の前で別れる。
「また」
中に入ると、もうノールさんがいた。
ただ体を洗って、湯船に入ってノールさんの横まで移動する。
「四人目ですね」
仲間のことか?
「正直、規格外がまた増えた感じ。性格的にも僕ら寄りだな。ノールさんにはもっと迷惑が行くと思う」
「もう覚悟できてますよ」
小さく笑う。
「この後の夕食がもう心配ですよ」
「まあまあ。これから合う相手と比べれば」
「そんなにやばいんですか?」
「そいつを探知したら、それに気づきやがって、かかって来いって言ってやがった」
この村について一息ついてから、ユリオスはどこにいるのかと思い、確認したときだ。
正直背筋が凍りつくような感覚に襲われた。
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