第一章32 『ドラゴン討伐11』
「はいんねぇよ。こんなムカつくガキと旅なんてやってられっかよ」
そんな理由じゃないくせに。
と思ったが、今更こんな奴を庇う気にもならない。
「おっさんの力が必要なの。たぶん」
「たぶん、かよ。なんて言われようと俺は入らねぇ」
ユウも諦めが悪く、何度も誘う。
そろそろこのやりとりを見るのも飽きてきたので、不本意にも本当のことを言ってやる。
「この村の人たちを守りたいんでしょ?僕は、おっさんがパーティーに来るのは願い下げだけど」
「そうに決まってるだろ?ここの子供とどんだけ遊んだと思ってるんだ?」
なんか違うキャラ出てきた……。
「ていう事で、おっさんはパーティーに入らないよ。今後の計画立てるからあっち行っててもらおう」
「ムカつくなー。お前、今度村に来ても絶対に入れないかんな」
「はいはい」
酒飲みに行くかと言って、離れて行った。
結局飲むんだ。
「お疲れ様」
「お疲れ様」
ユウがグラスを傾けて、今日2度目の乾杯。
「集団は疲れるな」
「たいしてそっち行ってないくせに。コミュ障じゃん」
「私くらいにしか心を開かないユウも大概じゃなと思うけど」
「はいはい。あの人の経過観察に行ってくるから。着いてくる?」
「うーん。行こっかな」
回復魔法でしっかり傷も塞がっていて、呼吸も通常通りになっているが、闇属性などの魔法がのった剣で切られて傷だと、また傷が開いてくることがある。
だから一応確認しておくことが必要なのだ。
ドアを開ける。
「「……」」
扉を閉める。
「マイ、それよくやるよね。今回は何があった?」
僕の後ろにいたため、部屋の中を見ることができなかったユウがいう。
「ユウ先に入って」
「分かった」
ユウの影に隠れながら部屋の中に入る。
「起きてんじゃん。どうしたの?マイ」
「いや……」
この視線は完全にやばい。
入った瞬間にこの人と目があったのだ。
「マイを怖がらせるなんて、許さないわよ」
「……そっちがその気なら良いわ。自分の獲物は自分で取りますわ」
あ、そっか。そうなっちゃうの?
2人とも剣を抜く。
ユウはひとつの大きな剣。
運んできた怪我人は双剣。
「……拘束魔法」
斬り合いが起こる前に、拘束魔法をかける。
「ごめんごめん。僕が悪かった。一旦落ち着いてね2人とも」
剣を納めるのを待とうとしたが、拘束魔法をかけているからできないのか。
「体調は?」
「大丈夫だわ。というか、拘束魔法を解いてくれないかしら?」
「平気か。じゃあ良いや」
2人の拘束魔法を解く。
いつでも再度かけ直せるようにはするが。
「あなた何者?私に拘束魔法をかけるなんて。そこらへんの魔法使いじゃないわよね?」
「さあね。ただの魔法使いだよ」
「ちっちゃくて……最強最小の賢者が思い浮かぶわね」
「あ、ああー。ね。とりあえず、起きたならば今村で炊き出しやってるから、何か食べてきたら?」
バレないように。絶対バレたらめんどくさい。
「分かったわ。その前に少し話があるんだけど。いいかしら?」
「うーん。やだ」
「そこはうんって言いなさいよ。失礼ですわよ」
ユウに耳打ちをする。
「お嬢様かな?」
「そうじゃん」
口調的にどっかのお嬢様だ。外見は戦士にしか見えないが。
「あなた私と結婚しない?」
「むり」
「一目惚れしちゃったわ。こんなに可愛いくて」
「き……むり」
危ない。キモと言いかけた。
「ダメ?」
「うん」
「そっか。じゃあ、決闘を申し込むわ。あなたほどの魔法使いはなかなか会えるもんじゃないもの」
「やだ」
めんどくさいなこの人。
「じゃあ、魔族の討伐を依頼したいんだけど」
「それなら、マイじゃなくて私が」
確かにこの手のものはユウの役割だ。
「南の国に住む、魔族。ユリオス。最近、そいつによる被害が増加してるわ。何度もそいつの討伐に向かっているけれど、全く成果はなし。私も戦ったことがあるけど、何より高い防御力。そして、なにも通さない魔法耐性を備えていたわ」
「じゃあ、なんであなたはここにいるの?」
南の国と言ったら、普通にもっと南だ。
「魔法耐性や防御力を下げる、魔法の聖水、か。そんな迷信を信じてる人がいるとはね」
「勝手に決めつけないでほしいわ。と、言いたいところだけど、図星よ。けど、そんな迷信に頼らなければならないほど、状況は最悪なの」
「魔法の聖水って?」
魔法使いらには有名だが、ユウなどの魔法学に疎い人はあまり知らないだろう。
「そのまんまだよ。ただ防御力とかを下げるだけ。師匠が持ってたな」
「え?迷信なの?本当なの?」
「結論を言うと本当。でも、誰もその聖水がある場所は知らない。だから迷信。師匠もなぜこんなものがあるのかは知らないって言ってた。先代が取ってきたんじゃないかとか言ってたけど、どうなんだろうね」
飲んでみたことがあるが、実際に防御力などは下がった。
「ふーん。まあいいや。その依頼受ける。対価は?」
「対価は……。私があなたたちのパーティーに入るわ」
「よし。ユウ。肉食べに行こう」
「そうだね」
「待って。待って。お願い」
「「……」」
「私は、南の国の支配下にある、ある国の女王ですわ。何か褒美を取らせる。どう?」
「受けた」
正直、報酬なんてなくてもいんだけどね。
「じゃあ、明日出発する。あなたも出発の準備だけはしといて。マイはノールさんにこのことを。私はもう少しこの人から話を聞くから」
「はーい」
「じゃあ、出発するとします」
次の日、この村をたち、ユリオス討伐に向かうことにした。
「もう少し滞在していかなくていいのですか?」
「はい」
またいつでも寄ってくださいねという声を後ろから聞いて、次の目的地に出発した。
まだ時間が早く、そろそろ日が上るというところだ。なのでまだ寒い。
「寒いですわね。炎系魔法」
この旅の次の依頼人のお嬢様はそう言って魔法を使い、火の玉のようなものを自分の前に出した。
「大魔法使いクラスの魔力か」
「そう。2年前に大魔法使いの称号を得たわ」
旅の中で、大僧侶や大魔法使いと頻繁に会うことは珍しい。それとも、旅をしているならそこまで珍しくないのだろうか。
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