第一章31 『ドラゴン討伐10』
「うわ」
街に帰ると、村の人たちが忙しなく動き回っていた。
「これは、思っておるよりも大規模になりそうですね」
「そうだね」
「とりあえず、村長さんとかに」
村の人に村長さんの場所を聞くと、すぐに教えてくれた。
「人を借りたいんですけど、いませんか」
ユウは村長さんにそう言った。
「帰ってきたんですね。どれくらいですか。あと、ドラゴンは」
「ドラゴンは討伐完了しました。人数は、ドラゴンの肉を移動したいので、重労働ができる人をそれなりに」
「分かりました。妻が指揮をしてる青年団を全員そっち側に当てましょう。少し待っててくださいね。すぐに準備させますんで」
少し考えてから村長さんはそう言った。
結局、ドラゴンの肉は全て持って帰れないということで、村から応援を頼むことにしたのだ。
片道1時間のあまり整備されてない道を歩くので、青年団が来てくれるのは嬉しい。
「良かった。倒せて」
「ん?」
村長さんが青年団の人たちに説明してる間、今日の会場となる場所のベンチに座っている時につぶやいた。
「なんでもない。みんなが楽しそうだんってだけ」
「マイがそんなこというのは珍しいね」
「そう?」
ノールさんはまた村の人たちと話している。
「ノールさんはすぐに誰とでも仲良くなるよね」
「確かに」
「マイにはできないね」
「まあ、そうだけど」
ドラゴンの肉を移動するメンバーが決まったようだ。
何食わぬ顔で、村長さんの奥さんも参加している。
「さて、行きましょうか」
「大丈夫なんですか?」
「女だからって、舐めないでください。あなただって女だし、下手したら私より細いでしょ?」
ユウもほっそいよな。
なのにあの怪力はどこから来るんだろうか。
「あんたも男の子のくせにほっそいんだから食べないとダメだよ」
「あー。まあ。はい」
整備されていない山道は、歩きにくいので飛ぶ。
浮遊魔法考えた人、本当に天才すぎる。
僕が飛んでいるところを見て、青年団の人たちが言った。
「嬢ちゃん。ずるいな」
「いいでしょ」
「魔法でドラゴンの肉を運ぶことはできないのか?」
「あいにくできないな」
大きな岩を登るために、その人に手を貸す。
行き帰りで魔物とは遭遇せずに帰ってくることができた。
しかし、道の途中で。
「おい!誰か!人が倒れてる!」
探知魔法に全く引っ掛からなかったので気づかなかった。気を抜いていたのもある。
それに、行きと帰りで道が違かったため、見つけることができなかったのだ。
その倒れている人は、青年団の人にユウが持っているドラゴンの肉を預けて、ユウが担いで村に帰った。
そして今、僕はその人の看護をしている。
なぜか、あの僧侶も一緒に。
「なんでお前がいるんだよ?」
「本職だからな」
「僕だけで十分じゃない?」
「まあまあ。この人も大僧侶2人に見てもらえるんだから、贅沢なもんだよ」
それは否定しない。
「でも、安定してるしあまり気にしなくても大丈夫そうだね」
「ああ。そろそろ始めるみたいだし、外に出るか」
一応書き置きだけして、外に出た。
もうすでに肉の焼けるいい匂いがしている。
「どうだった?」
「全然大丈夫そう」
外では大きな火でドラゴンの肉塊を炙っていた。
上裸の体格のいい男の人たちがその肉を担いで下そうとしていた。
「あの肉どうやって切るの?」
「マイが魔法で切れるんじゃん?というか、もうみんなにそう言ってある」
「マジかよ」
「ほら。呼ばれてるから行っておいで」
確かにノールさんに呼ばれている。
「えー。はーい」
焼かれた肉の近くに行ってみたが、自分の身長なんかよりも全然大きい。
「ノールさん。これ本当に仲間で焼けてんの?」
「焼けてなくても、さっき狩ったばっかりのやつだから平気です。魔法で切っちゃってください」
「ど、どうやって?」
「かぶりつける大きさのやつと一口サイズくらいのやつどっちもあるといいですね。酒のつまみなんかは一口サイズの方がいいし、子供はかぶりつきたいだろうし」
「うーん。わかった」
サイコロの形でいっか。
派手にやる方法はあるだろうか?一つの大きな魔法で作り出した剣を振り回すようにやるか。
「無属性魔法。風系魔法」
とりあえず半分に。
肉汁が溢れ出してくる。
その右半分を一気に刻んで、一口サイズに。
もう半分は言われた通りにかぶりつけるサイズにする。
「こんなもん?」
「オッケーです」
ノールさんがみんなを集めて言った。
「さて、みんな自分の皿に取ってください。ちゃんと飲み物も持ってますか?」
周りから口々に『準備オッケー』『早く始めろー』のど聞こえてくる。
「じゃあ、乾杯は村長さんにお願いしましょう!」
「えー?私ですか?」
ユウの隣にいた村長さんが広場の真ん中に出てきた。
「さて、村を脅かしてきたドラゴンはこの3人の英雄たちによって、打ち倒されました!今日はそれを祝して、楽しみましょう!乾杯!」
「「乾杯‼︎」」
自分の持っている住すを一気に飲み干す。
そして、持っているドラゴン肉にかぶりつく。
ものすごく柔らかい。肉が崩れて、肉汁が口の中に広がる。
「柔らかいでしょ?」
いつのまにか隣に立っていたノールさんが言った。
「はい」
「ドラゴンは翼で飛ぶために筋肉を使うからものすごく柔らかいんですよ。だから、俺の追い求めてる龍はもっと美味しいと思ってるんですよ」
「やっとノールさんが龍を追い求めてる理由がわかった気がします」
「ははは」
早々に広場の周りに置いてある椅子と机に座って、みんなが騒いでいるところを遠くから見る。
「ビールは飲まないの?」
「怪我人がいるからね。ちょっと心配だし、あの僧侶はきっと飲んでるでしょ」
「ああー。飲んでそう」
「……飲まねーよ」
肩が跳ねる。
ユウと同時に振り向いた。
「飲まねーよ。一応僧侶だ」
「そういえば、マイはたまに飲んでるよね。あれは良いの?」
「大僧侶って僧侶なわけじゃなくて、回復魔法が使える人たちの称号だからね」
ただ、この僧侶は普通に僧侶なため、飲んではいけないということだ。
「そうだ。酔いが回らないうちに言っとくけど、私たちのパーティーに入らない?」
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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