第一章33 『マイのスキル1』
「そういえば、名前を名乗ってなかったですわね」
日が登ってきて、少し暖かくなってきていた。
それでも、ローブの内側の魔法陣の魔力をきれない。
「軽く自己紹介でもしときますか?」
ノールさんが手袋を付け直しながら言った。
「じゃあ、私から。私は、ユウ。このパーティーのリーダーっぽいものをやらせてもらってる。マイは私のものだから、勝手に取って食べないように」
「今、僕は食用だったんだってびっくりしてるマイです。よろしく」
「俺はノールウィンです。まあ、2人とも結構クセが強いんで、疲れたら俺にってことで」
ここまで来るともう、自己紹介だけでみんな引きそうだ。
「私は、シャルロッテ・ド・ラウァンティア。シャルでもロッテでも、好きなように呼びなさい」
「ラウァンティア家?確か南の国の一つに若い女性が国を治めてたような」
「まさにその国の統治者ですわ。お嬢様だからって、敬語にならなくても構いませんわよ。っていうか、もうタメで通ってますわね」
統治者なら国から出てきちゃダメだろ。
「そこのお嬢様は義勇軍が全滅した中、1人で魔物の大群を殲滅したとか」
「懐かしい話持ってきますわね。確かにそんなこともありましたわ」
「ノールさん、結構政治の方とかの知識もあるよね」
「私たち脳筋と違って」
「たちは余計かな」
それが本当なら、かなりの戦力だ。
「折り入ってお願いなんだけど、私と一線交えてくれないかしら?」
「やだ」
「なんでですの?」
「めんどくさい」
ユウが何言ってくるかもわからない。
「女王の命令として、だったらどうしますの?」
「謹んでお受けしません」
「何も謹んでないですわね」
「別にやればいいじゃないですか。マイさん」
ノールさんは何も分かっていない。
「ほら、やりますわよ」
「あー。分かった。やればいんでしょ」
マイとシャルの模擬戦が始まった。
私は、シャルの後ろに立っている。
「私、魔法職ではあるけど、双剣使いですわ。こっちの武器も使ってよろしいかしら?」
「魔法戦士ってこと?いいよ」
「魔法戦士は嫌われてる職だからあまり名乗りたくないけど、そういうことになるわね」
まさかとは思うが、マイが魔法戦士なんかに負けないだろう。
「合図とかすればいいの?どうすればいい?」
模擬戦の始まりを示すならば、石を投げてってやつが有名か。
それでいいよね。
石を拾う。
「じゃあ、私がこれ投げるから、落ちたらスタートね」
「わかった」
「いいですわよ」
腕を真上に振り上げる。
石が落ち、音が鳴った瞬間に2人は動かなかった。
前衛職は素早さを重視するが、魔法職は後手に回ることの方が多い。
マイは、シャルが動くのを待っているのか。
でも、シャルもマイが動くまでと思っているのだろう。
「なーんかな」
引っかかるものがあるような。
なんとなく後ろを振り向いてみる。
なにもいない……後ろの木の上に座っているマイがいた。
「……」
目が合う。
マイがそこから飛び降りて、私の横まで来た。
なんのつもりよ?
ここまでマイとシャルは全く動いていない。
正確には、ダミーのマイとだろうか。
私の横にいるマイは杖を取り出してシャルの方に向けた。
「負けよ。負けたわ」
何にもしていないのに、シャルは剣を納めて手を上に上げた。
ダミーのマイは消える。
「ありがとうございました」
「ありがとう。にしても、圧倒的だったわね。私が魔法で攻撃しようとしたらそれに対抗する魔法を準備して、物理で行こうとしたら結界を張って。どこも勝てる要素がないわ」
やっとシャルは私とマイの方を向く。
「その上、私が戦おうとしてたのは、実態じゃない上にここまで気づかなかった。魔法研究会のトップ10に入る私を、最強最小の賢者としか思えないわ。どうなの?そして、あなたたちは勇者パーティーじゃないの?」
「ウッ、えっと」
「違いますね」
「魔法研究会のトップ10?ランキングなんてあったっけ?」
1人だけ違うことに目を向けている奴がいるが、置いておこう。
「え?もしかして知らないんですの?」
「そもそも魔法研究会って?」
「まさか……最強最小の賢者はこのことを知らなかったから、毎回参加しなかったのですの?いや、可能性はあるわ」
なんかマイのおかげで勇者パーティーのことは忘れてくれているみたいだ。
「まず、魔法研究会っていうのは、魔法職の人たちの称号を与えたりしているところですわ。あなたは2つ持ってますわよね。それは、魔法研究会ってところからもらってますの。ここまでは分かるかしら?」
「知らなかった」
「流石に無知すぎますわ。お姉さん、どうしたらこんな子に育つのですの?」
「さあ?会った時にはもうこんな感じ」
これ本当に姉弟って思われてる?
だとしたら、自分の入る隙があるとか思ってないよね?
「まあ、その研究会が2大称号を持ってる者たちに対して順位を決めるために、2年に一回集めて、戦わせているのですわ。あなたほどの実力があるならば、1位くらい簡単に取れてしまうと思いますわ」
「へー。知らなかった」
「いや。集まりなさいっていう通達が必ず来るから知っているはずですわ」
そんなものにマイが行っていた覚えはないので、本当にマイは知らないのだろう。
「今年あるから来てみるといいですわ」
「気が向けば」
「そもそも義務なんですわよ」
「シャルの語尾っておかしいよね?」
「教養が……」
さて、気を取り直して出発しよう。
「で、話を戻しますわよ。勇者パーティーよね?さっきの会話でこの子が最強最小の賢者ということは分かりましたの」
誤魔化せなそう……。
「まあ、そうだよ」
「入れてくれないかしら?」
「実力的にはあのおっさんより上かな。全く関係ない話なんだけど、ユウ。短剣の使い方教えて」
「あのおっさんよりは強いに決まってるでしょ。そもそも職が違うから。にしても、なんで短剣?」
「いや、魔力的にとかって話。シャルの国が許可するなら、パーティーに入れてもいんじゃん。ちょっと使ってみたいなって」
パーティーに入れるのもありか。双剣だし、魔法の腕も大魔法使いレベル。
欲しかった人材だ。
確かにマイの筋力でも、短剣ならば振れるな。
「ちょっと待って。2人とも。2つの話を同時に進めないでくれますか?ゴチャゴチャになるから」
確かに話がゴチャゴチャになっている。
「いいよ」
「本当ですの?」
「マイ。教えてあげる」
「さっきの流れは完全に、私がパーティーに入ってもいいかっていう方に行くはずですわよね?」
はて?なんのことでしょうか?
「まあまあ、シャルさん。優先度が低かったってことですよ」
「あなた、結構言葉きついですわね」
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